万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

尖閣諸島問題―中国の弱点は司法解決

2012年09月19日 15時42分10秒 | アジア
尖閣領有、米は「中立」 安保適用従来通りも中国へ刺激避けたい(産経新聞) - goo ニュース
 昨日、訪中していたアメリカのバネッタ国防長官と中国の梁光烈国防相との共同記者会見の席で、梁国防相は、尖閣諸島に対する日米安保の適用に断固反対すると述べたそうです。中国側は、”日米安保が邪魔で武力行使ができない”と不満をぶつけたに等しく、この言葉から、中国政府が、武力こそ唯一の解決手段と考えていることが、ありありと伺えます。

 そもそも、尖閣諸島に関しては、中国側が、日本国の領有権に対して一方的に異議を申し立てる構図となります。こうした構図にあっては、異議申し立てをする側が、裁判に訴えるのが一般的な対応です。そして、実際に、中国側が、日本国政府に対して、国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴を持ちかけたとすると、日本国政府は、これを拒絶することができません(この点を訂正いたします。強制管轄受諾は、相互主義に基づきますので、中国が、受託していない現状では、たとえ、中国からの提訴があっても、日本国は、拒否できる立場にあるようです。もっとも、共同提訴の提案があれば、日本国は、平和的解決手段として、応訴すると思います。誤った記述を掲載しましたこと、お詫び申し上げます。2012年9月22日)。何故ならば、日本国政府は、ICJの強制管轄権を認めているからです(竹島については、韓国がこの強制管轄権を認めていないために共同提訴を拒絶…)。このことは、中国側がICJへの提訴という手段に訴えれば、たとえ、日本国政府が、公式見解として”領土問題はない”と主張しても、自動的にICJの法廷にて領有権が争われることを意味しています。この展開を考えますと、尖閣諸島を領土問題化したい中国にとっては、ICJへの提訴こそが、最適な手段なはずです。ところが、日中平和友好条約でも、武力の不行使が定められていながら、中国は、この手段を使うことに、極めて消極的です。否、自国民に対して、国際社会には、こうした平和的な司法解決手段が存在していることを隠そうとさえしています。何故ならば、ICJへの提訴は、自らの敗北を意味するからです。

 『孫氏の兵法』では、”戦わずして勝つ”が、上策とされています。ところが、中国の尖閣諸島をめぐる現状は、”戦わなければ勝てない”というものです。日本国政府は、中国からの武力攻撃を迎え撃つ体制を備えつつ、同時に、国際法と国際司法制度という、平和的な解決手段をも追求すべきではないかと思うのです(ICJ共同提訴のみならず、単独提訴や国連海洋法裁判所…の活用も可能)。中国の最大の弱点は、司法解決なのですから。

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6 コメント

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Unknown (ファン?号)
2012-09-19 18:01:16
なるほど、やっと先生の言うことが理解できました。

私は国連憲章の敵国条項を盾に、自衛隊でも出そうものなら、直ぐに攻撃してくることを恐れていましたが、国際司法制度等の平和的手段ですか・・・

ん~ 中国は戦わないと勝てないんですよね~
なら、我々は漁船と監視船だけなのに、日本が先に軍(自衛隊)を出してきたから、やむなく我々は これに対向した。とか言って、かつて ベトナムからセイサ諸島やナンサのサンゴ礁を奪い取ったようにするのでは・・・

