ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

スティック・メン @大阪・ビルボードライブ大阪

2022年07月18日 | ライヴ(日本公演)

スティック・メン (7月14日・大阪・ビルボードライブ大阪)

今頃になってハマったキング・クリムゾン(King Crimson)。実はオリジナル・アルバム全部はもちろん、ライヴ盤、編集盤、そしてオフィシャル・コレクターズ盤の多くはもう既にコレクト済み。初めて体験した昨年の来日公演も大満足だったが、とうとうスピン・オフともいえるプロジェクト、スティック・メン(Stick Men)の来日公演の為に大阪まで足を運ぶことに。ライヴで大阪まで行くのは2008年のザ・フー(The Who)以来だから14年ぶりになる。予約を手配したのはコロナ禍の第6波が終息しつつあった頃。それがどうだ、ライヴが近づくにつれ感染者の数は飛躍的に増大し、とうとう第7波真っ只中。でも、もうつきあっていくしかない。どのみち1人行脚なので、予約した近鉄の特急列車「ひのとり」のプレミアム車両のラグジュアリーなシートに包まれつつ、大阪難波入り。公演は2回。セカンド・セットを予約したので開演は21時と遅い。梅田へ移動し「Billboard Live Osaka」へ。もうそれまでにしこたま酒が入ったが(笑)、ちょうど覚めていく頃合いに商業施設の中にある小さなハコのテーブル席に着いた。ドリンクもフードもパスして開演を待つ。

ステージまで約6mという至近距離。しばらくしてメンバーが観客席の間からのんびりと登場。配置に着いて演奏が始まる。音のキレが素晴らしい。トニー・レヴィン(Tony Levin)はチャップマン・スティック、マーカス・ロイター(Markus Reuter)もU8 と呼ばれる8弦のタッチ・ギター、そしてドラムスのパット・マステロット(Pat Mastelotto)という特殊なトリオ布陣。どちらのギターもピックを全く使わないタッピングのみという珍しいカタチ。まぁ、こいつらが凄い凄い。3人ともバカテクだとは知っていたが、中でも初めて観たマーカスは一番若いが飄々としていて、無表情のままタッチ・ギターのフレットを両手10指が自由自在に動き回る。演奏中もフレットに全然目をやらず、目を瞑ってでも出来ると言わんばかりに指を動かしたまま会場を見渡し、ギター・パート、ベース・パートがトニーと目まぐるしく入れ替わる難易度の高い複雑な展開の曲をまるでサイボーグのようにこなしている。どうなってるんだコイツは? 彼の演奏を観ていると、感情を露わにしてしてジャララーンとギターをかき鳴らすキース・リチャーズ(Keith Richards)らを我々が崇めて呼称する”ギター・ヒーロー”とは何かを考えさせられてしまう…。ドラムスのパットはバンマス的な役割も。もちろん彼のドラムスは変拍子も自由自在で、どうやったらこの複雑な曲のリズムをキープして、さらに展開させていくのか理解不能。演奏途中で破綻とかしないのかな。ハードなスネアのヒットで音圧も強い。あのトニーが一番地味に見えてしまうが、もちろん彼のスティックはそもそも神業。クリムゾンのライヴでは両脚をバッと広げて演奏する姿がかっこよかったが、今回もラフな格好ではあったが、超絶演奏と対極にあるような人の好さがにじみ出ていて素敵だった。MCでパットが言っていたように、彼らはいわゆる”ロック”とは全然違う方法論によって成り立っているようだが、ちゃんと古いタイプのカタルシスも内包しているので自分のような”ロック脳”でも十分に楽しめる。

演奏はキング・クリムゾンの代表曲「Red」「The Sheltering Sky」「Level Five」「Larks' Tongues In Aspic Part Two」や、ロバート・フリップ(Robert Fripp)のソロ曲「Breathless」を交えながら、彼らの最新のEP「Tentacles」(公式なネット・ダウンロードで入手済・ジャケ写真下1枚目)からの曲も演奏された。4月だったかのカナダ公演と大差ないセット・リストだったので自分は予習もばっちりで、最初から最後まで物凄い音圧と演奏の妙技に聞き惚れた。これを一晩で2セット演るとは恐るべし…。わざわざ大阪まで行って良かったァ。


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