goo blog サービス終了のお知らせ 

万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

英国の尖閣棚上げ公文書記録-領土問題を認めたわけではない

2015年01月04日 15時26分01秒 | アジア
日英首脳会談で尖閣「棚上げ」…英に公文書記録(読売新聞) - goo ニュース
 お正月の三が日も過ぎ、本日より、ブログ記事掲載を始めたいと思います。本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今年最初の記事は、昨年末より報道されるようになった尖閣諸島に関するイギリスの公文書記録をテーマとすることといたします。機密解除された公文書によりますと、1982年に鈴木善幸首相がサッチャー首相と会談した際に、「中国との間で現状を維持することで合意し、問題は実質的に棚上げされたとサッチャー首相に伝えた」そうです。1982年と言えば、まさしくフォークランド紛争が闘われた年であり、この文脈から両首脳の会話に上ったものと憶測されます。日本側からこの件を持ち出したとは考え難く、おそらく、サッチャー首相が中国が領有権を主張している尖閣諸島に対して関心を抱き、鈴木首相に現状を尋ねたのでしょう。そこで、鈴木首相は、このように応えたらしいのですが、引用符が付いていないため、鈴木首相の発言そのものの表現は分からず、首相が、何を以って”棚上げ”と認識したのかは不明です。田中・周会談、あるいは、小平氏の発言を想起して、”日本国からこの問題で動くことはなく、中国も軍事行動をとることはない”とする説明であった可能があります。少なくとも、日本国政府の外交文書には棚上げ合意は存在せず、この発言は、鈴木首相の個人的な認識であったのかもしれません。また、たとえ棚上げに言及していたとしても、それは、中国に対して尖閣諸島の領有権の正当性を認めたことと同義でもありません。棚上げ=領土問題ではないのです。

 実のところ、中国が自らの不当な尖閣諸島に対する領有権主張を諦めるまでは、この問題は、完全には解決しません。たとえ日本国が実効支配を維持しても、常に軍事的な脅威に晒されるからです。また逆に、中国が、仮に尖閣諸島を侵略して占領したとしても、日本国政府は、侵略行為を非難し、領土返還を求めることでしょう。フォークランド紛争でさえ、戦勝国となったイギリスは領有権を確定させることができず、未だに未解決の領土問題とされています。双方が相手国の法的根拠を認め合っているフォークランド紛争の場合には、領土交渉による合意によって解決する道がありますが、尖閣諸島の如く、一方の国が相手国の法的根拠を認めていない場合、国際法上において明確、かつ、最終的に領有権を確立する方法は(他国からの領土要求を確実に排除する方法…)、ICJにおける司法解決をおいて他にないのではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする