花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「みにくいアヒルの子」(アンデルセン童話)

2014年01月18日 13時55分27秒 | ちょっと気になること
アンデルセン童話の中で、「みにくいアヒルの子」は最も有名で、いじめが大きな問題となっている現在、幼児・児童教育でよく利用されていると思います。私も子供の頃、「みにくいアヒルの子」を読んだ記憶がありますし、すばらしい童話としてそのまま受け入れてきました。 

この童話は様々な側面から取り上げられているようです。 「人を外見(容姿や容貌など見た目)で差別してはいけない」、 「人は夫々様々な才能を持っており、成長の速さもまちまちであるので、決して他との比較で評価しない」 さらに、「他人の目を気にせずに努力をしていけば、外見などを気にする人々が望めないような立派な人生が待っている」、というような取り上げ方、いじめに苦しむ人には、「生きておればいいことがある。(自暴自棄になってはいけない)」と諭す意味で用いられるようです。

「アンデルセン 童話に隠された秘話」(2013年10月15日:NHK-BSプレミアム「BS歴史館」)の中で、デンマーク国立アンデルセン博物館 館長 アイスナー・スティ・アスクゴー氏は「(アンデルセンは上流階級出身ではなかったが自身の人生を振り返り)みにくいアヒルの子を通して、どの階層で生まれたかは問題ではない。 人は生れに関係なく白鳥になれる、とアンデルセンは言っているのです。」と話しています。

動物の生態をテーマにしたTV番組が好きでよく見ますが、母親の犬や豚が他の動物の赤ちゃんに自分の子供と一緒に分け隔てなく乳を飲ませている場面を目にしたことがあります。 哺乳類や鳥類などでは親が子供を外見(体の大きさ、色など)で差別することがあるのだろうかという疑問がわいてきました。勿論、「みにくいアヒルの子」が念頭にあります。

鳥の世界では、「託卵」する種が全世界では約80種知られています。地球上には約9,000種の鳥がいますので、約1%が托卵する鳥類です。日本では、カッコウの仲間の4種が「託卵」する鳥として知られています。
・カッコウ……【托卵先】モズ、ホオジロ、オオヨシキリ、ノビタキ、ウグイスなど。
・ホトトギス…【托卵先】ウグイス、ミソサザイなど。
・ツツドリ……【托卵先】センダイムシクイなど。
・ジュウイチ…【托卵先】コルリ、ルリビタキ、オオルリなど

動物の世界では、身近なところでは、ネコは数匹の子供が生まれますが、子猫の毛の色は全部が同じということはなく、通常はまちまちです。親猫は毛色の異なった子猫を分け隔てなく育てますし、子猫同士も仲良く遊びます。毛の色が違うということで、差別があるようには見えません。また、他種を“家族”に受け入れる動物たちがいることが知られています。

<ナショナルジオグラフィック ニュース(May 14, 2013)から抜粋引用>
『マッコウクジラの群れが奇形のハンドウイルカを“家族”に受け入れたという感動話が、今週、インターネットで注目を集めた。 専門家らによると、思いがけない群れを形成するのは海生哺乳類だけではないという。 2011年に著作『Unlikely Friendships』を発表したジェニー・ホランド氏によると、このような個体の受け入れは、ペットや家畜において比較的よく見られ、野生の動物においても時折あるのだという。
イヌが子イヌたちへの授乳にリスの赤ちゃんを受け入れた、捕らえられた類人猿がネコを自分の赤子のように扱った、生まれたばかりのフクロウをイヌが世話したといった例を、ホランド氏は電子メールで教えてくれた。
動物たちが個体を家族に受け入れる動機は何なのだろうか。 例えば、同じ種の個体を受け入れる場合がある。これは本能的なものだ。 また、相互利益もまた動機のひとつだ。』

アヒルは一体どうなのでしょうか? 長い間抱いていた卵が孵化しているのだから、自分の子供と思って、わけ隔てなく育てるようにも思えますが、抱いていた卵が孵化する時期の違いや雛鳥の外見で、親アヒルは幼鳥を差別するのでしょうか? 

