「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

麻疹と共に風疹もまた、撲滅に向け努力!成人に流行中。予防接種お済ですか?胎児を守る。

2013-03-21 23:00:00 | 小児医療
 葛飾区医師会には、いつもいつも感謝いたしております。

 今、大流行中の風疹の理解を深めるために、風疹の臨床研究分野の第一人者の三名をお招きしての講演会が、3月21日葛飾区医師会主催で開催されました。
 ものすごく、良いタイミングでの開催です。


 私も、他の日程もある中、こちらを優先し、参加。
 たいへん勉強させていただきました。

 企画の仕掛け人は、葛飾区の“闘う小児科医”松永貞一先生。懇親会も含め有意義で楽しい時間でした。

 麻疹と共に風疹もまた、撲滅に向け、努力していきたいと思います。


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第56回 感染・免疫懇話会 講演会

風疹が関東地方で流行っていると報道されています。2012年の患者数は2353人と、過去5年間で最も多くなっています。しかも、都道府県別で風疹患者数を見ると、東京都が飛び抜けて高いと報告されています。患者の内訳を見ると、8割近くが男性で、そのうち、およそ9割が20代から40代です。これは、30代から40代の男性は、子どものころに、風疹ワクチンを受ける機会が1度もなかったためだと考えられます。また、20代と30代前半の男性は、1回受けるチャンスがあったのですが、受けてなかった方が多くいたと考えられます。かつて抗体があった方でも抗体値が下がっていることもあるかもしれません。当院では風疹大流行を受けて10人余の全職員の風疹抗体価を測定したところ2人がHI8倍未満の陰性。1名が16倍であったため、急遽、この3名に風疹ワクチンを追加接種しました。御存知のとおり、風疹は小児の場合通常あまり重くない病気ですが、妊婦、特に妊娠3ヶ月までの妊娠初期の女性が風疹にかかると、胎児が風疹ウイルスに感染し、難聴、心疾患、白内障、精神運動発達遅滞などをもった、いわゆる先天性風疹症候群(CRS)の児が8割という高率に出生する可能性があります。2012年10月以降、すでに、こうした障害を持った赤ちゃんが、全国で6例報告されています。 医学医療の発達した現在でも、治療法が無いためその対応は予防しか無いのは御存知のとおりです。抗体検査を受け、十分高い抗体価があることが確認された場合には、予防接種を受ける必要がなくなります。かつてはHI抗体価が16以下の場合は予防接種が必要と教わりましたがいまでもその認識で良いのでしょうか?ワクチンを打つと言っても若い女性に対しては、妊娠していない時期(生理中またはその直後がより確実)にワクチン接種を行い、その後2ヶ月間の避妊が必要と言われています。時間のない場合は、予防接種の前の抗体検査は必ずしも必要ないと言われています。風疹の感染または過去の風疹の予防接種によってすでに免疫を持っている方が再度接種を受けても、特別な副反応がおこるなどの問題はなく、そのような方の場合、予防接種を行うことで風疹に対する免疫をさらに強化する効果が期待されるとされています。感染免疫懇話会は、風疹大流行の兆しを受けて、流行の現状の把握と臨床上の注意、また昔習ったウイルス学や血清学の知識を再整理し新しい知見を学ぶべく国立感染研からOBを含めて3名の専門家をお招きして立体的に風疹を勉強しなおしたいと思います。入場無料。どなたでも参加できます。今回は、開始時間が午後7時30分と30分早いので御注意ください。いつものように講演会後の会費制の食事会を今回も我侭sで行います。(文責:松永) 

 感染免疫懇話集談会 


「風疹、大流行」
基礎の立場から 国立感染症研究所 ウイルス第三部 森 嘉生
臨床の立場から 国立感染症研究所 感染症情報センター 多屋馨子
理化学研究所 新興・再興感染症研究ネットワーク推進センター 加藤茂孝

平成25年3月21日 木曜 
午後7時30分~(いつもより30分間早いです) 
会場 葛飾区医師会館 3階 講堂
東京都葛飾区立石5-15-12 電話 3691-8536

 プレトーク  なぜ風疹の講演会を企画したか?(午後7時時20分から)
感染免疫懇話会 筆頭世話人 松永貞一(永寿堂医院院長) 

敵を知り、闘うために
風疹ウイルス・検査・ワクチン

国立感染症研究所ウイルス第三
部第二室〔風疹室〕室長
森 嘉生

 風疹をコントロールするには、確実な診断を行うための検査、流行状況等を把握するためのサーベイランス、予防のためのワクチンなどが重要になってきます。国立感染症研究所ウイルス第三部第二室では、実験室検査の整備や、風疹含有ワクチン(MRワクチン、風しんワクチン)の品質管理のための国家検定などを行っています。 風疹のような臨床診断が難しいと言われる疾患では、実験室診断が重要となってきます。血清学的検査(IgM検出EIA試験、IgG検出EIA試験、HI試験等)とウイルス学的検査(RT-PCR法、ウイルス分離)が使用されていますが、それぞれ検体の適切な時期に、適切な検体を採取して頂く必要があります。また、RT-PCR法において増幅した風疹ウイルス遺伝子を解析することで、ウイルスの分類をすることができ、どのようなウイルスが流行しているのかを知ることが出来ます。今、日本で流行しているウイルスは遺伝子型1Eと2Bに分類され、それぞれ2009年、2010年以前には日本では認められていませんでした(輸入例としては報告有り)。では、これらのウイルスはどこから来たのでしょうか?東南アジア、中国では日本に侵入する以前から類似したウイルスが流行していることから、こういった国々から日本に輸入され、それがすっかり定着してしまったようです。世界的には東南〜南アジア、アフリカ地域を中心に風疹含有ワクチンが定期接種化されていない国々が沢山あり、日本国内だけの問題ではなく、国際的な協調が必要となってきています。WHO、米国赤十字、米国CDC、ユニセフおよび国連財団は、Measles & Rubella Initiativeという国際パートナーシップを組んで、麻疹の排除に引き続き、風疹とCRSの排除を目標に掲げて取り組みを強化させています。また、国立感染症研究所ウイルス第三部はWHO麻疹風疹実験室ネットワークの一員としての活動も行っています。 また、風疹含有ワクチンがどのように作製され、品質管理がなされているかについても紹介し、皆様とどのように風疹と闘っていけば良いか考えていきたいと思います。



