ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

八百宮酒店 @愛知県一宮市

2020年11月06日 | 愛知県(尾張・老舗)

名鉄電車に乗って愛知県一宮市に向かう。駅で降りて宮西通りを北上、結構な距離を歩いて向かったのは「八百宮酒店」(昭和30年代・建造)。以前から”むくり屋根”が目に留まっていた古い酒屋だ。それにしても素晴らしい佇まい。”むくり屋根”や”うだつ”もそうだが、浮き文字看板や風情のある外灯にも貫禄がある。なぜ歩いて向かったかというと、実は店内で酒が呑めるから。外観を愛でた後に店に入ると開け放した店内には小さいテーブルと椅子が用意してある。そう、いわゆる酒屋で立って呑む”角打ち”と違って腰を下ろすことが出来るのだ(そもそも江戸時代の”居酒屋”とはこういう店だったそう)。もちろんそんな店は常連ばかりだからちょっと入り辛い。それでも主人が「お酒?どうぞ座って下さい。」と自分が腰掛けていた席を空けてくれた。相席の向かいには常連の爺さん。先客は爺さんを含めて3人(まだ午前中です・笑)。冷蔵庫に赤星が見えたので「サッポロビール下さい。」とお願いする。すぐに大瓶を取り出してコップと一緒に出してくれた。

向かいに座った時点で爺さんがこちらを興味深そうにいろいろと詮索(苦笑)。軽くいなして背徳の昼前ビールをゴクッとやる。シミルー。何しろこの店は高等学校と小学校の隣という立地。すぐ横では大勢の若人が学業に勤しんでいるのだ(笑)。これを背徳と言わずして…。こういう店で座れるだけでも驚くが、こちらの凄いところは乾きものだけでなく、ちゃんと調理した酒肴が注文出来ること。こんなのもう普通の酒場と相違ない(しかも破格に安い)。向かいの爺さんは旨そうな焼き鯖を食べているし、他の2人ももう何か平らげた後のよう。壁に貼られた品書きには「焼き魚(この日は鯖)」「シュウマイ」「餃子」「ワンタン」「玉子焼」「焼きそば」「ハンバーグ」「ラーメン」(!)等々とかなり豊富。もちろん既製品が主だろうが、どれも値付けが安く、200、300円台の品ばかり。自分が選んだのは「長いもトロロ焼」。主人が奥に消え、しばらくして擦った長芋を平らに丸く焼き上げた一品が平皿で運ばれた。上から刻み海苔が振られ、ほんのり出汁(あるいは少量の醤油)が効いて、縁がカリッと、中はトロトロ。旨い。これは日本酒でいきたかったナ。

主人に、実は前から素晴らしい”むくり屋根”が気になっていたと伝えると「”むくり屋根”なんてよう知っとるねー。」「そんなに古くないよ。」と戦後、昭和30年代に建てた建物だと教えてくれた。「犬山や美濃の古い街にもむくり屋根の建物が残っとるよね。」と言うので、ちょうど棚に1升瓶が並んでいた「その”百春”の小坂酒造さんがこういうむくり屋根ですよね」と言うと、「そう、うちはあそこから酒を仕入れとるもんで、あそこの建物を真似したの。」と驚きの事実を教えてくれた。へぇ、そうなんだ、面白いなァ。

いやぁ、それにしても酒呑みにとってここは天国だなァ。買物とか片付けとか洗いものとかのことを考えたら家で呑むより安い。いや、近くにこの店があったら絶対に呑み過ぎて体を壊すから地獄か…(笑)。ビール大瓶と山芋という腹の膨れる品を頼んでしまったのと、マスクを外したままこちらに向かって大きな声で喋る爺さんがさすがに気になってこれで引き上げることに(店内には”大声禁止”の貼紙あり・笑)。本当はもう少し呑みたかったけれど、こういう店で長居はいけないしね(”長時間飲食お断り”の貼紙もあり・笑)。再訪を誓って勘定してもらった。駅から遠いのだけが難点…。(勘定は¥750!)

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八百宮酒店

愛知県一宮市大宮5-2-14

 

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コメント (2)
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