万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の”敵国条項”カードを封じる手段

2012年12月30日 15時43分15秒 | 国際政治
首相、日米軸に「価値観外交」…アジア連携重視(読売新聞) - goo ニュース
 尖閣諸島に対する軍事行動を正当化するために、中国は、安保理決議なくして軍事行動を採ることが許される、国連憲章の”敵国条項”を利用しようとしているのではないか、と京都大学名誉教授の中西輝政氏が指摘されておられるそうです。中国としては、何としても、自国の軍事行動を、国際法において正当化し、日米安保条約の発動を止めたいのでしょう。

 それでは、中国の”敵国条項”カードを封じる手は、あるのでしょうか。明記はされていないものの、”敵国”とは、第二次世界大戦における枢軸国諸国と解されているようです(もっとも、旧枢軸国が国連に加盟した時点で、両者が”敵国”となるので、死文化したとも解釈できる…)。

 第1の手段は、国連憲章の第6章の規定に基づいて、日本国政府が、平和的手段による解決を安保理に提起することです(ICJへの付託など…)。第6章上の決定に関しては、紛争当事国は安保理での評決権を棄権しなければなりませんので、常任理事国といえども、中国は、拒否権を発動できません。この決議の成立に成功すれば、中国による”敵国条項”を根拠とした軍事力行使の正当化を阻止することができます。

 第2の手段は、国連憲章51条による個別的、並びに、集団的自衛権を以って対抗することです。”敵国条項”で特に重要となるのは第53条ですが(第107条については、尖閣諸島は、第二次世界大戦とは関係がないのであまり意味がない…)、この条文は、あくまでも、相手が”敵国”であれば、安保理の許可なくして軍事行動が可能であることを定めたに過ぎず(より正確には、安保理の許可があれば、強制行動のために地域的取り決めや地域的機関を利用することができるが、敵国であれば、この許可は不要…)、軍事行動の対象となった国の自衛権(集団的自衛権も…)の発動を否定しているわけではありません。この場合には、安保理決議の成立は不可能に近く、自衛隊、あるいは、日米同盟軍は、実力を以って中国からの攻撃に反撃し、人民解放軍を尖閣諸島から排除することができるのです。

 日本国政府は、中国の国際法の悪用に十分注意を払い、対抗策を講じて起きませんと、いつの間にか、侵略の再現を目論む”敵国”に仕立て上げられてしまうかもしれません。国際社会とも連携し、中国の”敵国条項”カードは、予め、封じておくべきと思うのです。

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4 コメント

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Unknown (ねむ太)
2012-12-30 20:20:32
こんばんは。対中国牽制のためにも日米関係を強固なものにしておく必要があります。
大統領就任式直後の米国訪問の狙いはそこに或るのでしょう。
敵国条項を発動する情報を察知すれば渡航禁止勧告が出され日本企業は全て撤退するでしょう。
そうなれば大量の失業者が出て反日運動の矛先が共産党政府に向かうこととなり、中国は瓦解し内乱が勃発しかねません。中国は法律で企業が撤退できないようにして人質を取っているようですがマスコミは何故か報道しません。
国民周知の事実となれば中国に対する意識も変わってくる筈ですが。
国連に対しても敵国条項の撤廃を強く求めるべきでしょう。ドイツ・イタリアや親日国と連携して。
実質的に中国と韓国の経済を支えているのは我が国です。
米国もドルの信認に疑問符がつき始め、ユーロはガタガタでEU諸国の格差は広がるばかり、ウォンは韓国のデフォルトくらいしか国際的な影響はありません。
その中で、我が国の通貨だけが一番信認されています
我が国の経済力の強靭さは驚異的でもありますが、明治の開国以来積み重ねられた信用が担保しているのです。
怪しげなエコノミストや経済学者の言うとおりにしていたら敵国条項は効果的でしょうが、政権交代をし財務・金融大臣に麻生氏が就任したことで、経済は最大の武器と化しました。
故中川昭一氏とともに世界経済を救った日本人として知られていますので情報を掴んで対策を立てる時間は十分にあると思います。
特亜3国なる恩も情も知らず礼節にかける国とは距離を置きたいものです。
韓国で一番愚かなのは反日を売り物にする連中に媚をうる政府関係者です。
竹島への不法上陸を始め陛下に対する無礼な言動、韓国の愛国者とやらには喜ばれるパフォーマンスでしょうが、我が国で反日活動にも参加せず働き税金を収め真面目に生きている在日の人々が、どれだけ肩身の狭い思いをしていることか、政治はパフォーマンスではなく真面目に生きる者が報われるようにする事こそ大切でしょう。
真の日韓関係を築きたいのであれば真面目な在日が肩身の狭い思いをしないで済むよう配慮し礼節を忘れない事だと思います。
返信する
中国を国連安保理常任理事国から追放せよ! (愛知のシーサー)
2012-12-30 21:32:36
中国が敵国条項カードを切る懸念があるとのお話し、恐らく彼らの戦略にはあるでしょう。しかし、それは中国が国連常任理事国という立場があればこそのカードです。
中国を国連安保理常任理事国の立場から追い落とす事が出来たなら、このカードは使えないのです。