緊急事態です。都内で風疹が大流行しています!
なぜ今成人で流行しているのでしょうか
~妊婦と未来の赤ちゃんを守りたい、心をこめて~

国立感染症研究所感染症情報センター第三室〔予防接種室〕室長
多屋馨子

2013年は首都圏からの報告が多く、東京都からの報告が全国の半分を占めています。また、2月中旬までの報告数を2012年の同期と比較すると約20倍になっています。東京都については約40倍で、妊娠初期の女性、あるいはその夫が風疹を発症したとの情報も寄せられています。年齢は20代~40代の男性に多い傾向は2012年と変わりなく、女性は20代が多く報告されています。今後春休みなどで人の移動が盛んになると、全国に流行が拡大することが心配です。2011年度の感染症流行予測調査では、20代男性の8%、30代男性の19%、40代男性の17%、50代男性の13%が風しんのHI抗体を持っていませんでした。一方女性は、20~40代の4%が風しんのHI抗体を持っておらず、11%は1:8あるいは1:16の低いHI抗体価でした。妊娠2か月前までに予防接種をうけて、免疫を高めておくことが重要です。母親が顕性感染した妊娠月別のCRS の発生頻度は、妊娠1 カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度である。という加藤茂孝先生の報告があります。ワクチンの接種回数は子どもの頃の接種も含めて2回です。風疹の予防は風疹含有ワクチンを受けることですが、2006年度から麻疹風疹混合(MR)ワクチンによる2回接種制度が定期接種に導入されました。定期接種の対象年齢は1歳児(第1期)と小学校入学前一年間の者(第2期)です。また、2008~2012年度の5年間に限っては、中学1年生(第3期)あるいは高校3年生相当年令の者(第4期)に対する2回目の麻疹風疹混合ワクチンが定期接種に導入されていますが、特に東京都は第3期と第4期の接種率が低く、全国でも最低レベルが4年以上続いています。もうすぐ妊娠を迎えるこの年代は風疹予防の意味も説明して、定期接種の機会を逃さず受けて欲しいと思います。3月31日までなら無料で受けられます。妊娠中あるいは妊娠を希望する女性が身の周りにいる成人男性は、自らに加えて、妊婦と胎児を風疹から守るためにも風疹含有ワクチンの接種を受けることが期待されています。風疹ワクチンの定期接種の制度がまさに今の流行を説明しています。個人を守るだけでなく、ワクチンを受けたくても受けられない人を守るためにも、風疹にかかったことがなく、風疹のワクチンを受けたことがない、あるいは不明の人は、「今すぐに」医療機関を受診して欲しいと思います。風疹にかかったことがあると思っていても半分は別の病気であったという報告もあります。妊娠中の女性と未来の赤ちゃんを風疹から守ってください。よろしくお願いいたします。




先天性風疹の根絶を目指してーCRS発生のメカニズムと予防

理化学研究所 新興・再興感染症研究ネットワーク推進センター
(元、国立感染症研究所 風疹室長)
加藤茂孝

私は、ウイルス学研究者、特に風疹ウイルスの研究者として、日本からの麻疹の排除と先天性風疹の根絶を目指しています。麻疹・風疹患者の発生報告が、小児科定点から全数報告制度に切り替わり、麻疹患者も風疹患者も年間報告者数が1000人を切ったことを喜び、排除・根絶が間近であると大変期待していました。ところが、2007年の成人麻疹、そして2012年からの成人風疹(?)の流行に驚くと共に、再び流行したことを極めて残念に思っています。風疹の基礎・臨床の講演のあとで、以下の点を追加させていただきたいと思います。1)母親の再感染によるCRSの頻度:風疹再感染の頻度と感染の特徴。再感染によるCRSの発生頻度。再感染前の母親の抗体保有状況。2)胎児感染のウイルス遺伝子診断から見た感染ルート:409例の胎児風疹感染のウイルス遺伝子診断例を用いて推測した母親が感染した場合の母子間感染率と、胎児感染陽性 (胎児のウイルス遺伝子陽性)の場合のCRS誘起率。3)過去の流行時における風疹を理由とする人工流産数:人口動態表から推計した、過剰人工流産の推計:4)妊婦へワクチン誤接種した場合の危険性(安全性?): 米国のワクチン株RA27/3の風疹ワクチンを接種した後に、妊娠が判明した症例報告が683例あるが、その中から1例もCRSは出生していない。わが国の風疹ワクチン株はRA27/3よりも更に弱毒性が進んでいると考えられている。




感染・免疫懇話集談会/葛飾区医師会
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