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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

小泉農水相と大衆心理操作

2025年05月27日 11時41分09秒 | 日本政治
 目下、備蓄米の凡そ30トンを直接に小売り事業者に売却するとする小泉農水相の米価高騰対策は、期待と懸念が入り交じる賛否両論の様相を呈しているようです。賛成派の支持理由はおよそ米価の下落効果一点に尽きるのですが、反対派を見ますとその理由は一つではなく、様々な視点からの同政策に検討が加えられています。余りにもタイミングが善すぎる小泉農水相の登場には、既に‘お膳立てが出来ていた感’が強く漂っており、長期的な視点から同政策の真の目的が怪しまれるのも故なきことでもないのです。本ブログも懐疑派の立場にあるのですが、本日、もう一つ、奇妙な現象に遭遇することとなりました。

 ここ数日、小泉農水相に関する記事を作成するに当たって、ウィキペディアに掲載されているページを読んでみたのですが、その中に、目が点となるような内容が記されていました。それは、同氏が研究員として籍を置いていた研究所を紹介する部分です。記憶を辿りますと、‘タビストック人間関係研究所の配下にある戦略国際問題研究所’とあったからです。タビストック人間関係研究所と言えば、しばしば陰謀の実在を主張する場合に登場するイギリスの研究機関として知られています。同機関は、タビストック・クリニックを前身に設立されたとされてはいるものの、その設立時期については第一次世界大戦中の1920年とする戦後の1922年とする説に分かれています。前者の説をとれば、戦時にあってイギリスがドイツ軍の残虐性をアピールするために偽情報を国民に流布し、大衆操作を行なったとする謀略機関とする説に信憑性を与えることになります。何れにしましても、軍との繋がりが強く、精神医学の研究所であり、現在でも国民保険サービスの一つとして運営されています。因みに、同クリニックの建物の前にはジークムント・フロイトの銅像が置かれており、アシュケナージ系ユダヤ人でもあったフロイトの精神分析学に基づく、当時としては先端的な治療が行なわれていたのでしょう(ユダヤ人迫害により、フロイトは亡命先のロンドンにて没している・・・)。

 正式にタビストック人間関係研究所が設立されるのは1947年のことであり、その際、ロックフェラー財団が支援したとされます。上記のタビストック・クリニックと軍との結びつきは、戦場や軍務で兵士達や戦争捕虜が負った心的外傷を治療する必要性からともされていますので、好意的に見れば、軍事分野における精神医療の拡充は、旧連合国諸国にとって共通の課題であったのでしょう。もっとも、人々の深層心理にまで踏み入ったフロイト流の研究は、容易に大衆を対象とした心理操作の研究開発へと繋がります。それ故に、真偽は別としても、同機関の名称が政治家との関係で目に入ると、自ずと大衆心理操作という言葉が頭に浮かんでしまうのです。

 小泉農水相の登場もドラマティックでしたので、演出効果を狙ったようにも思え、‘タビストック’の名に驚かされると共に、どこか納得もしてしまったのですが、本日、同ページにアクセスしたところ、タビストック人間関係研究所の名称はきれいに消えておりました。ページの更新日時は、5月26日16時22分となっていますので、昨日の午後に同部分は記事に消去されたようです。それでは、何故、‘タビストック’は消されてしまったのでしょうか。今般の交代劇の背景に潜む大衆心理操作に、多くの国民が気付いてしまう事態を怖れたからなのでしょうか。

 消去した直接的な理由としては、記事の内容に誤りがあったとする可能性は極めて高いように思われます。何故ならば、小泉農水相が勤務したとされるアメリカの戦略国際問題研究所(CSIS: Center for Strategic and International Studies)と極めて似通った名称で訳されることがある研究機関が別にあるからです。それは、日本語では国際戦略研究所、あるいは、国際問題戦略研究所と表記されるイギリスのシンクタンクです(IISS: International Institute for Strategic Studies)。英語では随分と違うのですが、日本語にしますと、両者は極めて間違いやすいのです。更新前の文章の誤りに気がついた人が、急ぎ、記事を訂正したとするのが最もあり得る記事訂正の理由となりましょう。

 そうは申しましても、イギリスの国際戦略研究所について調べましても、少なくとも現時点では、タビストック人間関係研究所との関係は確認できません。しかしながら、同研究所からは、日本国とも深く関わる極めて興味深い一面が見えてくるのです(つづく)。
 


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