万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

誰がグローバル金融市場のルールをつくるのか

2009年01月29日 15時44分00秒 | 国際経済
09年世界成長率見通し0.5%に下方修正=IMF(トムソンロイター) - goo ニュース
 昨年の暮に金融危機が発生したことから、国際社会では、金融市場のグローバル化を支えた”新自由主義”に対する批判と反省の声が高まっているようです。そこで、もし、自由放任がカオスを生むならば、カオスに秩序を与える”何か”がなくてはならないはずです。

 考えてみますと、この問題は、古くて新しい”自由と規律”の問題であるかもしれません。そうなりますと、この”何か”とは、やはり、自由を律する”規律”ということになりそうです。しかしながら、現在の国際社会を見渡してみても、この”規律”を決めるに最適と思しき国際機関は見当たりません。最有力候補は、IMFなのでしょうが、IMFの基本的な役割は、国際決済に関わる流動性の確保ですので、金融市場のルールづくりに適しているのか疑問があります。そこで、G8やG20なども候補に挙がるのですが、常設の機関ではありませんので、時間を要するルールづくりという作業には不向きであるかもしれません(新聞報道によりますと、弁護士の国際機関が活動を開始しているとも・・・)。また、立法過程についても、ルールの草案は、中立的な立場から作成されるべきでしょうし、草案の可決についても、各国とも納得する決め方を探るのは難しそうです。

 このように、金融市場のルール作りには、困難が待ち受けているのですが、この作業に取り組みませんと、世界同時不況をもたらす金融危機の再発を防止することができません。もし、共通のルールが作れないとしますと、国家の単位で規律を定めるか、あるいは、自国の金融市場の扉を開け閉めして、国境を越えたマネー・フローをコントロールすることになりましょう。この問題を考えますと、誰が猫の首に鈴を付けるのか、という昔のお話が思い起こされるのです。

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4 コメント

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ルールで次元の魔物を・・・ (冬水)
2009-01-30 06:49:46
 制御できるだろうか?フリードマンの流れを汲む、金融工学者たちは、数学に長けた人たちなのに、どうして、次元の魔物を意識しなかったのか?
 1万ドルを持っている人が、1万ドル、相場を張れる市場と、1万ドルしかないのに、1000万ドル、相場を張れる市場は、同じ次元なのか?
 他者の貸借関係に、無関係なもの同士が、破産確率の証券を売買して、どうして、今までと同じ次元なのか?
 一次方程式の比べれば、二次方程式は、ずっと、難しい。三次や四次は、それこそ、天文学的に難しくなる。五次以上は、次元の魔物がいて、代数的には解けない。
 数学に長けた金融工学者は、当然、知っているはずなのに、何故、魔物を、ランプから呼び出した?

 以下、世界のGDPをはるかに超えるバブルを、どうやって、克服する。
 サブプライム150兆円、新興国市場500兆円、クレジットカード250兆円、商品先物900兆円
商業不動産2500兆円、外為デリバティブ5600兆円、CDS5800兆円

 CDSだけで、世界中のGDPを越えている。
 中谷巖は経済学で、わかるのは、2,3割と言ったそうだが、今頃、そんなことがわかるほど、知恵遅れなのかと言いたい。2,3割も、あるものか。1割もない。あとは、神のみぞ知るだ。

 人間と言う愚かな存在が、国際協調をしても、神のみぞ知るの領域には無力である。
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冬水さん (kuranishi masako)
2009-01-30 10:22:34
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 金融危機への対応は、起きてしまったことに対する事後的な措置と、再発防止のための予防的な措置とに分けることができると思います。私が、本記事で申し上げているのは、今後、バブルとその崩壊という現象が繰り返されないための予防措置なのです。ですから、規制を実施したところで、現在直面している問題が解決できるわけではないのです。
 ところで、冬水さんがお知らせくださいました損失額から判断しますと、世界各国の政府が巨額の財政出動をしたところで”焼け石に水”となり、むしろ、財政リスクという別のリスクが発生することになりましょう。現在、必要とされている金融工学とは、”バブル”を元に戻す、あるいは、安全に処理する技術なのではないでしょうか(現在の金融工学は、アクセルしかない・・・)。
返信する
同じ過ちを犯す・・・ (冬水)
2009-01-30 16:54:56
 マルクス・レーニン主義と金融工学を生んだ新自由主義は、どちらも、理性過信という人間の傲慢さに気づかない哲学。
 マルクス・レーニン主義者たちは、理想の国家を人間が設計できると過信し、上手く行かなければ、思想に問題があると思わず、人民の敵が邪魔をしたせいだと思って、粛清。魔物国家ソ連と魔王スターリンを生み出して、その犠牲者、数千万人。
 新自由主義者たちも、経済現象は、100%、彼らの複雑な数学式によって記述できるのだと過信。
 アラジンのランプから、次元の魔王を登場させて、おそらく、その犠牲者は、途上国、先進国の貧民、そして破産者であり、かくして、ゴヤの絵の魔王に食われる哀れな犠牲者のごとく、食い散らされて、数千万人から、一億人が死ぬだろう。数千万から一億が餓死、凍死、自殺、戦死、病死、これぐらい、犠牲者が出て、初めて、魔王は満ち足りて、ランプの中に、お戻りになるだろう。
 今、この時間にも、途上国では、餓死し、職を失ったチャイニーズは首を吊り、路上にいるアメリカ貧民は凍死。
 社会現象の90%以上は、神のみぞ知るなのだ。革命、改革は、意図せず、魔王を生み出すのだ。人は暗闇の足元を、行燈で照らして、一歩一歩、進まねば、魔王と遭遇して食われる。
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冬水さん (kuranishi masako)
2009-01-31 09:59:28
 ご返事をいただきまして、ありがとうございました。
 魔王とは、変幻自在に自らの姿を変えて、呼び出したはずの人間を苦しめるのです。宗教からは狂信を、狂信を否定した理性からはイデオロギーを、イデオロギーから解き放たれようとした自由からはエゴイズムと放縦を・・・。自由を否定すると、今度は全体主義や隷従という魔王が手ぐすねを引いて待っているかもしれません。魔王は、この世に出現するために、あらゆる機会を虎視眈々と狙っているのです。それでは、人間は、魔王を封じ込めることができるのでしょうか。人々は、己自身と己の集団をよく知るべきと思うのです。魔王が闇黒から這い出る道を塞ぐために。
 
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