万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「イスラム国家(ISIL)」より”クルド国家”の方がはるかに望ましい

2015年02月05日 15時32分15秒 | 国際政治
クルド人部隊がアイン・アラブ掌握(産経新聞) - goo ニュース
 「イスラム国家(ISIL)」の際立つ残虐性を考えますと、その支配地域に住む人々は、生きた心地のしない日々を多くっていることでしょう。こうした中、クルド人部隊の活躍が報じられており、アイン・アラブを掌握したとも伝わります。

 クルド人の人々は、国をもたない悲劇の民族として知られています。加えて、「イスラム国家(ISIL)」によって居住地域を荒らされているのですから、二重の悲劇に見舞われております。クルド人部隊には17歳の少女も参加し、危険を顧みずに「イスラム国家(ISIL)」と果敢に闘っており、クルド人にとりましては、この戦いは、故郷を護る防衛戦争でもあるのでしょう。国を持たないにも拘わらず…。クルド人の活躍については、トルコ政府が警戒感を示しており、自国内のクルド人の分離・独立問題に波及することを懸念しているようです。トルコ政府の懸念は理解に難くはありませんが、クルド人の人々が命がけで闘っていることを考えますと、クルド人の功績を素直に評価し、地位向上を検討することは、方向性としては間違ってはいないように思われます。シリア北部にクルド人自治区を設ける案もあるそうですが、トルコもまた、反対を貫くことで国内でのクルド人との対立が激化するよりは、むしろ、クルド人に好意的な理解を示した方が、国内のみならず、長期的には中東全体が安定する可能性もあります。

 少なくとも、「イスラム国家(ISIL)」による恐怖支配が永続化するよりも、将来的には、中東のどこかに、”クルド国家”が建設される方がはるかに望ましいことです。クルド人は、自らの国家と国民を慈しみ、愛することでしょうから。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2015-02-05 19:20:37
こんばんは。ISILとイスラーム国家は厳密に区別されなければなりません。
ISILはイスラームを名乗っていますが、国家と呼べるものではなく、ただの凶悪な犯罪者集団に過ぎません。
本来はISIL・ISISも間違いです。
ISIL・ISISのSはState(国家)を表します。
ISIL
the Islamic State of Iraq and Levant
(イラクとレバントのイスラム国)
ISIS
the Islamic State of Iraq and Syria
(イラクとシリアのイスラム国)
凶悪な犯罪者集団はイスラム諸国と混同させる為にイスラム国を名乗っていますが、国家と呼べるものではありません。
敬虔なイスラーム教徒やイスラム諸国は迷惑しています。
首都圏では放送されないのかもしれませんがフジ系列の関西放送の5時台のニュース番組「アンカー」では火曜日に有本香氏が、神奈川にあるモスクを取材し、本来のイスラーム教がどのようなものであるかレポートしておられます。
我が国ても名古屋のモスクに爆破予告・・嫌がらせだろうと思いますが、アラブ系の子供に「お腹に爆弾を巻いてるの」と尋ねたり・・此のような馬鹿げた事はテロリストを利する行為でしかありません。
テロリストに手を貸すような行為を止める為にも冷静になり、アラブ系の人々とテロリストを厳格に区別しなければなりません。
テロリストの術中に嵌り、無関係のアラブ系の人々を攻撃することはテロリストを利するだけでなく、中東諸国と我が国の分断工作に乗せられてしまう事になります。
クルド人の少女も何が大切か、何を守るべきなのかを知っています。
情けないのは、我が国の国会議員・元官僚・識者・文化人・マスコミの連中です。
国会議員は、首相に責任があると口を揃え、元官僚も双方に配慮すべきと言い、識者は「彼らにも言い分がある。争いは良くない」皆、浮足立って緊急を要する事、外国にいる邦人の安全の確保、国内でのテロ対策は、そっちのけの状態です。
マスコミは不安が一番美味しい商売になりますので、不安を煽り政権攻撃に終止している状態・・
これこそが戦後教育の成果です。
革命を狙う連中にすれば、赤子の手をひねるようだと、ほくそ笑んでいる事でしょう。
特に、国会議員・・・選挙の時は綺麗事を並べ立て、立派な公約を掲げ・・・緊急時に浮足立って、首相がテロリストに配慮しなかったのが悪い・・
首相はテロを最大限利用して集団的自衛権・自衛隊の海外派兵を推し進めようとしている。
此のような事を議論している場合でない事は、国民はわかっているはずですが・・
浮足立つ事こそテロリストの思う壺・・・
情報戦のまえに・・・インフォメーションとインテリジェンスの区別も分からない国会議員
テロル・・・恐怖による支配・・・テロリストの罠に嵌っている事に気づきもしない・・・
このまま素人に政治を任せておいていいものでしょうか。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2015-02-05 22:51:55
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 イスラム諸国やイスラム教徒の最大の敵こそ、「イスラム国(ISIL)」なのではないかと思うのです。領土を武力で侵害するのみならず、残忍性を全世界にアピールすることで、イスラム教のイメージにもダメージを与えております。イスラム教徒の聖職者などが、この点を指摘すれば、「イスラム国(ISIL)」の勢いは相当に削がれると思うのですが…。イスラム側も、国際社会に対して積極的に説明をいたしませんと、誤解を受けることにもなります。日本国でも野党が、人質事件によってイスラム勢力を敵にしたような非難の仕方をしておりますが、これもまた、「イスラム国(ISIL)」という暴力集団を庇うための誘導なのかもしれません。
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