なんたって、とても したたかな国ですから・・・

アメリカは、どうすんだろう?  なんか、これからの展開が、サッパリと判りません。
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Unknown (ねむ太)
2012-09-19 20:06:21
こんばんは。中国はすでに最も効果的な反撃を開始し始めました。
冬物衣料・日用雑貨の税関での検査に異様に時間をかける
伊藤忠・イオン・・音を上げるのはどちらが早いか時間の問題です。
季節の商品が販売時期に間に合わなければ、小売業者からの突き上げが激しくなるばかりです。
岡田副総理も身内からの苦情には耐えられないと踏んでいるのでしょう。田舎者の甘い考え、商売で知人が大勢いるから外交もうまくいく・・全く・・・
無駄政権下で動くことは危険すぎます。
副総理が情報を流す可能性も捨て切れません。
樋口・・田中公男のラインで情報が流される可能性も有ります。
中国だけでなく韓国に対しても日本の最大の武器は経済です。
どこかの馬鹿な企業が中国にリニアモーターカーの建設を持ちかけたとか、リニアの技術はアメリカも問題視しています。
アメリカが導入しようとしている技術がリニアカタパルトですから。
中国の空母に応用されれば空母の実用化を助ける事になりかねません。
アメリカ軍のトップが中国を訪問している最大の理由は尖閣海域を中国に奪われることはアメリカ艦隊の行動範囲に制限をかけることになるからです。台湾海峡有事・朝鮮半島有事が勃発しても第7艦隊の通り道が塞がれ太平洋側を大回りするとなれば間に合わない可能性も出てきます。
1960年に中国で発行された地図(中国政府発行)のものでは尖閣諸島は日本領になっています。
日本の邪魔をしているのは財界と平和主義の日本人です・それにマスコミです。
日本の動きは逐一中国に伝えられます。(NHKの中に中央電視台が同居していますので)あと朝日・毎日新聞ですね。
万一尖閣海域で海上自衛隊と戦闘が起きたとしても、小競り合い程度で収まります。自衛隊が防衛出動をすれば日米安保が発動しますので。
対策は、一刻も早い政権交代と企業の撤退とマスコミをどうにかすることでしょう。公然とスパイ活動をしている放送局に受信料聴取を許し公共放送の地位を与えている、おめでたい国は日本以外に存在しません。

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ファン?号さま (kuranishi masako)
2012-09-19 20:17:12
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 日本国が、先に自衛隊を出してきたことを口実として、中国が、軍事行動に出るような事態を避けるためにこそ、国際司法裁判所において、日本国の法的な領有権に太鼓判を押してもらう必要があるのです。サンフランシスコ講和条約の解釈をめぐり、ICJに単独提訴することもできるかもしれませんので、日本国は、常に、司法解決を盾に中国に圧力をかけ続けるべきと思うのです(司法解決の提起が、中国の”痛いところ”なのでは・・・)。
 日米同盟は、中国に対する強力な抑止力となりますので、尖閣諸島は日米安保の対象、と明言していただきたいところなのですが、アメリカの世論が反対する可能性もあり、難しいとろです。ただしかし、日本国側の司法解決路線だけは、平和的な解決手段ですので、ぜひ、支持していただきたいと思うのです。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2012-09-19 20:31:25
 コメントをお寄せくださいまして、ありがとうございました。
 狙われた日系企業が、伊藤忠、イオン、パナソニックなど、民主党関係、あるいは、現政権の胡・温ラインの企業であるのは偶然ではなく、江沢民をバックとした習近平派、もしくは、簿煕来派の残存勢力が、狙い撃ちをしたのではなかと、密かに疑っております。もし、そうであるならば、中国では、デモをコントロールしていたとされる警察や公安も各派に内部分裂して抗争していることになります。また自動車会社が集中的に破壊されていることも、北朝鮮の日本車排斥運動との関連性があるのかもしれません。この事件の根は深いようにも思えるのです。
 それにしましても、虎の子の技術を、次から次へと中国や韓国に渡してしまい、後に、禍となって自らに返ってくるというパターンは、自らの安全と繁栄を守るためにも、これ以上繰り返してはならないことです。この行動パターンを改めませんと、取り返しのつかないことになると思うのです。
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Unknown (Suica割)
2012-09-19 21:23:33
いかに政府にコントロールされているデモであったとしても、理屈だと愛国につながり、主旨にそう主張を封じるのはしがたいのが実情です。
ここは、日本は国際司法裁判所に提起し、中国国内には、日本の提訴を受けて立ち、勝つことにより、国威や中国の道徳的立場が向上する。
これを訴え、政府を後押しするのは愛国者としてやる事だと、宣伝して広げてしまいましょう。
中国としては、難しい戦いをするか、国内の信用を落とすかの苦しい立場に追いつめられます。
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Suica割さま (kuranishi masako)
2012-09-19 21:58:38
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 日本国政府が国際社会に協力を求めてでもすべきことは、中国国民に、国際司法裁判所での解決という方法があることを、知らせることです。そして、Suica割さまのおっしゃるように、日本国の提訴に受けて立つという世論を喚起することです。もし、中国政府が、司法解決から逃げれば、中国国民は、政府の態度、延いては、自国の尖閣諸島の領有権主張に対して、疑いを持つようになります。日本国政府は、法を盾に闘うべきと思うのです。
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