万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アムステルダム拠点閉鎖でゴーン容疑者有罪は凡そ確定では?

2019年03月10日 12時58分04秒 | 国際政治
日産連合、ゴーン被告の影響力喪失 発信力に警戒
 先日、凡そ3か月半の長きにわたる拘留の末に、10億円もの巨額の保釈金を積んでようやく保釈されたカルロス・ゴーン容疑者。‘無罪請負人’とも称される弘中惇一郎弁護士をも弁護団の一員に加え、今頃、自宅で無罪を勝ち取るべく闘志に燃えているかもしれません。しかしながら、ゴーン容疑者の‘有罪’は、ほぼ固まっているように思えます。

 その理由は、仏ルノー、日産、三菱自動車の三社連合を統括するために設立されたアムステルダムの二つの子会社が、新たな提携戦略協議の発足を機に閉鎖されるからです。そもそも、日仏連合にも拘わらず、本社が所在するパリでも横浜でもなく、オランダのアムステルダムにアライアンスの拠点が置かれていたこと自体が奇妙なお話です。しかも、二つの統括会社の内の一つは「日産三菱BV」であり、日本企業同士なのですから日本国内に設置する、あるいは、「ルノー日産BV」に吸収して「ルノー日産三菱BV」として纏めた方が合理的でもあります。報道に拠りますと、これらの統括会社の役員報酬はゴーン容疑者が独占しており、他の役員は無報酬であったそうです。

こうした疑問に対しては、オランダの税制が高額所得者であるゴーン容疑者にとりまして有利であったとも説明されています。表向きはゴーン容疑者の個人的な‘節税’が目的とされているのですが、アムステルダムという国際都市の性格からしますと、同地に拠点を有する国際組織が、そのメンバーであるゴーン容疑者を操って三社連合から‘資金を吸い上げるため’に設立された疑いも捨て切れません(日経新聞の温和な表現を借りれば‘ゴーン元会長に報酬を支払うための組織’…)。

 ゴーン事件の発覚当初、ルノーもフランス政府もゴーン容疑者擁護一辺倒でした。事件の真相解明に協力するどころか、被害者であるはずの日産や日本国の検察・司法制度が、メディアも総動員されて激しくバッシングされたのです。同問題が議題となった日仏間の閣僚級の協議の場でも、フランス側は‘推定無罪’を盾に日本側に対してゴーン容疑者に対する善処を求めたとも伝わります。しかしながら、ヴェルサイユ宮殿をめぐるルノーからの私的資金流用等の疑惑がフランスでも明るみになるにつれ、同容疑者に対する擁護論はトーンダウンしてゆきます。

仮に‘推定無罪’を貫くならば、アムステルダムの二つの統括会社は、特段に問題視されることなく存続したことでしょう。早々に閉鎖を決断したのは、日産のみならず、ルノーも詳細な内部調査を実施し、これら二つの統括会社がゴーン容疑者の犯罪の温床となっていた事実を示す動かぬ証拠を掴んだからではないかと推測されるのです。ゴーン容疑者は、自ら辞任を申し出る形で仏ルノーの会長兼CEOを辞任しましたが、退職に伴う高額報酬を支払われないことに対しても、然したる反対もなかったようです。ルノー側の態度の変化は、自社もまた、日産と並んでゴーン事件の‘被害者’の立場にあるとする認識が生まれたからなのかもしれません。

ゴーン事件がカルロス・ゴーン容疑者による個人犯罪ではなく国際的な組織犯罪であるとしますと、日本国の検察は、相当に手強い相手と法廷を舞台に戦うこととなります。同組織の戦法は、‘無罪を証明できなくとも有罪にならない’、即ち、証拠不十分による無罪を目指すというものかもしれません。ほぼ有罪が確定しているゴーン容疑者を何としても無罪にすべく、海外からの‘救援軍’を繰り出してくる可能性もあります。ゴーン事件は、個人的な事件に矮小化することなく(事件を矮小化すると今般の事件の弁護団も担当したオウム事件の如く国際性が隠されてしまう…)、国際的組織犯罪と見立て、国境を越えた資金の流れも追えば、事件の全貌がより明確に見えてきますし、世界の裏側で暗躍する真の悪の存在も自ずと浮かび上がってくるのではないかと思うのです。

よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 米韓軍事演習縮小は‘韓国抜き... | トップ | ‘トルーマン発言’を考える-... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ガイアの夜明け (Unknown)
2019-03-27 14:44:13
2019年3月26日火曜日
ルノーの会長・スナール氏66歳のインタビューを放送
3社連合のトップに立った男の父は外交官ジャック・スナール
1974年、赴任先のオランダ・ハーグのフランス大使館を日本赤軍が占拠
父は人質に
スナール氏は不思議な縁を感じてる(根に持っているとか、不信感があるとかではなく)ようです
日本赤軍は世界中でテロを起こし日本にドロを塗った
当時は100%日本人と思われたメンバー
ヨド号ハイジャック事件で北朝鮮に渡ったメンバーの姿をたまにマスコミが取り上げる
あ~そうゆう事だったのか

アメリカ・ブルームバーグがゴーン元会長が子供4人の学費を日産に負担させていた
4人とも名門スタンフォード大学に通い総額6650万円に上る可能性がある
子供の大学の費用を会社が負担するのは極めて異例と専門家の話として伝えた
福利厚生費に含まれていたそうです
日本の若者には親に頼らず自助努力で・・・と説き続けたマスコミ
良い大学はやはり親の経済・力が大きく左右する
いい配偶者・パートナーとの出会いも
マーク・ザッカーバーグ氏も妻の中国女性と大学で出会ってる

返信する
Unknownさま (kuranishi masako)
2019-03-27 20:34:54
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 日本国内では、グローバリストとは、ネポティズムとは無縁な最もフェアで合理的な人々とするイメージがあるのですが、カルロス・ゴーン容疑者は、この幻想を見事なまでに打ち砕いたのではないかと思います。おそらく、ゴーン容疑者の一件は氷山の一角に過ぎず、グローバリズムと共に前近代的な文化や流儀が先進国の文明を蝕んでいるのかもしれません。グローバリズムの時代であるからこそ、文明と野蛮の問題を真剣に考えて見る必要があるのではないかと思うのです。
返信する

国際政治」カテゴリの最新記事