雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

 気になる南米の野菜たち2~チョコの風味 カカオ3

2018-06-29 15:44:09 | Weblog

写真左が、チョコレート料理専門店の入り口にあった、モリニーニョの全体像。写真右は、その泡立て器部分。これが料理のために使われるとは、想像できない。どうみてもトーテムポールのようだが・・・。

【泡立て器で粉が挽ける?】
ところで、チョコレートラテの最大の特徴はフワフワの泡にあるようです。そして、その泡立て器がたいへん特徴的なことを前回、お伝えしました。

日本に帰ってから、この泡立て器について調べてみると、おもしろいことがわかりました。

メキシコに残る文書や陶器に描かれた絵や壁などのフレスコ画によると、かつて、チョコレートラテは容器から容器へ移し変えることで泡立てていました。それもなるべく高い位置から料理人がツボを傾けて、下に置かれた容器へと勢いよく注ぐ。周りに飛び散るほどの勢いを出すことでチョコレート飲料の「カカワトル」に泡を含ませていく要領でした。

中身は現在の甘さ重視の飲み物ではなく、トウモロコシをつぶして灰を入れてぽてっとまとまるようにした粥状のものに、トウガラシや各種の花、ハーブ、ときに蜂蜜などを入れ、最後に黒い、つぶしたカカオを混ぜたものだったそうです。
(キャロル・オフ著北村陽子訳『チョコレートの真実』英治出版、2007年)

この飲み物に興味をもったスペイン人は泡立ての効率をあげようと、現在、使われているような道具を導入したのだそうです。これを上記の本では「スペイン式ミル」と訳しています。

「スペイン式ミル」とはなんでしょう? 

普通のミルは知っています。我が家にもコーヒー豆を細かく挽くためにキッチンにあります。「粉挽き器」のことです。が、これでは当然ながら泡立てることはできません。

スペインでは、あの不思議な棒で粉に挽くことでもできるのでしょうか? 
不思議に思って、さらに調べてみました。

メキシコの言葉はスペイン語です。でも、スペイン語をベースにして現地化した言葉「クレオール語」も使われていて、実際にメキシコを旅した時にも、旅行用に買い求めたスペイン語集が役に立たないことがありました。

(つづく)
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気になる南米の野菜たち2~チョコの風味 カカオ2

2018-06-23 18:35:35 | Weblog

写真上は、店内でチョコレートラテを泡立てる店員さん。単なる棒を上下させている、と思いきや泡立て器の先端は思いの外、複雑だった(写真下)

【絶品! チョコレートラテ】
お肉のソースはカカオの風味がきいたほろ苦さと、くどくない甘み。なんといっても旨み重視の自然の複雑さがあります。

さらに食後に名物チョコレートラテを頼みました。

すると、手で抱えられるほどの大きさの、上が若干すぼまった、湯気の立ったツボが出てきました。中には、カカオの粉末と砂糖、牛乳が入っている模様。
 それを目の前で、店員さんがジャガジャガ、ジュボジュボ、とリズミカルな音を立てて、木の棒を上下させます。
 気が済むほど上下させたところで、ツボから取り出された木の棒は、先が工芸品さながらの複雑な木目込み模様の彫刻がほどこされていました。
 縦に垂直な溝が刻まれ、時折円盤状に縦を横切るように刻まれた複雑な構造物を上下させることで、この飲み物にたっぷりの空気を含ませる構造となっていました。

 たしかに見るからに泡立ちがよさそう。けど、洗うのはたいへんそう、と直感。
 
この不思議な棒は、その前に立ち寄った生活雑貨専門の市場で売られていたものだ、と気づいたときには後の祭り。二度と買うチャンスは訪れませんでした。市場ではてっきり、子ども向けのでんでん太鼓のような地元のおもちゃかと思っていて、手を伸ばさなかったのです。

さらに店の入り口には、トーテムポールのような複雑な木を彫り込んだ棒があったのですが、それも、巨大な、チョコレートラテを作る道具でした。
 昔から、こういったもので、効率よく泡立てていたようです。彫刻を泡立て器の稼働部位に彫るのは、やはり古代からの宗教儀式と関連があるのでしょうか? 何かの気を取り込むことを期待するような・・。

 さて、私がこの予想外の彫刻に見とれる、ほんの一瞬のうちに、店員さんは、なめらかな動きでコップに、泡立てたものをよそって渡してくれました。

泡立てていく時間も、なんともさわやかで、そして軽やかな甘い香りを振りまいていたのですが、お味が、また絶品! 

