ー母と暮せばー
2015年 日本 130分
監督=山田洋次 キャスト=吉永小百合 (福原伸子) 二宮和也 (福原浩二) 黒木華 (佐多町子) 浅野忠信 (黒田正圀) 加藤健一(上海のおじさん)
【解説】
「父と暮せば」などの戯曲で有名な井上ひさしの遺志を名匠山田洋次監督が受け継ぎ、原爆で亡くなった家族が亡霊となって舞い戻る姿を描く人間ドラマ。原爆で壊滅的な被害を受けた長崎を舞台に、この世とあの世の人間が織り成す不思議な物語を映し出す。母親を名女優吉永小百合が演じ、息子を『プラチナデータ』などの二宮和也が好演。ほのぼのとした中にも戦争の爪痕を感じる展開に涙腺が緩む。
【あらすじ】
1948年8月9日、長崎で助産師をしている伸子(吉永小百合)のところに、3年前に原爆で失ったはずの息子の浩二(二宮和也)がふらりと姿を見せる。あまりのことにぼうぜんとする母を尻目に、すでに死んでいる息子はその後もちょくちょく顔を出すようになる。当時医者を目指していた浩二には、将来を約束した恋人の町子(黒木華)がいたが……。(シネマトゥデイ)
【感想】
宮沢りえ、原田芳雄出演の「父と暮せば」をずいぶん前に見ました。
すごく感動したことを覚えています。
2004年の黒木和雄監督作品。
この作品はタイトルと長崎原爆投下を描くと言う構想だけを井上ひさしさんが残していたものを山田洋次監督が引き継がれたのですね。
映画を見始めてたちまち涙です。
私にも息子がいるし、息子が原爆で死ぬと思うだけで、涙が溢れます。
なので、ちゃんとこの映画を鑑賞できるのかどうか、自信もなくなります。
一瞬で命を奪われた若者。
この世に未練を持って母親の前に亡霊となって現れたとしても不思議はないし、母親も、たとえ亡霊になった息子にでも会いたいと願っているので、このシチュエーションは素直に受け入れてしまいます。
最後も、栄養失調に加え、亡霊と話すことで精神的にも弱って亡くなってしまうというのも納得できるラストだと思いました。
それほどまでに、母の息子への思いは強いと思う。
あの戦争で息子を亡くしたすべての母親は、自分の一部が死んだ気持で生きてこられたと思う。
戦争はいけないと言うけれど、その時代にその国に生きた人間としての責任は免れない。
理不尽だけれど、その結果は引き受けないといけない。
事実、そうして人はすべてを潔く飲み込んで、時代を生きていくわけです。
死んでいる浩二(二宮和也)は町子(黒木華)のことを深く思うけれど、なにもしてやれることがない。
町子は浩二のことを思いつつも、新たに愛する人と出会い自分の人生を歩み出す。
自然のことですよね。
よかった。
でも、母は息子二人を亡くして、新たな人生を歩くことはできなかった、というお話でした。
悲しくて何度も涙が出るけれども、母にも生きて欲しかったなあ。
現実には、悲劇を乗り越えて強く生きてこられた方がたくさんおられたと思う。
そしてこの先、二度と悲劇を繰り返さないようにと願うばかりです。
今も北朝鮮の核開発問題とか、福島原発事故の後始末がなかなかうまくいかないとか、同じレベルで語るべきではないのかもしれないけど、原子力にまつわる問題がたくさんあります。
人類が未だに制御できないパワーとエネルギーをもつ原子力。
有効利用したい気持ちもわかるけど、持て余しているのが現状でしょう。
特に原子爆弾。
次に爆発させたら人類は滅亡に近づくとわかっているのに、一度持ってしまったものは捨てることができないのか?
持つことが抑止力なんて、よくもまあ。
そういう自分勝手な論理だから、小国の北朝鮮にもつけ込まれるんです。
いまこそ、人間の叡智の結集する時が来ていると思います。
この時代に生きる私たちに、責任はあります。