万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ムバラク資産の返還でエジプトの復興を

2011年02月13日 16時17分27秒 | 中近東
ムバラク一家、資産総額は5兆8400億円?(読売新聞) - goo ニュース
 世界一の大富豪がムバラク元大統領その人であったことは、腐敗しきったエジプトの独裁体制をよく表しています。富を独占して贅を尽くす現代の独裁者の姿は、古代エジプトのファラオを凌ぐかもしれません。

 ムバラク一家が30年の間に蓄財したとされる5兆8400億円の資産の額は、エジプトの一年分の国家予算におよそ匹敵するそうです。現在、スイス銀行の口座は既に凍結されていますので、今後、政府による調査や裁判などで元大統領の不正が明らかとなれば、この資金は、エジプト政府に返還される可能性があります。これは、国民にとりましては朗報であり、新たな民主的な政権が発足したら、エジプトの復興と発展のために役立てればよいのではないかと思うのです。もちろん、二度と不正蓄財ができないように、財政を透明化したうえで。インフラの整備、教育、雇用、社会保障、福祉の充実、観光を含めた産業の振興などに使われれば、国民の多くは、自らが成し遂げた民主化の成果を実感できるはずです。

 来るべき大統領選挙で、国家再建プランを競うのも、国民の政治への関心を高めるかもしれません。エジプト国民は、今度こそ、自らの手でエジプトの未来を選択できるのですから。

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エジプトに訪れた民主化の曙

2011年02月12日 14時53分01秒 | 中近東
国民の意思を尊重=政権掌握の軍が声明―エジプト(時事通信) - goo ニュース
 デモが発生した1月25日以来、世界は、固唾を飲んでエジプト情勢を見守ってきました。ムバラク大統領の辞任により、独裁体制の暗雲に包まれてきたエジプトにも、ようやく民主化の曙が訪れたことを、心より祝福したいと思います。しかも、国民の力で。

 ムバラク大統領が政権の座を降りたとしても、これから先の国造りには、幾つもの困難が待ち受けていそうです。イスラム原理主義体制という、もう一方の独裁の極に陥ることなく、民主化を達成しなければらなないのですから。イランの大統領選挙に際しても、不正を糾弾する激しい反政府デモが発生したように、イラン型の体制もまた、エジプトのモデルとはなりえません。独裁を倒して自由を獲得したエジプトこそ、中東における新たな民主主義体制の構築という、重大な使命を背負っているのです。

 後世の歴史家が、2011年2月11日という日を、中東、否、人類の歴史の転換点となった記念すべき日と記録するように、エジプト国民には、如何なる困難にも打ち勝って、よき国を目指して歩み続けていっていただきたいと願うのです。

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自ら選択肢を狭めるムバラク大統領

2011年02月11日 16時19分07秒 | 中近東
ムバラク大統領が辞任拒否、デモ隊の高揚は一転失望と怒りに(トムソンロイター) - goo ニュース
 エジプトでは、デモ隊による即時退陣の要求に対して、ムバラク大統領が、”居座り”を宣言したことから、期待を裏切られた国民の怒りはさらに燃え上がっているようです。しかも、大統領の発言は矛盾しているのですから、これでは、火に油を注ぐようなものです。

 ムバラク大統領の発言の矛盾とは、憲法改正を国民に約束しながら、スレイマン副大統領への権限移譲を表明したことです。何故ならば、憲法の規定によれば、大統領が職にありながら、権限を副大統領に移譲した場合には、憲法改正の提案はできない、と定められているからです(エジプト憲法第82条)。つまり、権限移譲の発言は、暗に、憲法改正の約束を反故にすることを仄めかしたと解釈することができるのです。これでは、国民は納得するはずもありませんし、大統領に対する不信感は募るばかりとなります。

 エルバラダイ前IAEA事務局長は、エジプトは爆発すると発言したそうですが、選択肢を狭めているのは、大統領自身なのではないでしょうか。

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エジプトの混乱―民主化なくして安定なし

2011年02月10日 15時48分46秒 | 中近東
無秩序には軍介入も=エジプト外相(時事通信) - goo ニュース
 しばしば、中東の安定のためには、非民主的なムバラク独裁体制の継続を支持する意見が聞かれます。民主化と安定は両立しない、と。が、本当に、そうなのでしょうか。

