雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

中国の酒・パイチュウ編5

2016-10-29 13:56:44 | Weblog
パイチュウ蒸留器を上から撮影。

【パイチュウの蒸留法】
 火のついたかまどに設置された下側の中華鍋に水を張れば、熱せられ蒸気が上がります。

底辺を竹かごでふさいだだけの蒸気を通す煙突の役割を果たす木樽には、一ヶ月、タイ族の高床式住居の1階で固体発酵させた粟と白米、さらに蒸気を通しやすくするためのフスマ(米の籾殻)を入れます。

これら木樽の中のものが蒸気で温められて、沸点の低いアルコール(エタノールの沸点は約78度、水の沸点は約100度なのでアルコールだけが最初に上がる)分が真っ先に上昇します。

すると、今度は木樽の上に置かれた水を張った中華鍋に冷やされ、アルコールがしずくとなって下に落ちる時、今度は中華鍋の下でたわむように張られ漏斗状になった布を伝わって集められ、木樽の真ん中に突き出た竹のホースから木桶の外に出て、小さなに溜まっていくのです。

これが雲南のパイチュウです。

7キロの粟と白米から、30キロの酒が出来る、と、おじいさんは言っていました。

これらの作業を終えると、また、別の甕に詰めて発酵させるものをあれば、ビンに詰める作業をするものもありした。ビン詰めされたものは、すぐにおじいさんがスクーターに乗せて意気揚々と近くの市場に持ち込みに行ってしまいました。

一方、家のおばあさんは酒の蒸留を終えた後も、窯のとろ火を使って、大鍋で何かを煮ていました。聞くと、フスマで、豚にエサにする、と言っていました。蒸留し終えた酒粕も豚のエサになるそうです。
(つづく)
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中国の酒・パイチュウ編4

2016-10-22 14:56:26 | Weblog
写真はガンランバの朝、見かけたパイチュウづくり。あちこちで煙と香りが上がり、一斉に行われることがわかる。街で決まった周期があるようだ。

【蒸留する!】
翌早朝、宿の庭に設置された大鍋に火をくべています。

朝食作りかな、と思いながら周辺を散歩に行くと、各所で煙が上がり、なんともいえない、ふわっとした焼酎のような香りが漂っています。みると、庭先の炉の上に大きな鍋と木樽が設置されていて、そこから蒸気がさかんに吹き出ているのでした。

よく見ると、
見慣れた中華鍋の数倍の大きさの鍋に水を張って煮立て、
その上に底と上底のない先すぼまり気味の木の樽を置いて、その上辺にたるませるように麻布をのせ、
さらに、その上に大きな中華鍋のようなものを載せています。

その木の樽の上の方から管が突き出ていて、その先には液体を入れる口がすぼまった甕が置かれているのです。管の先からはちょろちょろと透明な液体が流れ出ていました。

宿に戻ると、同様の道具が設置されていました。

この装置こそ、1ヶ月放置した固体発酵の酒の酛を蒸留する装置なのです。

その仕組みは、次回、詳しく説明します
(つづく)

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中国の酒 白酒編3・ 粟と米のパイチュウ

2016-10-15 10:01:30 | Weblog

写真は高床式住居の1階に置かれていた酒餅(コウジ)。円盤状の手を広げたぐらいの大きさで中央部にえくぼのようなへこみがある。匂いはとくに感じない。クモノスカビがはっているためか、白い餅が黒くほこりで汚れたような不気味な形状をしている。

それにしても食物だというのに、編んだかごに山盛りに無造作に置かれている姿に驚く。製品上、問題ないらしい。宿の人に聞くと「すぐ使うから問題ない」とのことだった。

【パイチュウの造り方】
 造り方は、まず粟を蒸して、白米主体のコウジの固まりを3割ほど割り入れて、甕に詰め、そのまま一ヶ月、放置。

(そこの農家のおじいさんは、酒餅をただ一言「餅」と表現していた。(※1)私の中国語もあやしいが、おじいさんも母語が傣語で中国語は勉強中とのこと。ボールペンをなめなめ、ノートに丁寧に漢字を書いたものをうれしそうに見せてくれた。筆談主体で話を聞いたのだが、単語が本当におじいさんの言いたいことを的確に表しているのか、そういうわけでやや頼りない)
※1酒曲、と書く地域もある。曲は音楽の曲ではなく、「麯」の略字。

 これでは、腐ってしまうと心配することなかれ。甕の中では発酵が静かに進んでいるので問題ないのです。甕の中の模様を、醸造学の小泉武夫先生の文章から引用します。

「中では、麯の糖化酵素の作用によって主原料の穀物のデンプンが分解されてブドウ糖となり、そのブドウ糖に、窖の壁や煉瓦などに付着していたアルコール発酵を起こす酵母が作用しまして、アルコールが生成されるのであります。アルコールばかりではありません。香気成分も生成されます。」(『中国怪食紀行 我が輩は冒険する「舌」である』2003年、光文社文庫)

