地方自治のひとつの限界を示す重要判決が出されました。
財源をいかに獲得して行くかが、地方自治の課題。
その点では、地方自治に大きな課題を投げかけた判決でした。
*****読売新聞(2013/03/21)*****
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130321-OYT1T00671.htm
臨時特例企業税は「違法」…神奈川県の敗訴確定
神奈川県が条例で独自に設けた臨時特例企業税が地方税法に違反するかどうかが争われた訴訟で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は21日、「企業税は違法、無効」とし、原告のいすゞ自動車が納税した19億円余の全額返還を命じる判決を言い渡した。
2審で勝訴したものの、逆転敗訴が確定した県は同日、原告を含む1696社に利息分も含め総額約635億円を返還すると表明した。
地方自治体が独自に設けた「法定外税」を最高裁が違法と判断したのは初めて。自治体による独自課税の違法性が争われたケースでは、東京都が2000年度に導入した「銀行税」を巡る訴訟があるが、1、2審で都側が敗訴し、03年に上告審で和解が成立している。
(2013年3月21日20時26分 読売新聞)
*****読売新聞(2013/03/22)*****
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/news/20130321-OYT8T01608.htm
「臨特税違法」県財政に痛手
2001年に導入された県の臨時特例企業税(臨特税)が「違法」とされた21日の最高裁判決。県は、徴税額に還付加算金を加えた635億円の支出を迫られることになり、財政に大きな痛手となった。巨額の県民負担が生じることや、課税自主権の行使のあり方などを巡っては、今後、県議会などで議論を呼びそうだ。(黒見周平、加藤高明)
◇県庁に衝撃
「とてもとても容認できることじゃない。しかし、最高裁の判決だからしょうがない」
黒岩知事は県庁で涙を浮かべながら判決への怒りをぶちまけた。中村正樹財政部長は「色んな配慮を重ね、地方分権の流れの中で県の提案が(独自税の)第1号で認められた。こんな判決が出るとは」と残念がった。
敗訴の確定を受け、県はいすゞ自動車を含む企業1696社に対し、総額約635億円を還付する手続きに入る。
臨特税が導入されたのは01~08年度で、地方税法上は還付請求の時効(5年)に大半がかかっている。
しかし、県は判決で、課税が「地方税法と矛盾抵触し、違法、無効」と判断されたことを重視。民法上、不当利得に対する返還請求権の時効が10年であることを踏まえ、民法上の時効がかかる約1億円を除き、加算金を加え、還付する判断をした。
県は、13年度予算案の編成では200億円の財源不足が生じ、県有施設の売却や補助金の削減を進めるなど、台所事情は元々厳しい。
県は今回の敗訴も想定し、財源を事前に確保していたが、緊急支出に備える財政調整基金を取り崩したことで、14年度以降の予算編成での財源探しは更に難航しそうだ。
◇経済界は歓迎
還付に時間をかければ、利子で還付額が膨らむため、県は財源を盛り込んだ補正予算案について、25日のスピード成立を目指している。還付対象の企業には22日以降、一斉に電話をかけたり、文書を送ったりして、早期の請求を促す方針だ。
臨特税は県内に事業所を置き、資本金5億円以上の企業が対象になったため、全国各地に活動拠点を持つ企業側に特に不満が強かった。
県商工会議所連合会の佐々木謙二会頭は「(県経済界は)臨特税導入に慎重な対応を求めてきた経緯があり、判決は要望に沿うものだ。県には、課税対象とされた企業が一つの県や国を超えて活動を展開していることを理解してもらいたい」とのコメントを出した。
◇意見分かれる
今回の裁判では、31都道府県が「臨特税が違法と判断されれば、自治体の課税自主権が著しく狭められる」などとする意見書を提出している。
専修大の原田博夫教授(地方財政論)は「課税自主権の観点から考えれば、違法と切り捨てることには疑問も残る」と指摘。「各自治体は今後、課税自主権の行使に慎重にならざるを得ないだろう」との見方を示した。
札幌学院大の金山剛教授(租税法)は「臨特税は自治体の課税自主権を認めた地方税法の観点で合法だとする見方がある一方、法律と条例の関係から趣旨や目的などに矛盾があれば、違法だとする見方があり、学識者でも意見が分かれている」と述べた。
県が民法の規定を基に過去10年分を還付することについては、「過去に最高裁で違法課税と認定された国税のケースでも、還付期間を10年としており、妥当だ」と評価した。