 もし、このままムバラク政権に何らの変化もなければ、国民の不満は解消されることなく、何度でも国政改革を求める大規模なデモが発生することでしょう。反体制派の人々は、ゼネストをも呼びかけているそうですので、エジプト経済の完全な麻痺も予測されます。しかも、中東の安定は、イスラエルのための安定、となりますと、エジプト国民の怒りの矛先はムバラク政権と一体化したイスラエルへと向かい、それこそ、長期的には、中東の安定を脅かすことになります。民主化による不安定化と、民主化しないことによる不安定化のリスクは同じてあり、民主化の否定は、必ずしも安定を約束しないのです。

 混乱が避けられないならば、民主化の道を選択した方が、エジプトの未来は開けます。今日、民主主義を享受している国の多くも、耐えがたい混乱を経験してきたのですから。新聞記事によりますと、発表されたムバラク政権の”懐柔策”というものは、公務員給与や退職軍人の年金アップなども含まれているそうで、国民向けとは思えません。野党側は、足並みの乱れを克服し、エジプト国民のための制度改革を迫るべきと思うのです。国民が納得する制度改革が行われて、はじめて、エジプトは安定するのではないでしょうか。

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ムバラク大統領の蓄財―財政の透明化が急務

2011年02月09日 15時24分25秒 | 中近東
ネットカリスマきっかけ?…カイロデモ最大級に(読売新聞) - goo ニュース
 エジプトでは、国民の4割が、一日2ドル以下の生活を送っているそうです。しかも、インフレにより、食料品の価格も上昇しており、一般の人々の生活は、日に日に苦しくなるばかりです。にもかかわらず、ムバラク大統領一家の資産は、400億から700億ドル(日本円で3から5兆円!)というのですから、国民の怒りも爆発するはずです。

 大統領職の給与だけでは、これ程の蓄財などできるはずはなく、この資産が、権力の濫用や利権漁り、あるいは、国庫からの不正流用などによって築かれたことは想像に難くありません。報じられるところによりますと、エジプトの国庫には、スエズ運河から上がる莫大な通行料や天然ガスの売却益が入るそうなのですが、それが、どのように使われているか、一般国民には分からないそうです。こうした不透明な状況は、早急に是正されるべきであり、エジプトは、民主化への改革の一環として、歳出と歳入の詳細を公表し、財政の透明化を急ぐべきと思うのです(会計検査院は機能しているのでしょうか…)。また、検察や第三者機関によって調査を行い、もし、大統領が不正に蓄財しているのであれば、犯罪として罪に問うべきです。氏の巨額の資産がエジプト国庫に返還されれば、エジプトの復興にも役立つはずです。

 新たな政権が誕生しても、この部分にメスを入れなければ、新たな独裁者、あるいは、富の独占者が誕生するだけです。独裁と不正を防止する制度をきちんと整えれば、貧しい国民を放置しながら、私服を肥やし、贅沢を尽くす大統領は二度と現れないのですから。


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中東の民主化―アメリカはシェーンか

2011年02月08日 15時22分33秒 | 中近東
健診名目の出国計画か=ムバラク大統領―独誌(時事通信) - goo ニュース
 チュニジアで発生した「ジャスミン革命」は、エジプトで大規模な反独裁デモを引き起こし、ムバラク大統領も、ついに国民の民主化要求を飲む方向に動きつつあるようです。ところで、中東諸国の国民が民主主義に目覚めた発端は、もしかしますと、イラク戦争であったのかもしれないと思うのです。

