野ゆき山ゆき海邊ゆき

日々の生活の中で出合う自然や民俗、歴史遺産を記録します。主な舞台は和歌山県中部。タイトルは佐藤春夫の「殉情詩集」より。

姿あり才ある

2011年03月20日 | 植物
冬との別れを意識してヤマザクラを撮って帰りの道ばたに咲いていたスイセンにカメラを向けた。副花冠の色が薄い品種で名前はわからない。スイセンも好きな花の一つである。とくに香りはとても魅力的である。湖面に自分の姿を見るナルキッソスの陶酔の境地に至る思いがする。
スイセンも美人に例えられる。越前海岸はスイセンの自生として有名な地であるが、一人の美女をめぐって兄弟同士が決闘にいたり、渦中の女性がそれを嘆いて海に身を投じたという悲しい伝説が残るらしい。NHKの「日めくり万葉集」を見ていると、万葉集にはこうしたパターンの歌がいくつかあるようだ。風俗研究家の井上氏によると『美は罪悪』という意識が日本人の根底にあったという。2000年ほど前に編纂された中国の正史の一つ「漢書」に『傾国』が出てくる。国王が美女に耽溺して政をなおざりにして一国が傾くことから、美女をそう呼ぶようになったようだ。白髪三千丈に代表される中国的な大袈裟な表現にも思えるが、美女の魅力の絶大さを言い得た表現のように思う。少し話が広がりすぎたか・・・
翻って小説家の幸田露伴は、スイセンを『姿あり才ある』独身女性の清らかさに例えようである。
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