ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

キング・クリムゾン @名古屋市公会堂・大ホール

2021年12月02日 | ライヴ(日本公演)

キング・クリムゾン (11月30日 名古屋・名古屋市公会堂・大ホール)

自分はロック全般が好きだが、いわゆるプログレのバンドとの相性は良くなく、キング・クリムゾンも若い頃にかの名盤「21世紀の精神異常者」〔原邦題ママ〕をダビングしたテープを持っている程度。もちろんいくつかの曲は聴いていたが、オリジナル・アルバムを集めるほどには至らなかった。たしか2015年に来日した際の音源がネットで発表されたことがあって、それを興味本位でダウンロードし聴いてみた。あれ?、自分の中のイメージと違って結構イケる。それからベスト盤や、重要なオリジナル・アルバム(未レヴュー)やロバート・フリップ(Robert Fripp)のソロ作を何枚か購入するようになった。ただしライヴを含めると発表されている音源は膨大で、とてもついていけない。そして世界中がパンデミックになってからロバートと妻のトーヤ(Toyah)がYou Tubeで始めた「TOYAH & ROBERT'S SUNDAY LUNCH」を観てビックリ。過去のインタビューでは、堅物で、頑固で、取りつく島もない、という感じのロバート・フリップが、こんなにお茶目な爺さんになっていたとは…(しかもあのギターの名手がとんでもない音痴・笑)。

来日公演が発表された。コロナ禍(第5波)の真っ最中だった為、本当に実現するのか怪しかったが、チケットを買ってみることに。ただ高い価格設定でも席は選べず、発券する時に分かるという不親切な販売。下のランクのS席(⇔SS席)でも¥16,000だったが2階席が割り当てられたようだ。ま、いい席は自分のような”にわか”じゃなくて真のクリムゾン・ファンが座ればいい。会場は名古屋市公会堂(写真下)。闇夜に浮かび上がる昭和5年(1930)建造の登録有形文化財。キング・クリムゾンのコンサートにこんなに雰囲気が合う会場は日本でもなかなかないと思う。大規模改修されてから大ホールに入るのは初めて。昔からこの会場は音もいいし、見やすいので2階席でも全く問題ないだろう。

 

 

公演の直前にコロナ変異株による入国禁止措置があったので、もう少し遅かったら公演中止になっていただろう(メンバーは来日して1週間、隔離でホテルに缶詰めにされていたようだ)。会場に入るとさすがに年齢層が高い。チケットも高いし、もう洋楽を支えているのはオッサン(自分含む)やオバサンばかりなのだ。2階席は両サイドにほとんど客が居ない。入れていないのか埋まらないのか。会場に流れる音楽はまるで環境音楽のようなメローな音楽(オリジナル曲とは知らなかったが、もちろんこれも”込み”だろう)。通常のロック・コンサートとは雰囲気が違う。ステージ前方にドラムスが3セット並ぶ特異な配置。ロバートによるちょっと間抜けなアナウンスが流れ、あっさりメンバーが登場。BGMに重なるように演奏が始まる。まずは3人のドラマーによる共演。フリーフォームなようでいてしっかりと構築されているが、プリミティヴな音色の連打。凄い演奏だ。そして満を持して「Larks' Tongues In Aspic Part I(邦題:太陽と戦慄)」(←自分は後追いなので邦題と原題が一致していない)の鋭いギターリフが。物凄い音圧。そして各パートの恐ろしい程のテクニック!みなぎる緊張感。つい、キース(Keith Richards)だったら最初の1分ででギターぶん投げるだろうナといらない想像が頭をよぎる(笑)。

コロナ禍で大声での声援が制限されている為、客席からは拍手の反応のみ。すぐに静謐に戻る為、まるでクラシックのコンサートのようだが熱量は凄い。1階席はどうだったか知らないが、曲毎にスタンディング・オベーションしたいところ。自分はロバート以外はトニー・レヴィン(Tony Levin)ぐらいしか名前を知らなかったが、各自とんでもない力量だ。メンバーにどれだけフリーフォームが許されているのか知らないが、1音でも外せない高度な演奏バトル。変拍子も多いクリムゾンの曲が完全に、そしてブーストしてステージ上で再現されていく。恐ろしいおじさん(お爺さん)達。ブルーズを起源とするようなロックとは全く違う文脈のロック。"Progressive"というのを進歩的、革新的と訳すなら、これこそがプログレッシヴなロックだ。

15分の休憩を挟んで後半も全く演奏の熱量は落ちず。どんなライヴでも2時間演奏があるとダレる所があるものだが、ディープなファンでない自分でもそういう瞬間が全く無い。ステージ上はギミックが無く、照明も最後「Starless」で赤いライト(深紅=クリムゾン)が使われた程度。そういうのを必要としないんだろう。アンコールはあの「21世紀の精神異常者」で締め。いいものを観た。公会堂の音は想像通り良かった。久しぶりだったが、やっぱりライヴの生音はいいなァ。メンバーの発言を見ていると、年齢もあってどうもこれが最後の日本公演となるようだ。もし仕事が何とかなったら大阪と残りの東京公演のどれかも行きたいがちょっと無理。オリジナル・アルバム、集めるなよ、集めるなよ…(←ダチョウ倶楽部)。

※1枚目の写真は公演終了後の写真撮影タイム時のもの

 

Set 1

Devil Dogs of Tessellation Row
Larks' Tongues in Aspic, Part One
Peace: An End
Pictures of a City
The Court of the Crimson King
Red
One More Red Nightmare
Moonchild
Tony's Cadenza
Discipline
Indiscipline

Set 2

Drumzilla
Epitaph
The ConstruKction of Light
Neurotica
Radical Action II
Level Five
Starless

Encore

21st Century Schizoid Man

 


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