万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

移民政策をめぐる奇妙な日独のシンクロナイズ

2018年12月20日 14時10分44秒 | 国際政治
「永住可能資格」来年4月にも=建設業で取得可能に―外国人材拡大
降って湧いたように持ち上り、十分な審議もなくあっという間に国会で可決・成立してしまった入国管理法改正法案。報道に拠りますと、年内成立を急いだ理由は、国政選挙を経れば国民の抵抗に遭い、国会で否決されるリスクがあったからなそうです。この説明が日本国政府の本音であれば、民主主義は政府によって踏み躙られたこととなるのですが、外国人受け入れ拡大政策は、興味深いことに、既に移民・難民問題に苦しんでいるドイツにおいても進められています。日本国と時を凡そ同じくして、12月9日に「専門人材移民法」が成立したのですから(12月20日付日経新聞朝刊掲載記事より)。

 日本とドイツは、第二次世界大戦にあってイタリアと共に三国軍事同盟を締結し、枢軸国陣営を形成した関係にあります。共に連合国陣営に敗れて敗戦国となったのですが、この両国が、現在、移民政策に揺れているのは単なる偶然なのでしょうか。両国とも、同政策の根拠として共通して挙げられているのが‘人手不足’です。しかしながら、日本国の外国人労働者受け入れ政策の根拠とされる‘人手不足’説には、よく考えても見ますと不自然さがあります。

アベノミクスは戦後最長となった「いざなぎ景気」を超えたとされていますが、経済成長率も低く、かつ、賃金上昇を伴いませんので、GDPの数値上の‘好景気’に過ぎないようです(GDPの計算式には政府支出が含まれるので、政府の財政拡大政策を反映しているに過ぎないのでは…)。つまり、‘人手不足’の要因は、民間の企業活動の拡大に起因するものではなのです。

例えば、同法の成立を渇望したとされる造船・船舶業は、価格競争において優位する中韓勢力に押され、幾分持ち直し傾向にあるとはいえ、受注ゼロが目前に迫った時期もありました(同分野では、競争力を回復させるための人件費節減が目的かもしれない…)。建設業も、2020年に東京オリンピック、並びに、2025年に大阪万博の開催を控えているものの(東京都では既に特例で外国人労働者の就労を許している…)、全国的に見れば成長産業とは言い難い側面があります(もっとも、防災を目的とした老朽化したインフラの改修・建替え事業は増加…)。対象14分野に含まれる素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業については、製造業の多くが海外に既に工場を移転させている点に加え、どこか、同法案に乗じて紛れ込ませた観があります(マスメディアはこの三分野については触れようとしない…)。現実に増員を要する分野とは、季節労働を要する農業、団塊の世代が高齢期に入った介護、および、訪日客が3000万人に達した観光ぐらいなのではないでしょうか。

また、人手不足の根拠としては少子化高齢化も挙げられていますが、少子高齢化は、日本国のみに現れた特別の現象ではありません。先進国の多くが共通して直面している問題であり、仮に人口減少=移民受け入れであるならば、他の諸国も同様の政策を採用するはずです。実際に、ヨーロッパ諸国では、ドイツ以外の諸国は国民の反対を受けて反移民政策に転じており、ドイツだけが時流に逆行するような‘特異’な動きを見せています。しかも、その理由は、他の諸国が移民受け入れに消極的であるからこそ、優秀な人材を獲得できるチャンスであるというものなのです。

ドイツ企業も製造拠点の多くを海外に移転させていますので、おそらく、日本国と同様‘人手不足’は移民政策を進めるための口実に過ぎないのでしょう。そして、両国のみが移民拡大へと向かう背景を探りますと、第二次世界大戦における敗戦という事実に行き着かざるを得ません(さらに遡れば、明治維新や市民革命にも…)。おそらく、移民の増加が破壊的な効果を及ぼすことを十分承知な上で、両国を占領した旧連合国の背後勢力、即ち、国際的な新自由主義勢力と共産主義勢力が結託し(特定の国家ではない…)、講和条約の発効にも拘わらず、今日まで水面下で温存させてきた間接統治システムを用いて移民政策を強要した、とする推測も、あながち頭から否定はできないように思えます。このシナリオはあくまでも憶測の域を出ませんが、日独のシンクロナイズはあまりにも奇妙です。そしてそれは、今日、日独両国の真の独立の問題、並びに、民主主義の実現の問題をも鋭く問うているようにも思えるのです。

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3 コメント

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ドイツと日本 (櫻井結奈(さくらい・ユ-ナ))
2018-12-20 15:55:24
日本とドイツには、奇妙な同時代現象があり、それだけに不安です。
ドイツでも、日本の「入管改正法」に似た法律が成立したんですね。、、初めてお聞きしました。
もう、どちらも大変ですね。この先が思いやられます。((怒))

☆「いざなぎ景気」のことは、年配者のかたから、お聞きしたことがあります。
その頃は、日本の将来に、ある程度は希望が持てた幸せな時代だったんですね。
「いざなぎ」という、日本神話の神様にちなんだ「牧歌的」なイメージも感じ取る事ができます。
でも、今の「アベノミクス」には、幸せなイメージは全く期待できません。
ますます、「閉塞感」を感じるばかりです。
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櫻井結奈さま (kuranishi masako)
2018-12-20 20:11:18
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 我が国の入管法改正は、国内問題というよりも、国際的な潮流の中から理解した方がよいのではないかと思うようになりました。政府が相当の無理をしており、あまりに不自然な点ばかりが目立つからです。民主主義の根幹を崩壊させてまで、何故、同法案の成立を急ぐのか…、その背景は、国民の見えないところで蠢いている国際組織の関与があるのではないかと推測しております。
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やまたに (Bystrouska.Vixen)
2019-07-16 07:36:09
伊邪那岐景気を抜いたかどうかはさておき、仮に好景気なら、景気とは循環するものなので、いつかは不景気がくるでしょう。
数字だけの演出とはいえ、一応は最長で高い山とされております。
ならば、この後必ず来る不景気は長く深い底になるのは当然でしょう。
それでも円高不況の時は、原油を初めとする資源を高い¥を背景に安く入手できて、切り売りの縮小経済ながらなんとか耐えられましたが、今度は逆転して\安です。
餓死者が巷に溢れるでしょう。
高いモノは下げれても、安いモノを上げるのはたーいへんなはずです。
(明治から第二次世界大戦終了までの日本の歴史をみてください)
¥安になれば、製造業が復活するという脳内お花畑の阿呆経済評論家もいますが、倉西先生の仰るとおり、日本の製造業は既に海外へ流れ去ってるのです・・・。
弱った日本が、支韓の支配を受けるのならば。わたしはそんな世界に生きたくないです。
ドクターキリコの診察室というホームページがむかしありましたが、どこぞにないでしょうか?自決用のシアン化合物を売ってくれるサイトは


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