以下幸福実現党サイトより部分的転載
中国はチベットやウイグル、南モンゴルへの侵略の疑惑を抱えながら、南シナ海においても現在進行形で、ベトナムやフィリピンなど周辺諸国と摩擦を引き起こし、政府の弾圧により多数の国民が犠牲になっているシリアへの制裁決議も、常任理事国の拒否権を発動し、国連の存在意義さえ疑わされる状況に在ります。 制裁決議をみとめない理由は、自国の人権弾圧に波及することを警戒しているといわれています。 また、中国は、北朝鮮の核実験に対する非難決議にも及び腰ですし、採択された制裁においても、北朝鮮に対し大型特殊車両の 輸出を行うなどして決議違反を犯しています。 更に、中国は、ミャンマーの軍事政権やジンバブエのムガベ長期独裁政権を非難する決議などにも拒否権を発動しています。 このように、中国は、国連を機能不全に陥 れると同時に、中国の存在自体が世界の平和を脅かしていることが分かります。 従って、中国は、国際平和と安全の維持に責任を持っているとはいえないので、常任理事国としては不適格であることが明白です。 こうした状況に鑑み、幸福実現党は 9月29日に「『国連安保理常任理事国から中国を追放する提起』等を日本政府に求める声明」を発表しました。
中国は、国連憲章にあるように「国際連合加盟国は、国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を安全保障理事会に負わせる」という責任を果たせないのであれば、 常任理事国である資格はありません。

さて、尖閣事件の後に幸福実現党が発表した「『国連安保理常任理事国から中国を追放する提起』等を日本政府に求める声明」日本としては、実に有効な切り札だと思うのですがいかがでしょうか。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2012-12-30 21:44:47
コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 ねむ太さまのおっしゃるように、日本国を始め、旧枢軸国の諸国が連携し、国際社会に”敵国条項”の削除を求める運動を起こせば、中国は、おいそれとは、この条項を根拠に、尖閣諸島に対して軍事行動を起こすことはできなくなると思います。先手先手を打って、未然に防止策を講じてゆきませんと、中国ペースに嵌ってしまいそうです。
 在日韓国・朝鮮人の方でも、真面目に働いておられるかたもいらっしゃるのでしょうが、やはり、在日特権、民団・総連による強圧的な反日活動、犯罪率の高さ、通名の使用、乗っ取り志向、侮日的な態度、日本人排斥・・・を考えますと、日本人の多くが、不公平感や警戒心を持つのも当然のことです。むしろ、肩身が狭いと感じている在日の方々こそ、同朋に対して、日本の尊重、遵法精神の訓育、暴力との決別・・・を訴えるべきです。私は、在日韓国・朝鮮の人々に対しては、甘やかさず、犯罪者の即本国送還や再入国禁止を可能とするなど、厳しく接した方が良いと思うのです。今では、在日・朝鮮人の人々の方が、仲間内で協力して日本人を差別し、パージしようとしており、肩身の狭い思いをしているのは、一般の日本人の方なのではないでしょうか。多くの国民が自民党に投票したのも、日本国を民主党のバックとなった在日の人々から取り戻し、一般の日本人が普通に生活できる日本に戻していただくことを期待したからなのではないかと思うのです。
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愛知のシーサーさま (kuranishi masako)
2012-12-30 22:01:05
 コメントをお寄せくださいまして、ありがとうございました。
 中国の国連における立場は、1971年のアルバニア決議の国連総会における決議で成立したのですが、法的な疑いもあるそうです。何れにしましても、前例として総会での決議によって常任理事国の地位を与えることができるならば、反対に、同じ方法によって、地位を剥奪することもできるはずです。中国は、現に、チベットや東トルキスタンを侵略しているのですから、地位剥奪や追放の提案がなされてもおかしくはありません。この点、「『国連安保理常任理事国から中国を追放する提起』を日本政府に求めることは、尖閣諸島に対する中国の強硬姿勢に対して牽制する意味においても、有効なのではないかと思います。
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