万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

オバマ氏再選―ロムニー氏の敗因は軸のぶれ?

2012年11月07日 15時34分44秒 | アメリカ
米メディア、オバマ氏再選と アメリカ大統領選(gooニュース) - goo ニュース
 大統領現職の民主党オバマ氏と共和党ロムニー氏の対決は、選挙終盤にきて接戦が報じられ、投票日に向けて白熱した選挙戦が繰り広げられてきました。いざ、投票箱の蓋を開けてみますと、苦戦を予測されていたオバマ氏の圧勝であったようです。

 それでは、何故、一時は優勢を伝えられてきたロムニー氏は、敗北したのでしょうか。敗因は複数あるのでしょうが、その一つは、”変幻自在”とも評されたロムニー氏の政治姿勢に対する保守層の懐疑があったのではないかと思うのです。アメリカの世論を二分した医療保険制度改革に際しては、アメリカの保守層は、自発的に”ティー・パーティ―”を展開し、”草の根民主主義”が健在であることを示しました。ところが、今回の大統領選にあっては、保守層を地盤としているはずの共和党候補のロムニー氏と”ティー・パーティ”との間には、どこか、隙間風が吹いているようにも見えたのです。ロムニー氏が、宗教的にはモルモン教徒であることも原因しているのかもしれませんが、特に、終盤に差し掛かるほど、ロムニー氏の外交姿勢は中道よりへと修正されてゆきます。また、オバマ陣営の支持層を切り崩すために、中国系を含むマイノリティー層の懐柔を図っており、こうした一貫性のない態度が、保守層のロムニー離れを引き起こしたのかもしれないのです。選挙序盤では、タカ派の共和党らしく、対中強硬姿勢をアピールしていたにも拘わらず…。

 結局、ロムニー氏は、政治姿勢の軸がぶれたため、本来の地盤であるはずの保守層の票を固めることができず、ホワイトハウスが遠のいたのではないかと憶測するのです。そしてそれは、もしかしますと、どちらをも熱狂的に支持することができないアメリカ国民の、政治に対する漠然とした不信の現れであったのかもしれません。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2012-11-07 19:06:29
こんばんは。米大統領候補ロムニー氏を見ていて感じたことは、日本の民主党・みんなの党のように都市部の層だけしか見えていなかったように感じました。
新自由主義者・・竹中平蔵氏や大田弘子氏に見られるように裕福な層を優遇すれば、こぼれ落ちた富が貧困層も豊かにする。。俗に言うトルクダウン理論の信奉者ではないのかなと。
トルクダウン理論の一部は正しいのです。一つの例を上げますと最近経営が苦しくなっている大手家電メーカーなどの製品でメーカーの利益が一番大きいのは、低価格製品でもなく高級品でもなく一般的に中級品といわれる商品です。
価格帯として7万円くらいから20万円くらいの商品です。
部品の製造上、低価格製品の為にラインを別に作ればコストとして価格に跳ね返りますので、共通する部品は中級品も低価格商品も同じ物を使っています。
その結果、日本で製造された製品は低価格商品でも異様なほど頑丈で長持ちし日本製品に対する信頼を生み出したのです。
低価格商品でも機能の一部を制限したり梱包を簡易にする事によって価格を下げていても中身の部品は一クラス上の物を使用し低所得層もより良い商品を手に入れられる、この点ではトルクダウン理論も成り立つでしょう。
これが国家財政や国際経済になりますと格差を広げ、近年よく使われる「勝ち組」「負け組」を生み出し国内でも深刻な対立構造を生み出しかねないのです。
世界的な不況や通貨の不安定を引き起こした最大の原因は、先進国は金融・保険・医療・サービスなどの産業と最先端の技術だけやって、製造業のような普遍的な分野は発展途上国に譲渡しても構わない・・・
金融やサービス業で雇用は増えませんし医療・最先端の技術開発に携われる人間も限られてきます。
そのような分野から漏れた者は賃金の大幅な値下げ・レイオフに怯えながら、その日暮らしを続けるよりありません。
ロムニー氏は、そこの所を理解せず、金持ち優遇のような発言をし国民の支持を得られなかったものと考えます。
TPP論議も盛んなようですが、日本ではTPPの個別の分野についての情報が国民に開示され議論がなされたでしょうか
岡田イオン氏が「TPP参加も視野に入れる」などと不埒な発言をしていました。
国会の参考人招致でも経済学を理解しているのは数人・・ひどいのになれば「デフレ下でも消費税増税をすれば税収は増える」「日本の借金は・・」よくもまあ中学生か高校生程度の理解力があれば誰でも指摘できるような幼稚な誤りがひどすぎて・・どこが経済学部の教授・エコノミストなんでしょう。
日本はTPP参加より米国に対して日本企業が現地生産をしていることでアメリカ国民の雇用に貢献していること、デフレを脱却し経済成長をする事によりアメリカ製品の輸入を増やし米国経済を支えることが可能な事をアピールすることです
(オバマ大統領を助ける事になり、民死党がグダグダにした日米関係の修復にも寄与する事になると思います)

経済関係で少しだけ原発関係にも触れておきますね。
京大原子炉実験所・助教 小出裕章氏が澤田哲生氏との論争の中で原発に反対する理由を述べておられます。
「原子力は差別の象徴だからです。地場産業を貧しくし、生きるのに大変困難な状況にさせられていたため原発の誘致を受け入れざるを得なかった。原発がなくなると生きていけなくなってしまう。原発は麻薬のようなものでしかない」
このように感情的で無責任な発言を繰り返す人間と議論は成り立ちませんね。(どこかの半島の民族のようです)

原発がある自治体の中にも原発を通じて国に貢献し電力の安定供給を通じ安全保障に一役買っていると誇りを持つ立派な人々も大勢いると信じます。
JR東海会長 葛西敬之氏「(民意)に従えば国滅ぶ」
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2012-11-07 22:18:43
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 ロムニー氏には、どこか、共和党らしかなぬ共和党候補、といったイメージがありました。いささかスマートすぎるのでしょうか。
 アメリカ大統領選挙でも、中国への製造拠点の移転が批判点となっており、製造業の国内回帰が、雇用回復の処方箋と認識されているようです。工場が海外に移転しますと、雇用と共に所得もまた海外に移るのですから、国内の購買力が低下、経済が連鎖的に衰退するのは当然といえば、当然のことです。新産業分野として、常々、医療・介護、新エネルギー産業、環境などが挙げらrていますが、これらの産業が、製造業の移転で失われた雇用を吸収できるとも思えません。政府は、国内の雇用の維持に努めるべきところを、民主党政権は、全く逆の政策を遂行しているのです。
 かつて、アメリカにおいて、激しいジャパン・バッシングが起きた時、日本企業は、アメリカでの現地生産を増やすことで、なんとか日本批判を抑えることができました。中国企業は、アメリカの雇用に貢献していないところが、日本の対応との違いとも考えられます。経済は、相互利益が期待できる分野ですので、上手な関係を構築することこそ、大事であると思うのです。
 政府やマスコミが言うほどには、一般の国民は、脱・反原発を支持しているわけではないようです(おそらく、3分の1程度・・・)。因みに、原発立地県である福井県の西川知事も、原発の日本経済への貢献について、触れておられたようです。原発技術を失い、自国を衰退に導くかもしれないのですから、多くの国民は、原発ゼロは難しいと理解しているのではないかと思うのです。
 
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