 イラク戦争は、マスコミや左派からの評判はすこぶる悪く、今でも”間違った戦争論”が闊歩しています。しかしながら、歴史の大きな流れから見ますと、中東における独裁の打倒の出発点は、この時にあったと言えるのではないかと思うのです。イラクの場合には、戦争という形態をとり、フセイン独裁を倒したのは米軍を始めとした多国籍軍でした。しかしながら、広場に設置されていたフセインの銅像を引き倒したのは、まぎれもなく、イラクの国民であったのです。そうして今日、反政府デモの広がりを受けて、イラクでは、マリク首相が、早々に自らの再選を否定し、給与の半額を申し出たそうです。もし、フセイン独裁体制が続いていたとしたら、国民からの抵抗に対しては、生物化学兵器を用いてでも残酷に弾圧していたかもしれません。国民あっての国家への変化は、民主主義の実現でもあるのです。

 歴史の評価は後から来るものです。民主化されたイラクでも、未だに反米感情も強く、エジプトもまた、将来的には、親米国に留まるか否かは不透明です。たとえ、アメリカが、西部劇のシェーンのように去りゆく者であったとしても、国民の側に立って中東諸国の民主化をサポートすれば、何時の日か、カムバックの声が聞こえてくるのではないでしょうか。

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エジプト大統領選挙―幅広い候補者の擁立を

2011年02月07日 14時57分04秒 | 中近東
交渉に招かれず=エルバラダイ氏(時事通信) - goo ニュース
 エジプト憲法が独裁体制を維持する仕組みを張り巡らしていることは、昨日の記事で取り上げましたが、”悪知恵の輪”を解く方法、すなわち、ムバラク大統領の辞任と野党側の候補者擁立の両者を実現させる秘策がないわけではありません。

 例えば、エジプト憲法によりますと、大統領選に立候補するには、(1)議会、諮問機関であるシューラ、地方議会における一定数の議員による支持、(2)一定の基準を満たした政党(前回の選挙で得票率3%以上…)の指名推薦、の二つが方法があるようです。極めて高い”参入障壁”と過去の不正選挙により、反ムバラク側には、現状ではこれらの基準を満たすことができる候補者はいないようです。そこで、もし、憲法を改正せずに大統領選挙を行うとしたら(新聞報道によれば、憲法を改正してから大統領選挙を行うらしい…)、与党側が妥協し、議会、シューラ、地方議会の与党議員が、反ムバラク側が擁立する候補者に対して、立候補の支持を与えるという方法があります。この方法ですと、(1)の条件は、クリアできます。しかも、憲法には、一議員が一人の候補者しか支持できない、とは書いていませんので、複数の候補者を大統領選挙に出馬させることもできるはずです。

 スレイマン副大統領は、ムスリム同胞団と交渉を開始したとも情報が伝わりますが、ムスリム同胞団以外の候補者を締め出しては、民主化は実現しません。エジプト国民が民主化の果実を享受できる日が早期に訪れるよう、知恵を絞るべきなのではないでしょうか。

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エジプト憲法―悪知恵の輪

2011年02月06日 14時05分44秒 | 中近東
ムバラク氏の権限移譲、象徴化案…米紙(読売新聞) - goo ニュース
 エジプト憲法とは、まるで、ムバラク大統領のあくなき権力欲と執念の産物のようです。至るところに、独裁体制が瓦解しないよう、巧妙なトラップが仕組まれているのです。まるで、知恵の輪ならぬ、悪知恵の輪のように。

 現在、エジプトに関する情報は錯綜しており、現地の様子や政権内部の状況は正確には分かりません。今朝方には、ムバラク大統領が執務を開始したという情報も流されています。何とも不安な限りです。今後、憲法に従って事態の収拾が図られるとしますと、大きく分けて(1)ムバラク大統領からスレイマン副大統領への権限移譲(形式的にはムバラク氏は大統領職に留まる…)、(2)大統領の即時辞任による最大60日以内の大統領選挙の実施(第84条)、の二つの方向性が考えられます。ところが、(1)の場合には、移譲を受けた者には、憲法改正を提案する権限が付与されておらず(憲法第82条)、(2)の場合、現行の憲法では大統領選の出馬要件が厳しいため、反政府側のリーダー達が立候補できなくなってしまうのです。このため、幅広い人材から大統領を選出しようとすれば、憲法改正のためのみに、ムバラク大統領が居座ることを認めざるを得なくなります。ところが、これも簡単なことではなく、大統領の独裁復活の懸念に加えて、憲法改正には、議会の3分の2以上の賛成による可決と国民投票による承認を要するという、高いハードルが待ち受けてています(第189条)。しかも、不正選挙が噂された議会選挙の結果、議席のの80%以上を占めているのが、ムバラク大統領率いる与党NDPなのですから、先行きは全く不透明となるのです。

