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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

内閣法制局の存在意義を否定する政府

2008年12月25日 15時40分34秒 | 日本政治
政府「政教分離」答弁を撤回、公明の質問主意書に答えて(読売新聞) - goo ニュース
 もし、特定の宗教団体が国会に議員を多数送り込み、国家権力を用いて布教活動を行うとしたらどうなるのか?誰もが、この行為は、政教分離の原則を定めた憲法に違反すると考えるはずです。内閣法制局も、当然に、憲法違反と答えたのですが驚くべきことに、公明党の圧力によって、この答弁が撤回されてしまったというのです。

 撤回の根拠として、公明党は、「事実関係を仮定しての質問に、法令を当てはめて答弁したことは不適当だ」と述べたと言います。しかしながら、この理由は、撤回を正当化する根拠とはなりません。何故ならば、内閣法制局の役割とは、政府や国会が提出する法律案や行為が、憲法や法律に反していないかを事前にチェックすることにあるからです。つまり、内閣法制局は、常に、仮定の段階で、憲法や法律に照らして判断を行っているのであり、実際に具体的な事件が起きてからでなければ、判断できないとなりますと、内閣法制局の事前チェックの意味はなくなるのです。公明党の理屈が通るなら、集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の解釈も、戦争が実際に発生してからでなければ、行うことができないことになりましょう。

 本来、内閣法制局とは、政府の内部にありながら、独立的な立場から法を解釈することによって、権力の暴走を防ぐ役割を果たしております。仮定に基づく内閣法制局への質問を禁じ、また、政府が、その答弁を自由に撤回する権限を持ちますと、内閣法制局の存在意義は失われてしまうのではないでしょうか。 

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コメント (4)
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