万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国債発行は民間の金融機能を低下させる?

2009年04月26日 13時38分37秒 | 国際経済
【底流 ニュースの裏側】与謝野財務相が再始動 大盤振る舞いの後は大増税(産経新聞) - goo ニュース
 現在、国際協調の名のもとで、各国とも財政出動が求められており、日本国でも、赤字国債の発行額を増やしてでも、15兆円の追加経済対策が行われる予定です。市中で消化しなけばならない国債の額は10兆円規模に上るとされていますが、この政策は、金融機関を助けることになるのでしょうか。

 不思議なことに、ケインジアンは預金を目の敵にしているようで、民間の余剰資金は無駄と考えているようです。このため、国債発行は、民間で眠っている資金を政府が有効な公共投資に振り向ける手段として奨励しているのでしょう。しかしながら、考えてもみますと、国民から預金が集まらなくなれば、金融機関の貸出能力が低下することは目に見えています。そうして、国民が金融機関に預けた資金を、金融機関が国債に投資すれば、これと同じ現象が発生します。つまり、貸出資金としてのハイパワード・マネーは減少し、金融機関の事業は縮小せざるを得なくなるかもしれないのです。この結果、貸し渋りが再燃し、企業は、資金調達が難しくなるかもしれません。不況期での金融機能の低下は、景気の足を引っ張りそうです。

 景気対策として政府支出を増やしても、金融機能が弱体化し、市場のメカニズムが蝕まれては元も子も無くなります。不況の元凶である金融危機は、野放図な金融機関のマネー・ゲームが招いたものではありますが、政府が大量の資金を集めることもまた、金融機関にとっても、企業にとっても、望ましいことではないように思えるのです。

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コメント (4)
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