 最短距離は、現議会における迅速な憲法改正案の可決なのですが、与党側がこれを拒否しますと、議会解散と選挙の実施から出直さなければならなくなります。もし、ここで前回選挙のような不正選挙が行われますと、ここで改革はストップしてしまう恐れさえあります。政権側は、野党との協議に入っているとの情報もありますが、憲法の罠に絡め取られないためにも、反政府側は、憲法改正に関する合意事項の実行、つまり、議会における与党による憲法改正案の可決の確約を、政府側から取り付けるべきと思うのです。

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ムバラク大統領が職に留まる恐怖

2011年02月05日 14時48分31秒 | 中近東
カイロのデモ「退陣まで続ける」 政権側と持久戦(朝日新聞) - goo ニュース
 エジプトでは、反ムバラク派が期限を切って求めてきた辞任要求を大統領が拒否したことから、事態の収拾は、さらに遠のいたようです。反ムバラク派が、あくまで大統領の辞任を求めている背景には、それなりの理由があると思うのです。

 その理由とは、もし、ムバラク大統領が、大統領選挙が予定されている9月までの間、権力の椅子に留まるとしますと、反ムバラク派には、弾圧される恐れがあることです。報道される情報によりますと、ムバラク大統領は、頑固な性格で知られており、一度目標を決めたら頑として貫くそうです。しかも、手段を選ばず…。国民は、ムバラク大統領のこの性格をよく熟知してるからこそ、安易に妥協できないのではないでしょうか。もし、妥協しますと、徹底した粛清と弾圧の嵐が吹き荒れることが、分かっているからです。実際に、暴力に訴えた親ムバラク派のデモ隊には、政権側の関与も疑われており、非合法的な手段も辞さないかもしれません。

 国民側が粛清と弾圧を怖れている以上、ムバラク大統領に対する辞任要求がおさまるとは到底思えず、政府側も、こうした国民の大統領に対する恐怖心を取り除くことは、至難の業です。エジプトが、早期に再建に向けての一歩を踏み出すためにも、まずは、憲法に大統領辞任規定があるのですから(第83条)、ムバラク大統領は潔く辞職すべきなのではないでしょうか。

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エジプト―大統領選でリーダーの選出を

2011年02月04日 15時12分43秒 | 中近東
いま辞任すればエジプトは大混乱に陥る=ムバラク大統領(トムソンロイター) - goo ニュース

 混乱が続くエジプトでは、ムバラク大統領が、”辞任すれば大混乱に陥る”と述べて辞任を拒否したことで、先行きがさらに不透明となりました。辞任しなければ、さらに大混乱に陥ることになるのですが・・・。

 混乱を長引かせている最大の要因として、野党側の分裂とリーダーの不在が挙げられています。つまり、大統領退陣後に、受け皿となるべき政権が見えてこないのです。この問題の解決には、9月に予定されている大統領選挙の繰り上げ実施しか、当面の暫定大統領の下での9月実施しかないのではないかと思うのです。大統領とは、そもそも国のリーダーでもあるのですから、国民が、選挙によって選ぶのに適した職です。そのためには、早期に大統領選出の制限を緩和し、不正選挙を防止するための、誰もが納得する仕組みづくりを急ぐべきです(中立的な勢力による選挙監視や国際選挙監視団の受け入れなど…)。野党勢力の代表が、まずは、公正かつ自由な選挙の実施を条件に、平常化への回帰を約束し、候補を擁立して選挙準備を開始すれば、国民の関心は、新たな大統領の選出に向かいます(言論の自由を保障…)。

 各大統領候補者は、国民に向けて、来るべきエジプトのヴィジョンを提示し、そのヴィジョンに基づいて国民が投票を行えば、民主化の一歩を踏み出すことができます。混乱を収拾し、政府の腐敗や不正を除去し、果敢に国政改革に取り組む能力を持つ大統領の選出こそ、エジプトを救うと思うのです。

