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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

難民危機-メルケル首相は独裁者?

2015年10月09日 09時55分43秒 | ヨーロッパ
難民危機で結束訴え=欧州議会で26年ぶり共同演説―独仏首脳
 ヨーロッパを襲う難民危機は、今に始まったわけではないとはいえ、メルケル首相の一言が事態を一層複雑にした面も否定はできません。初めこそは、メルケル首相を人道的な救世主とする称賛の声に満ちていましたが、今では受け入れに伴う様々な問題が噴出し、ドイツでは対策に苦慮しているようです。

 この一件について疑問に感じる点は、ドイツが、かくも簡単に首相の”鶴の一声”によって、国境管理という重要な政策分野において”なし崩し現象”が起きたことです。戦前にあってヒトラーを総統とする独裁体制が出現し、国家を破滅に導いた反省から、戦後のドイツ連邦共和国基本法では、敢えて分権的な体制を選択しています。連邦政府の大統領職は儀礼的ですし、首相の権限も、他の諸国と比較しますと抑制的です。ですから、首相の一存、しかも、立法措置なくして、即、首相の指示通りに入国管理当局が動いたことに、戦後のドイツらしかなぬ独裁的な側面―人治―が見受けられるのです。しかも、今日、EUでは移動自由なシェンゲン圏が成立していますので、ドイツ首相の決断は全ての加盟国に波及し、一国だけの問題ではなくなります。

 仮に、日本国において、安倍首相がメルケル首相と同様の”歓迎発言”をしたとしても、入国管理及び難民認定法を曲げてまで、無制限に難民・移民の受け入れが実施されるとは思えません。フォルクスワーゲン社の不正ソフト搭載事件もまた、ドイツらしからぬ事件でしたが、果たして、難民危機の一件は、ドイツの変質を示す兆候なのでしょうか。

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コメント (2)
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