一口目、甘いチョコレートを溶かしたもの、と思って飲むと、さわやかで、ようく泡だっているため、ふわふわと軽やかや飲み口に意外性を感じます。

二口目、カカオ独特の風味と、意外な酸味を感じ、驚きます。

三口目、味の奥に隠れた苦みを感じ、その複雑な甘みに、すっかり酔いしれました。

ここでは、チョコレートラテを作るための粉も市販していました。そんなに安い値段ではなかったのですが、その後、メキシコのどこにも売られていなかったので、そこで買わなかったことをおおいに後悔したのでした。
(つづく)
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気になる南米の野菜たち2 チョコの風味・カカオ

2018-06-17 14:49:58 | Weblog
写真はマヨール・ドモの外観。前世紀以前より立ち並ぶスペイン風邸宅が軒を連ね、ヨーロッパの街角のよう。ただ、もったいないことにカラースプレーで、いたずら書きがほどこされ、壁も排ガスなどで黒ずんでいる。
内部は清潔でカジュアルだ。

【絶品のチョコレート料理マヨール・ドモ】
カカオは雲南では、作物として育ちません。

理由は「カカオは中・南米の熱帯地域を原産地とし、赤道を中心に南北20度の高温多湿な各地域で栽培されている」(農林水産省ホームページより※1)ためです。
そのため、雲南とアメリカ大陸をつなぐ野菜には入らないのですが、これは、メキシコ料理の中でもとくに特徴的でおすすめしたい料理だったのでご紹介。

メキシコシティにおいしいチョコ料理の店がある、と聞き、夕飯にいただきました。
店名は「マヨ-ル・ドモ」。こざっぱりとした、でも、人々はTシャツでティーンズだけでも入れるようなカジュアルなお店です。

食べ物にはすべて黒々としたチョコレートのようなソースがかかっているので、見た目から「おいしいの?」とおそるおそる食べ始めたのですが、これが本当に奥深い!

【固くて旨みのある肉】
私がいただいた料理は牛肉を叩いて薄くのばしたものの上にカカオソースがかかったもの。この肉がほとんど脂を感じない、素朴な味でした。

雲南の牛肉を思い出しました。脂身のサシはなく、牛が運動をよくしているせいか、とても固くて、分厚いステーキにして食べたら娘の歯がかけ、私もあごが外れそうになる、という恐ろしさ。後に中国では細切りにして、食べやすくして食べる(たとえば青椒肉絲など)のが正解だと気づくのですが、ここでは薄く叩いて伸ばすことでやわらかく、食べやすくしていました。
(町の肉屋もお客の見えるところで、タンタン、と音をたてて肉を叩いて、こちらがおもしろくなるほど薄くのばしていました。)

それを香ばしく炙っているので、タンドリーチキンのような風味がします。

 話はそれますが、近年、日本の牛肉は、高級なものほど脂身が過度に入っていますが、脂身の甘みを売り物にするのも、そろそろ限界では、と感じています。
 我が家では、脂身の少ない、すると必然的に値段が安くなるという、ふところに優しい肉をあえて買って、料理するようになっています。
 娘が友人らとバーベキューするときにも、そのような肉をあえて持たせたところ、「この肉うめえ」と高校生の男子に好評だった、と言っていましたから、うまく熟成させると、旨みはむしろ増すのではと思います。

話 がそれました。さて、そのタンドリーチキンのような牛肉の上に、黒いカカオ風味のソース、さらに刻んだ葉物野菜(ただし生)が載っていました。
(つづく)

※1www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/yosan/pdf/sfm3.pdf
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南米の野菜たち トウガラシ⑩

2018-06-09 10:53:04 | Weblog
メキシコ料理の上に載るパクチー。エジプト原産や地中海東部原産といわれている。メキシコにはいつ頃伝わったのだろうか。メキシコのソース、サルサの横に山盛りによく盛られていたのだが、サルモネラ菌を恐れて、手を付けずにいたため、写真に撮るのを忘れるという痛い失敗をおかす。そのため、こんな小さな写真の掲載となってしまった・・・。香りは雲南のものよりもは薄く感じた。

【ニーズに合わせて辛さが残る?】
 15世紀末にアメリカ大陸からトウガラシが旅立って、海を渡った別の地域の料理に使用された際、今までにない味として認知され、しかも栽培しやすいと世界中に広まっていきました。

 いままでの話から考えると、世界に広まる過程で、味覚のなかでも他地域にすでにある味の部分は重視されずに自然淘汰されいって、最後に残ったのが刺激的な辛み、だったのでは?