最近、“16年間育ててきた子供の骨格、性格に疑問を持ちDNA鑑定をしたら、99%以上の確率で遺伝的な親子関係が認められなかった”、と公表した芸能人のことがTV等で報道されています。 遺伝子レベルでの鑑定という文明のツールを手にした人類は、果たして幸せなのでしょうか。 動物たちのような生き方を望むのはもはやできないのですが、人類の文明の発展がむなしく思えるときがあります。


<「みにくいアヒルの子」(アンデルセン童話);福娘童話集より転用>
むかしむかし、あるところに、おほりに囲まれた古いお屋敷がありました。
そのおほりのしげみの中で、一羽のアヒルのお母さんが巣(す)の中のタマゴをあたためていました。
やがてタマゴが一つずつ割れると、中からは黄色い色をしたかわいいひなたちが顔を出します。ですが、巣の中で一番大きなタマゴだけが、なかなか生まれてきません。
しばらくたって、やっとタマゴを割って出てきたのは、たいそう体の大きなみにくいひなでした。
みにくいアヒルの子はどこへ行ってもいじめられ、つつかれて、かげ口をたたかれます。
はじめのうちはみにくいアヒルの子をかばっていたお母さんも、しまいには、
「本当にみにくい子。いっそ、どこか遠い所へ行ってくれたらねえ」と、ため息をつくようになりました。
それを聞いたみにくいアヒルの子はいたたまれなくなって、みんなの前から逃げ出してしまいました。

あてもなく飛び出しましたが、どこに行ってもきらわれます。
アヒルの子は人目につかない場所を選んで眠り、起きればまた逃げ続けました。
季節はいつの間にか、秋になりました。
そんなある日、みにくいアヒルの子はこれまで見たこともないような、美しいものを目にしました。
それは、白鳥(はくちょう)のむれでした。
長くしなやかな首をのばし、まぶしいばかりの白いつばさをはばたいて、白鳥たちはあたたかい国へと飛んでいくところでした。
アヒルの子はあっけにとられて、その美しい烏たちが空のかなたへ去っていくのを見送っていました。
「あんな鳥になれたら、どんなにか幸せだろう。
「いや、アヒルの仲間にさえ入れないくせに、そんな事を考えてどうするんだ」
冬が来て、沼には氷が張りはじめました。
アヒルの子はアシのしげみにじっとうずくまって、きびしい寒さをたえしのびました。
そのうちに、お日さまはしだいにあたたかさをまし、ヒバリが美しい声で歌いはじめます。

ついに、春が来たのです。
アヒルの子は体がうきうきしはじめると、つばさをはばたいてみました。
すると体が、浮くではありませんか。
「ああ、飛んだ、ぼくは飛べるようになったんだ」
アヒルは夢中ではばたくと、やがておほりにまいおりました。
その時、おほりにいた白鳥たちが、いっせいに近づいてきたのです。
「ああ、みにくいぼくを、殺しにきたんだ。 ぼくは殺されるんだ。
 ・・・でも、かまわない。
みんなからひどい目にあうより、あの美しい鳥に殺された方が、いくらましだかしれない。
「さあ、ぼくを殺して!」
アヒルの子は、殺されるかくごをきめました。
しかし、そうではありません
白鳥たちはアヒルの子の周りに集まると、やさしく口ばしでなでてくれたのです。
そして白鳥の1羽が、言いました。
「はじめまして、かわいい新人さん」
「えっ? 新人さん? かわいい? ぼくが?」
ビックリしたアヒルの子は、ふと水の上に目を落とすと、そこにうつっていたのは、もうみにくいアヒルの子ではありません。
まっ白に光りかがやく、あの白鳥だったのです。
冬の間に羽が抜けかわって、美しい白鳥に姿をかえていたのでした。
「あたらしい白鳥が、一番きれいだね」
みんなの声が、聞こえてきました。

(おわり)


(2014年1月18日 花熟里)


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