(2013年3月22日 読売新聞)
財源をいかに獲得して行くかが、地方自治の課題。
その点では、地方自治に大きな課題を投げかけた判決でした。
*****読売新聞(2013/03/21)*****
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130321-OYT1T00671.htm
臨時特例企業税は「違法」…神奈川県の敗訴確定
神奈川県が条例で独自に設けた臨時特例企業税が地方税法に違反するかどうかが争われた訴訟で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は21日、「企業税は違法、無効」とし、原告のいすゞ自動車が納税した19億円余の全額返還を命じる判決を言い渡した。
2審で勝訴したものの、逆転敗訴が確定した県は同日、原告を含む1696社に利息分も含め総額約635億円を返還すると表明した。
地方自治体が独自に設けた「法定外税」を最高裁が違法と判断したのは初めて。自治体による独自課税の違法性が争われたケースでは、東京都が2000年度に導入した「銀行税」を巡る訴訟があるが、1、2審で都側が敗訴し、03年に上告審で和解が成立している。
(2013年3月21日20時26分 読売新聞)
*****読売新聞(2013/03/22)*****
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/news/20130321-OYT8T01608.htm
「臨特税違法」県財政に痛手
2001年に導入された県の臨時特例企業税(臨特税)が「違法」とされた21日の最高裁判決。県は、徴税額に還付加算金を加えた635億円の支出を迫られることになり、財政に大きな痛手となった。巨額の県民負担が生じることや、課税自主権の行使のあり方などを巡っては、今後、県議会などで議論を呼びそうだ。(黒見周平、加藤高明)
◇県庁に衝撃
「とてもとても容認できることじゃない。しかし、最高裁の判決だからしょうがない」
黒岩知事は県庁で涙を浮かべながら判決への怒りをぶちまけた。中村正樹財政部長は「色んな配慮を重ね、地方分権の流れの中で県の提案が(独自税の)第1号で認められた。こんな判決が出るとは」と残念がった。
敗訴の確定を受け、県はいすゞ自動車を含む企業1696社に対し、総額約635億円を還付する手続きに入る。
臨特税が導入されたのは01~08年度で、地方税法上は還付請求の時効(5年)に大半がかかっている。
しかし、県は判決で、課税が「地方税法と矛盾抵触し、違法、無効」と判断されたことを重視。民法上、不当利得に対する返還請求権の時効が10年であることを踏まえ、民法上の時効がかかる約1億円を除き、加算金を加え、還付する判断をした。
県は、13年度予算案の編成では200億円の財源不足が生じ、県有施設の売却や補助金の削減を進めるなど、台所事情は元々厳しい。
県は今回の敗訴も想定し、財源を事前に確保していたが、緊急支出に備える財政調整基金を取り崩したことで、14年度以降の予算編成での財源探しは更に難航しそうだ。
◇経済界は歓迎
還付に時間をかければ、利子で還付額が膨らむため、県は財源を盛り込んだ補正予算案について、25日のスピード成立を目指している。還付対象の企業には22日以降、一斉に電話をかけたり、文書を送ったりして、早期の請求を促す方針だ。
臨特税は県内に事業所を置き、資本金5億円以上の企業が対象になったため、全国各地に活動拠点を持つ企業側に特に不満が強かった。
県商工会議所連合会の佐々木謙二会頭は「(県経済界は)臨特税導入に慎重な対応を求めてきた経緯があり、判決は要望に沿うものだ。県には、課税対象とされた企業が一つの県や国を超えて活動を展開していることを理解してもらいたい」とのコメントを出した。
◇意見分かれる
今回の裁判では、31都道府県が「臨特税が違法と判断されれば、自治体の課税自主権が著しく狭められる」などとする意見書を提出している。
専修大の原田博夫教授(地方財政論)は「課税自主権の観点から考えれば、違法と切り捨てることには疑問も残る」と指摘。「各自治体は今後、課税自主権の行使に慎重にならざるを得ないだろう」との見方を示した。
札幌学院大の金山剛教授(租税法)は「臨特税は自治体の課税自主権を認めた地方税法の観点で合法だとする見方がある一方、法律と条例の関係から趣旨や目的などに矛盾があれば、違法だとする見方があり、学識者でも意見が分かれている」と述べた。
県が民法の規定を基に過去10年分を還付することについては、「過去に最高裁で違法課税と認定された国税のケースでも、還付期間を10年としており、妥当だ」と評価した。
(2013年3月22日 読売新聞)