万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国もパナマ文書を調査すべき-情報の宝庫

2016年04月07日 15時20分02秒 | 国際政治
【パナマ文書の衝撃】米国にも波紋、テロ資金に関与か 司法当局が調査に着手 北・イラン制裁対象の33個人・企業も 
 アイスランドの首相を辞任追い込んだパナマ文書に対して、日本国政府は煮え切らない態度を示しており、欧米諸国との温度差は歴然としています。ネット上では、政府としては調査をしない方針との情報もありますが、パナマ文書には、積極的に調査すべき幾つかの理由があります。

 第一の理由は、当文書に名前の挙がった富裕層の人々については、脱税やマネーロンダリングの疑いがあるからです。早々に調査を開始したオーストラリアでは800人余りが調査対象とされておりますように、日本人についても、違法行為の疑いがないわけではありません。日本国は権力分立体制にありますので、政府が静観したとしても、警察や検察、あるいは、国税庁には、経済犯罪や脱税の容疑で調査を実施する公的な義務があります。第二の理由は、スパイや工作活動に関する情報の収集です。パナマには、中国等の海外に潜らせたスパイや工作員に対する報酬を支払うためのダミー会社が設立されていた疑いが指摘されています。アメリカでは、テロ資金との関与が取り沙汰されていますように、ダミー会社には北朝鮮関連のものもあり、核・ミサイル開発資金の入手ルートの解明に役立つ可能性もあります。リストには中国関係者の名が多数みられ、日本共産党も沈黙しているところを見ますと、怪しんで然るべきかもしれません。さらに、今後の消費税増税と法人税減税のバランスを考えるに際しての判断材料となるのが、第三の理由です。仮に、合法的とはいえ、日本企業の多くが、租税回避措置を採っているとしますと、節税で浮いた利益の使い道や納税比率なども、政府が知るべき財政上の重要な情報です。また、企業の租税回避を認めつつ、消費税増税を求めるとなりますと、国民の多くも納得しないことでしょう。少なくとも、パナマ文章は、政府が、企業の節税行動の実態を知る貴重な資料ともなるのです。そして、第4の理由は、日本国内のみならず、全世界の’見えざる動向’を一纏めの情報として入手できることです。仮に、パナマ文書を徹底的に分析することができれば、半世紀近くに亘る国際情勢の動きを裏から読み解くことできます。

パナマ文書ほど様々な分野の情報の詰まった情報の宝庫はありません。専門的な情報機関を持たない日本国は、情報分析能力に弱点があると指摘されてきましたが、そうであるからこそ、公開されたパナマ文書の徹底調査とその活用は、国際レベルに追い付く千載一遇のチャンスであると思うのです。

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