万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

王室皇室の情報公開と陰謀説

2024年03月27日 12時57分11秒 | 国際政治
 英国皇太子妃の公表動画にあって陰謀説が渦巻くこととなったのは、フェイク動画を容易に作成し得る画像処理技術の向上のみではありません。王室や皇室については秘密主義で知られており、あまりにも隠し事が多すぎるのです。様々な情報が行き交う情報化時代にあっては、秘密主義は、諸刃の剣どころか、百害あって一利なしともなりかねないリスクがあります。

 先ずもって、秘密主義そのものが陰謀であるからです。陰謀とは、他者に知られることなく、密かに自らの目的を達成しようとする行為です。言い換えますと、情報を他者に隠しながら物事を進めてゆく手法こそ、陰謀と言うことになります。陰謀の特徴の一つが秘密主義なのですから、王室や皇室が秘密主義をもって自らの情報を隠しますと、自国民をはじめ他の人々から、‘どこか怪しい’と疑われ、信頼喪失に繋がることは仕方がないことなのです。逆から見ますと、秘密主義を貫こうとすれば、隠蔽を指摘されたり、陰謀説が流布されることは覚悟しなければならず、疑惑や勝手な憶測を払拭したいならば、全ての情報を公開しなければならないと言うことになりましょう。

 もっとも、この秘密主義と陰謀との関係については、国家の防衛や安全保障を理由として是認すべきである、とする主張もありましょう。確かに、外国や外国勢力から軍事力による攻撃や工作員による謀略を仕掛けられるケースを考慮すれば、この反論にも一理はあります。国家機密というものは、何れの国にも存在します。しかしながら、秘密主義は、たとえ安全保障上の分野であれ、必ずしも国家や国民を護るとは限らないことも、確かなことです。国家機密という‘隠れ蓑’を、陰謀を企む者達に与えかねないからです。そして、国家機密という隠れ蓑を利用する者達こそが、安全保障や国家の独立性を脅かす外国勢力との内通者あるいはそのメンバーであるかもしれないのです。

 例えば、今般の皇太子妃動画問題も、YAHOOニュースにおける不自然なコメント投稿は、一見、動画を配信した皇室、あるいは、皇太子妃を庇うために投稿されているように見えます。同投稿は、人々の同情心に訴え、陰謀説を唱える人々を暗に糾弾することで、議論を封じようとしたのですから。しかしながら、仮に、今般の病気の原因が、ワクチンのみならず、何らかの勢力による謀略にあったとすればどうでしょうか。暗殺の手段として人為的にがんを引き起こす装置は、既に開発されているとされます(幾つもの発がん物質が確認されていますので、技術的には可能なはず・・・)。

 イギリスでは、皇太子妃に先だって、国王もがんの罹患を公表しております。相次ぐがんの発病は単なる偶然なのでしょうか。国民の多くが、不審を抱いても不思議はない状況にあります。仮に、投稿者が主張するように、陰謀や謀略の可能性を指摘してはならないとしますと、実際に陰謀が存在していた場合には、陰謀を企む側の‘思う壺’となりましょう。この場合、投稿者の目的は、別のところにある可能性も否定できなくなります(あるいは、何れであっても、陰謀説だけは封じたい?)。

 さらにより穿った見方をすれば、王室側が敢えて陰謀の存在を国民に暗に知らせるために、誰もがフェイクであることに気がつく動画を配信したのかもしれません。この場合、‘お察しください’というメッセージ、暗殺やすり替えの危機を前にして、国民に助けを求めていることにもなりましょう。もしくは、何らかの目的のもとに、罹患自体がフェークであることを知らせているのかもしれません。

 何れにしましても、様々な可能性がありますので、王室や皇室の秘密主義は、国民にとりましては、重大なリスク要因です。情報が無ければ、国民は、正しい判断も評価もできないからです。それでは、全ての情報を包み隠さずに全面的に公開するとなりますと(特に世襲であるからこそDNA情報は重要・・・)、王族や皇族にはプライバシーが全くなくなることになります。血統問題、日常生活、発言内容の全面的な公開によって、一般の国民と然して変わらないともなれば、権威としての求心力は失われ、統合の役割をも果たせなくなりましょう。そこで、権威を維持しようとすれば、神聖性やカリスマ性を演出せねばならず、やはり情報統制や劇場化が必要とされてしまいます。つまり、ここに二律背反が生じるのであり、現代という時代にあって、王室や皇室の存続をなおさらに難しいものとしているのではないかと思うのです。

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