 しかも、液体ではなく、穀物にカビが生えたのチーズのような状態、つまり固体の状態なのです。
そして、甕の説明をしてくれた、宿泊施設の農家のおじいさんは

「明日、おもしろいことをするよ」

 と、ニコニコ顔で話すのでした。   

 翌朝、宿の庭に設置された大鍋に火をくべています。朝食作りかな、と思いながら周辺を散歩に行くと、各所で煙りが上がり、なんともいえない、ふわっとした焼酎のような香りが漂っています。

 みると、庭先の炉の上に大きな鍋と木樽が設置されていて、そこから蒸気がさかんに吹き出ているのでした。   
                                   (つづく)




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雲南の酒・白酒(パイチュウ)編2 民家の1階に眠る酒

2016-10-08 10:21:06 | Weblog

写真上は民宿も兼ねた、タイ族園のタイ族の家。1階は物置、2階に居住スペースとなっている。木のぬくもりが感じられ、清潔だ。
写真舌は1階のスペースに置かれていた酒甕。多くの家で自家用と市場で販売するための自家製の貯蔵甕を持っていた。(シーサンパンナ・ガンランバのタイ族園の村にて)

【1階に酒甕がごろごろ】
雲南ではビールは大きな工場で作りますが、白酒は少しの装置があれば農家の軒先で簡単に造ることができます。シーサンパンナの農家で実際に造っているところをみたので、ご案内しましょう(同じ日に一斉に蒸留していた)

 場所はシーサンパンナの景洪市の南郊40㎞ほどのところにあるガンランバ風景区タイ族園。5つのタイ族の村をそのまま囲ってテーマパークとして展示した場所です。入場料もとり、客があれば、午後はイベントとしての水かけ祭りや舞踊ショー、美人コンテストのようなものが催されます。高床式の住居の民宿もあります。

でも、イベントに関わる人以外は、タイ族の暮らしを普通に続けている村です。

 その村の一角にある民家に一泊しました。高床式の2階に住まいや台所、宿、トイレ、シャワー施設が設置され、はしごのような階段を降りると、地面から柱がニョキニョキある1階。その雑然とした暗がりに、小さい子どもなら入れそうな大きさの甕が無造作に置かれてありました。

甕は分厚いビニールで蓋をしたものが38,白い石灰でぴったりと蓋をしたものが5つあります。聞くと、酒を造っているのだそうです。

甕の一つには、クモノスカビ主体の直径20センチくらいの平べったい円盤状の酒餅と呼ばれる、麹(コウジ)がゴロゴロと置かれていました。(つづく)

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雲南の酒・白酒(パイチュウ)編  ソウルドリンク

2016-10-02 09:44:37 | Weblog
写真は、建水の街角で見かけた酒屋(2008年撮影)


【一人あたりの消費量はビールの3倍(度数は高いのに)】
雲南ではビールより「白酒(パイチュウ)」といわれる蒸留酒、つまり焼酎が圧倒的に飲まれていると「ビール編」で触れました。

2010年に雲南省で消費された酒の量は約120万トンで、うちパイチュウが50万トン以上を占めていました。この消費量は全国5位です。
(2011年7月21日開良副庁長在云南省酒類行業協会換届選挙大会上的講話より。雲南省商務庁ホームページhttp://www.bofcom.gov.cn/bofcom/432635843887235072/20110721/296120.html)
雲南のパイチュウは会社というよりも家族経営での醸造が多いので、おそらく統計よりも消費量は多いはずです。

古いデータですが2002年、ビールの消費量は18.5万トン(生産能力は30万トン)、一人あたり4リットルで全国平均の5分の1、全国30位でした。その当時でもパイチュウの消費量は30万トンを超えていたのです。(雲南日報2005.6.4より)

※2008年にはビールの消費量は一人あたり12リットルと全国平均の3分の1まで消費量を伸ばしてはいます。(華夏酒報2015.12.21)

なぜ、これほど好まれるのでしょう。

一つには昔から続く環境。冷蔵庫の普及していないとくに農村では、ビールなどの醸造酒よりアルコール度数の高い酒のほうが造りやすく、保存しやすい。

 雲南は高地とはいえ緯度でいえば日本の西表島あたりが昆明付近にあたるほどの低緯度地帯。少しでも標高が下がればマラリアが発生し、湿度の高い場所となります。日本でも九州より低緯度では蒸留酒の焼酎が主流なのも理由は同じです。

 もう一つは近年、四川風の唐辛子風味が雲南料理の主流になっているため、辛く、塩気の多い食べ物にしっくり合う、ということがあります。   (つづく)
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