ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

陽春花形歌舞伎 「怪談乳房榎」 @名古屋市・御園座

2023年04月15日 | 歌舞伎・文楽

陽春花形歌舞伎 「怪談乳房榎」 (4月11日・御園座)

老母を連れて久々の歌舞伎観劇。昼の部は七之助の早替り七変化、夜の部は勘九郎の三変化。どちらにするか迷ったが自分が見ていない演目の方にさせてもらった。母は脚が弱いので今回もすぐ近くのホテルに部屋を取った(芝居が跳ねた後に一緒に呑むためもあるが・笑)。昼に軽く蕎麦を手繰った後、少しホテルで休憩させてから御園座へ。今回は早くから計画していたこともあって自分の都合のついた日程で席を探すと花道真横の席が取れた。ラッキー。母は花道の真横に座るのは初めてだそうでワクワクもひとしお。席に座ると花道はちょうど自分達の顔の高さくらいになるので迫力も満点だ。

 

舞台の定式幕は通常と違い、黒、白、柿色の中村屋仕様。落語から歌舞伎の演目になったこの「怪談乳房榎」は、三遊亭圓朝による創作噺で明治21年の作品だそう。名古屋を含む地方の歌舞伎公演ではあまり通し(話の最初から最後まで)の演目を観る機会が多くないのでそれも嬉しい。

絵師の菱川重信が勘九郎、妻のお関が七之助。実悪(残忍な悪役)の磯貝浪江を演じるのは喜多村緑郎。現在は新派の俳優だ。勘九郎は下男の三助、ならず者の三次の役も早替りで演じる。その早替りの早いのなんの。もちろん仕掛けに目を留めさせたり、代役の背中を見せておいたりとこちらの目を惑わす手法があるのだが、替わっているように見せかけて替わっていなかったりもするので、母は肘で突いて教えてあげないとついていけてない場面もあるほど。いったい舞台の裏側ではどうやっているんだろう。

怪談なので話のすじは総じて悲惨なのだが、勘九郎が三助を演じる時に笑わせたりするので、上演中は笑いと早替りの時の「ほおぉ」という感嘆のため息がいくつもやってきて飽きさせる暇もない。クライマックスは1トンの水を使うという本物の滝。3列目くらいまでは水避けのビニールシートも配られているから水族館かテーマパークのアトラクション並み。また勘九郎が悪ノリしてわざと観客に向かって水を跳ねるので結構濡れていたようだ。その時の勘九郎の嬉しそうなことといったら(笑)。

それにしても勘九郎は亡くなった勘三郎によく似てきたなァ。もちろん以前から似ているのだが、今回は口跡、おどける時の表情、花道を通る時の背中からみた横顔までそっくり。血っていうのは凄いもんだ。それが弟の七之助は全く違うタイプで、これぞ女形っていう顔付きなのだからホント奇跡としか言いようがない兄弟だ。今回の演目はその両方の顔を観ることが出来たし、ド派手な演出だしで母も喜んでくれたようで良かった。

 


 

三世實川延若より直伝されたる
十八世中村勘三郎から習い覚えし

三遊亭円朝 口演

怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき)

中村勘九郎 早替りにて相勤め申し候
菱川重信
下男正助
うわばみ三次

重信妻お関    中村 七之助
松井三郎     中村 虎之介
重信弟子信鳥   中村 鶴松
住職雲海     市川 男女蔵
磯貝浪江     喜多村 緑郎


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