万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

変動相場制の役割を無視する中国

2010年03月22日 15時49分49秒 | 国際経済
人民元めぐり“米中通貨戦争”懸念 「制裁」「報復」なら世界経済に波及…(産経新聞) - goo ニュース
 中国の元安政策が貿易の不均衡をもたらすとして、アメリカ政府は、中国政府に対して元高容認を求めています。この問題、”米中通貨戦争”としても取り上げられていますが、国際通貨システムの観点から見ますと、国際貿易における変動相場制の役割を中国政府が無視していることも原因していると思うのです。

 変動相場制には、貿易の不均衡を自律的に調整するという機能があることは、よく知られています。古くはヒュームが唱えたことに始まりますが、およそ、以下のようなメカニズムとして描くことができます。ある一国の輸出が増大した場合、それに比例して貿易決済に伴う通貨取引も増加しますので、自然に輸出国の通貨の相場は上昇します。加えて、輸出国の経済が発展すれば、海外からの投資も増加するわけですから、これもまた、通貨相場が上昇する要因となります。ある国が、経済成長を遂げれば通貨価値も上昇するのが自然なのです。その一方で、為替相場の上昇は、グローバル市場における価格競争における優位性を失うことを意味しますので、輸出量は減少します。こうして、一国だけが一方的に輸出を増加させることはできなくなり、為替相場の変動を通して、貿易の不均衡は自律的に調整されるのです。

 ところが、中国のように、頑として変動相場制を拒否し、事実上の固定相場制を維持するとなりますと、この自律的な調整メカニズムは働かなくなります。現在においては、為替市場の相場が投機的な行為により人為的に変動することもありますが、基本的には、元相場が上昇しない限り、貿易不均衡は改善されないのです。しかも、この問題は、通貨のみならず雇用問題も伴いますので、事態はさらに深刻です。中国政府は、貿易相手国の懸念を理解し、自国の通貨政策が国際通貨制度そのものに脅威を与えている現実を直視すべきと思うのです。

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コメント (7)
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