万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国外交文書が暴露する”尖閣諸島二段階作戦”

2012年12月29日 15時49分03秒 | アジア
中国外交文書に「尖閣諸島」=日本名明記、「琉球の一部」と認識―初めて発見(時事通信) - goo ニュース
 先日、1950年に、建国間もない中共政府が、尖閣諸島を「琉球の一部」として認識していたことを証明する文書が発見されました。いわば、従来の日本側の主張を裏付ける、重要な証拠が見つかったことになります。

 この文章から見える当時の中共政府の策略とは、”尖閣諸島は日本国の領土であるけれども、一先ず台湾の所属島嶼として取り込めるかどうか、検討してみよう”ということのようです。台湾の武力併合と一緒に中国領としてに取り込む”尖閣諸島二段階作戦”は、この時、考案されたらしいのです。一方、当の台湾は、1952年に調印された日華平和条約の交渉過程において尖閣諸島を問題にしておらず、尖閣諸島を日本領と認めていました(この点からも、尖閣諸島は”台湾の付属島嶼”という根拠は、中共政府の発案である可能性が高い…)。60年代末に、国連によって近海海底における天然資源埋蔵が報告されますと、両国とも、尖閣諸島の領有権を主張し始めますが(日本国にとりましては寝耳に水…)、この時の中共側の主張は、50年代の”尖閣諸島二段階作戦”を下敷きにしています。つまり、台湾の所属島嶼であることを、領有の根拠として挙げたのです。しかしながら、よく考えてみますと、中国による”尖閣諸島二段階作戦”は、台湾の将来的な併合を想定していますので、現時点において、台湾が独立国家であることを考えますと、中国が、領有権を主張することはおかしなことです。仮に、”台湾の所属島嶼”を根拠とするならば、尖閣諸島の領有権を主張できるのは、唯一、台湾のみとなるはずなのですから。この弱点に気付いたのか、近年では、中国固有の領土であるかの如くに主張するようになり、いわば、”尖閣諸島一段階作戦”にシフトしてきているようにも見えます。何れにしましても、一連の中国側の文書や行動から、中国が、言いがかりを付けて、尖閣諸島を日本国から奪おうと、虎視眈々と策略をめぐらしてきたことが、よく分かるのです。

 国際裁判では、禁反言が原則とされており、過去の自ら行った言動と矛盾する主張を為しても、それは受け入れられません。今回の文書の発見は、中共政府が主張してきた尖閣諸島に関する根拠が、完全に瓦解したことを意味するのです。ICJの法廷に立つまでもなく、国際社会は、当然に、”中国には尖閣諸島に関する根拠なし”と見なすことでしょう。この状態で中国が、尖閣諸島に対して軍事行動を起こせば、それは、紛れもなく、中国による日本に対する侵略となるのではないでしょうか。

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4 コメント

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Unknown (ねむ太)
2012-12-29 22:11:43
こんばんは。中国も性懲りもなく画策しているようですが、台湾の教科書・地図も魚釣島は日本の領土になっています
台湾には本省人と外省人がいます。
高砂族を始めとする古くからの台湾の方々は親日です。
台湾で大ヒットした映画は大戦が終わった後、台湾から引き上げる日本人と台湾の人々の物語で金美齢氏の語られる光景そのままです。
日本での扱いは例によって例の如くですが。
日本が引き上げた後、大陸を追われた蒋介石率いる中華民国が入り込んで、2・28事件(2万とも3万とも言われる虐殺事件を引き起こし長期に渡って戒厳令を敷いて台湾人に対する弾圧を繰り広げたのです)
その子孫が外省人として中国に復帰しようと画策しています。
国民党のスローガンは大陸反攻で毛沢東率いる共産軍を倒して大陸で政権を樹立する事が目的でした。
中共政府のように資源や利益の為に勝手に国内法を成立させ他国の領土も自国の領土だと主張する狂人とは一線を画して考える必要があります。
尖閣に押し寄せた漁船の所属する漁業組合のように漁業協定の締結を申し出てくれば、国が沖縄県と調整をしながら協議し、協定として調印すれば解決しますが、問題をややこしくしているのは、現在の馬政権で外省人の政権ですから中国の隠れ蓑になる可能性があることです。
蔡英文氏が総統になっていれば状況はかなり違っていたでしょう。
我が国の国民も台湾に対する恩と感謝は忘れてはなりません。先の大戦で亡くなられた方々を供養し続けていてくれます。
特に立派な人を神として手厚くお祀りしていただいている事に感謝をし一刻もはやく正式な独立国家として認め友好条約を締結することが大切です。
国、民間を問わず交流を続け台湾が国際的に独立国として認められるよう支援することも大切です。
日本・台湾・フィリピン・インドネシア・ミャンマー・シンガポール・タイ・ベトナム・スリランカ・インドが手を携え中国包囲網を敷き圧力を強め封じ込めることで中国国内の民主化を支援することに繋がりチベット・ウイグルの独立を支援することにもなります。
中国・韓国は、にわか成金のようなもので経済的に失速すればロビー活動はおろか、誰からも相手にされなくなるでしょう。
来年は伊勢神宮・熊野大社・出雲大社の式年遷宮の年に当たりますので、奇跡のような解散総選挙、戦前、戦後を通じて国史に名を残す政治家のお孫さんが総理・副総理に就任されたのですから、戦後の誤った歴史観を正し日本国の国史が一つの維としてつながれ、歴史・伝統に則った日本の再生は神々の御意思でも或るのでしょう。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2012-12-29 23:02:56
コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 今になって考えてみますと、デタントの流れの中で、日中国交正常化を優先させるあまりに、日華平和条約を失効させたことは、適切ではなかったと思うのです。欠陥として、国際社会における台湾の独立的な立場を弱め、中国有利に働いてしまいましたので・・・。とは申しますものの、台湾は、国際法における独立主権国家の要件を満たしておりますので、日本国政府は、今後とも、台湾とは、国家間関係を基礎に友好関係を維持し、国際社会における台湾の地位確立に協力すべきと思うのです。漁業協定締結に加えて、国連への復帰や国際機関への加盟を後押しすることも一案かもしれません。中国の妨害に怯まず、台湾、フィリピン、インドネシア・・・と繋がってゆけば、”自由と繁栄の弧”が描かれることにもなります。
 来年は、式年遷宮の年にあたりますので、良い意味で、日本国の、そして、人類の歴史に新たな一ページが開かれることを、心より祈っております。
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Unknown (Suica割)
2012-12-30 01:48:51
中国もやり損ないが多いですが、日本もやり損ないがあります。
2月号のWiLLの中西輝政氏の論文に書いてありましたが、国連憲章の敵国条項を中国に使われた場合、尖閣諸島防衛にアメリカの助けが使えなくなります。
もしくは、初動が鈍ります。
そうならないように死文と化した敵国条項を復活させないようにぶっ殺しておくかすべきだったのを日本がしなかったのは外交政策の失敗であるとあります。
まさに日本の盲点です。
これをなんとか削除、あるいは、安保理や総会決議に優越出来ないというように使用条件を厳しくするかしない限り日本の手詰まり可能性が上がります。
すくなくとも現在の安保理さえ中止出来ないという特性は崩すべきです。
あるいは、手を先に回し、尖閣諸島問題には適用出来ないまたは、侵略や戦後秩序の変更行為をしっかりと定義しておくという縛りをかけておくべきです。
これは、日本の戦略を練り直す必要があります。
尖閣諸島問題をどうにかするには、この致命的搦手は潰すべきです。
中西輝政氏の今回の論文は、絶対に押さえておくべきです。
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Suica割さま (kuranishi masako)
2012-12-30 08:45:28
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 中国が、国連憲章の”敵国条項”を用いることは、困難なのではないかと思います。この条項は、そもそも、安保理決議による強制行動に関するものであり、仮に、尖閣諸島に対して中国が武力行使に及んだ場合でも、安保理での措置が決まるまでの間、自衛権の発動を認める第51条によって、集団的自衛権=日米同盟を発動することはできます。もっとも、この条項を使いたいがために、中国が、日本国側の”侵略”となるよう、画策する可能性はあると思いますので、対応策を練っておく必要はありそうです。
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