万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカの独立性とディープ・ステート論-内部化した東インド会社?

2024年03月05日 11時47分30秒 | アメリカ
 政治家であるトランプ前大統領が‘ディープ・ステート’という言葉を使うようになって以来、ライバル政党である民主党を中心に、その実在を‘陰謀論’として否定する動きも強まるようになりました。しかしながら、次期大統領選挙戦において同前大統への支持がバイデン現大統領を引き離しているように、アメリカ国民の多くはディープ・ステート論に対して一定の理解を示しています。

 アメリカにおける陰謀実在論が受け入れられる歴史的な拝啓としては、イギリスからの独立戦争があります。世界史の教科書には、1775年4月19日に始まり、1783年9月3日のパリ条約の成立によって終結したアメリカ独立戦争によって、アメリカはイギリスから正式に独立したと記述されています。その一方で、独立を果たしたとはいえ、裏ではイギリスが手綱をしっかりと握り、水面下でアメリカをコントロールしているのではないか、とする疑いがアメリカ国民の間で燻り続けてきたからです。これは、アメリカ国民の被害妄想であるとする指摘がある一方で、アメリカが外部から操られているとする説は、強ち否定できないようにも思えます。

 アメリカ独立の実態を考える上でのヒントとなるのでは、アメリカ合衆国の国旗です。赤い横縞が下地となり、その左上のカントン(canton)と呼ばれる部分に青地に白い星が配されているかの星条旗です。白い星の数は州の数が増えるに従い増えてゆきましたが、赤い横柄のストライプには変化はありません。それでは、何故、この星条旗がヒントとなるのかと申しますと、アメリカの星条旗には、前身と推定されるデザインの旗が存在しているからです。その旗とは、英東インド会社の社旗なのです。

 それでは、イギリス東インド会社の社旗はどのようなデザインなのでしょうか。同社は、1600年に英国王の勅許をもって設立された民間の貿易独占会社です。基本となるのが、赤い横縞です(ただし、ストライプの数は変化している・・・)。その一方で、左上のカントン部分は、イギリスの歴史に沿って変化を見せています。最初に登場する旗には、イングランドの国旗、即ち、白地に赤い十字の聖ゲオルギウスの十字架が描かれています(セント・ジョージズ・クロス)。その後、スコットランドとの合邦によりイギリスの国旗が凡そ今日のユニオンジャックに代わると、英東インド会社の社旗も左上の部分も同デザインとなるのです。そして、独立戦争の後にアメリカ合衆国の国旗として登場してくるのが、ユニオンジャックを今日の星柄に代えたものなのです。

 この奇妙な出来事については、ベンジャミン・フランクリンなどのアメリカ建国の父達が、アメリカ合衆国の国旗として英東インド会社の社旗を採用するようにと訴えていたとされます。また、当時にあって、英東インド会社も英国王の課税政策に反対しており、両者は共闘関係にあったからとする説明もあります。詳細は不明なものの、現在の星条旗が東インド会社の社旗を一部変更したものであることは一目瞭然であり、このことは、国家としてのイギリスからは独立したとしても、独立後のアメリカが、なおも英東インド会社のコントロール下にあった可能性を強く示唆しているのです(統治機構にあって内部に浸透・・・)。

 ここに、アメリカの独立性に関する疑いが生じてくるのですが、グローバリストの先駆けであった東インド会社を温存させる形で、アメリカがその国家としての歴史を歩み始めたことが、その後のアメリカ、並びに、人類史に多大なる影響を与えてきたように思えます。アメリカ合衆国という国が、人々に夢と希望を与える自由で民主的な国としてアピールされながら、その実態において理想と現実とがかけ離れ、マネー・パワーが民主主義をねじ曲げてしまう理由も自ずと理解されてくるのです。そして、ソ連邦のKGと同様にCIAの活動も国民には秘され、それが極めて謀略的であることも、アメリカ国民の多くがディープ・ステートの実在を信じる要因となっているのではないかと思うのです。

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