万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ギリシャ救済策―IMF関与の心配ごと

2010年03月26日 15時27分11秒 | 国際政治
ギリシャ問題にIMF関与 EU、自力支援を断念(朝日新聞) - goo ニュース
 ユーロの通貨価値の維持を考えれば、ギリシャの経済危機に対してEUが、何らかの取り組みを行うことはよく理解できます。しかしながら、IMFも支援に関与するとなりますと、別の方面からの心配事が発生するようにも思うのです。

 それは、加盟国の財政危機をIMFが救うという形態が一般化すれば、放漫財政の国が増えるのではないか、という心配事です。ドイツが、これまでギリシャ支援を渋ってきた理由も、安易な救済がモラル・ハザードを起こし、長期的にはユーロの信頼性を揺さぶるのではないか、とする懸念があったからとされています。同様のことは、IMFレベルでも言えることであり、ギリシャ救済の前例が、財政悪化に対する各国政府の危機感を低めてしまうかもしれないのです。

 IMFは、これまで外貨準備不足に陥った諸国に救いの手を差し伸べてきましたが、今回は、財政危機を抱えた国への融資となります。もっとも、ユーロ救済が主要な目的となりますと、IMFの出番とも言えますので、IMFの基本的な役割から逸脱するわけでもないかもしれません。しかしながら、起こり得るモラル・ハザードを事前に予防すべく、財政規律に関する国際的な合意の形成を進めるべきではないかと思うのです。


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