 メキシコで買った様々なトウガラシを、家庭料理の中で使うなかで、自然に心に沸いてきたのでした。

 また、こうも考えられます。

パクチー(=コリアンダー=香菜シャンツアイ)がヨーロッパや中国などのユーラシア大陸で育てると、香りが立つのに、日本で育てると、何世代かすると香りが薄まってしまうように、トウガラシも、旨み成分などが原産地でないところで何世代か立つうちに、限りなく薄まってしまったのかもしれません。

 もしくは、伝播の過程で味がそぎ落とされて、もっとも他地域の食材にはない味だった辛さだけが残った、とも考えられます。


【じつは世界のトウガラシは1品種だった】 
 トウガラシはメキシコだけで600種類以上あると言われていますが、植物学的には栽培品種は4つに分類されるそうです。

その4つすべてが中南米にはあるわけですが、そのなかで世界に広まったのはアンヌーム種のみ(山本紀夫著『トウガラシの世界史』中公新書。2016年)

 日本にも「島唐辛子」などトウガラシは数種類ありますが、それらはすべて、赤くて長細い形のアンヌーム種という1品種のなかにおさまってしまう、ということになります。

 つまり、他にも栽培品種があるほど奥が深い原産地である中南米でトウガラシ料理を追求していくと、味の深みは、まだまだ限りがない、ということになりそうです。
                                     (この章、おわり)
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南米の野菜たち トウガラシ⑨ 旨みの相乗効果

2018-06-01 10:35:14 | Weblog

写真はソパ・デ・オンゴス(sopa de hongos)。黒いマッシュルームのようなキノコがいっぱい入ったキノコのスープ。雲南で食べた野性味あふれるキノコと似た味わい・こちらは辛みはまったくなく、塩、胡椒で味を付けたようなスープ。ややしょっぱめ。乾期のおわりのキノコなので乾燥キノコを戻したものかもしれない。
店の名前はピザ屋でショットバーのような町角の店でピンクの照明がともるお店。

【和風の調味料にメキシコの香りが消える?】
前回、日本の昆布だしなどを合わせると、同じグルタミン酸という旨み成分を持つメキシコのトウガラシの旨みと打ち消し合って、結局、昆布だしオンリーの料理と変わらぬ和風の味わいになるといったことを書きました。
 すると、イノシン酸など別の旨み成分と合わせると、旨みが増すという法則についてはどうか、とのお問い合わせをいただきました。

 じつは旨み成分にはいくつかあり、日本の食材のだしの中で、昆布はグルタミン酸、かつお節やイノシン酸、干ししいたけはグアニル酸という旨み成分を含んでいます。こうした別の種類の旨みを合わせると旨みの相乗効果が生まれる、というものです。

 メキシコのトウガラシは、この旨みのうちのグルタミン酸がとくに多いので、同じグルタミン酸の豊富な昆布だしではなく、イノシン酸の豊富な椎茸だしなら、旨みを相殺するどころか、相乗効果で旨みが増すのでは、といったことかと思います。

メ キシコではイノシン酸を含む肉が、旨みの相乗効果を自然に引き出している、ということになります。
たしかに旨みの相乗効果で干し椎茸なら理論上では旨みはふくらむのですが、なぜか、メキシコのトウガラシの、日本にはない、独特のすてきな香りが、干し椎茸の香りにかき消されて、もったいないことに目立たなくなってしまうのです。

 どうやらこれには、味噌やしょうゆといった、味の決め手となる日本の調味料が持つ、これまた独特の香りに融け込みきって、最終的に存在がかき消されてしまうようなのでした。

 逆に、和の食事から離れて、メキシコで食べた料理を再現する方向の料理、たとえばトマトベースやコンソメベースでスープをつくると、メキシコの燻製されたトウガラシが、見事に味を支えてくれるのが実感できました。

つまり、日本料理にメキシコの手間をかけたトウガラシを使うのはもったいないなあ、と感じた次第なのでした。
(つづく)
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