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国民を敵に回したエジプト警察の間違い

2011年02月03日 15時39分46秒 | 中近東
エジプトのデモ隊を襲撃 数百人けが 政権関与の説(朝日新聞) - goo ニュース
 本日、テレビのカメラの前で、反体制側のエルバラダイ氏が憔悴しきった姿を見せ、政府支持のデモ隊には、警察官が参加していた確かな証拠があると訴えていました。もし、この情報が事実であるならば、エジプトの警察は、取り返しのつかない致命的な判断ミスをしたことになるのではないでしょうか。

 仮に、エジプトの警察が、反体制デモに対して理解を示したとしたならば、あるいは、政権移行後も、警察は、国民の信頼をつなぎとめることができたかもしれません。しかしながら、国民に対して暴力を加えたとなりますと、国民は、体制側に付いた警察組織を許さず、警察組織そのものを”国民の敵”と見なすことになります。つまり、新体制発足後にあっては、現在の警察組織は存続が許されず、責任者の処分や人員の刷新を迫られることになるかもしれないのです。

 如何なる政府組織であれ、公人であれ、一度国民の信頼を失いますと、それを取り戻すことは容易なことではありません。しかも、国民に対して暴力行為に及んだとなりますと、信頼回復はほとんど不可能です。エジプト警察は、国民を敵に回すという、最悪の選択を行ったのではないかと思うのです。

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自警団結成―エジプトの未来は期待できる

2011年02月02日 15時35分23秒 | 中近東
エジプトの宝、略奪から市民が守る(ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト) - goo ニュース
 混乱に乗じて略奪が起きることは世の常であり、古代の遺産を誇るエジプトでも、博物館や史跡が相当荒らされたそうです。ところが、エジプトの人々、この悲惨な状況を座視することなく、自ら自発的に自警団を結成し、警護に当たっているというのです。

 この行動に、エジプトの未来を確信した人は、少なくないはずです。何故ならば、自治という、民主主義の根幹ともいえる行為を実践しているのですから。ムバラク政権下では、強権を持って治安を維持し、国民を上から統制することで、国民の潜在的な自治能力を押さえつけてきたのかもしれません。今日、政府機能が麻痺する状況にあって、最古の文明を継承してきた人々の隠されてきた能力が、あたかも歴史の表面に浮上してきたかのようです。

 エジプトは、その古代の文明の後継者に相応しく、自らの力で国家の再建に取り組むことでしょう。このニュースは、エジプトの未来が希望に満ちていることを、世界に向けて発信していると思うのです。

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国民の怨嗟の的になったムバラク大統領

2011年02月01日 15時28分04秒 | 中近東
時の人 エジプトのホスニ・ムバラク大統領(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース
 エジプトで起きている反政府デモの映像は、国民の怒りの激しさを余すところなく伝えています。若者達が口角泡を飛ばして大統領を罵倒している様子からしますと、ムバラク大統領の辞任は避けられないのではないかと思うのです。

 何故ならば、ムバラク大統領は、国民の怨嗟の的になっているからです。あらゆる革命劇が最後に行き着くところは、得てして体制の象徴の破壊であり、かつては、国民の怒りを一身に受けた時の為政者が、断頭台の露と消えたものです。東欧革命に際しても、独裁者として君臨していたがゆえに、唯一、ルーマニアでは、チャウチェスク大統領夫妻が銃殺されました。エジプトもまた、大統領側の自発的な改革によるソフト・ランディング路線を期待できる時期は、既に過ぎているように見えるのです。むしろ、大統領が権力の座にしがみ付けばつくほど、国民の怒りは増幅されてゆくようです。

 国民感情がエスカレートしている場合、ムバラク大統領が辞任しない限り、事態が鎮静化するとは思えません。分裂気味とされる反体制勢力もまた、民主化に向けた同意事項やスケジュールを作成するなど、国民のために責任をもって、新たな政権発足への準備を急ぐべきなのではないでしょうか。

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