“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●JAXAなど、大気汚染物質(NO2)の同時観測により⼆酸化炭素の排出量を精度良く評価する新⼿法を開発

2021-07-28 09:30:11 |    ★炭素ニュース★
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立環境研究所及び海洋研究開発機構の研究チームは、航空機を用いた二酸化炭素(CO₂)と二酸化窒素(NO₂)の分光学的な同時観測を世界で初めて行い、NO₂観測データを用いて高精度なCO₂の排出量推定手法を開発、実証した。

 脱炭素社会に向けて、温室効果ガスであるCO₂の削減とその監視が求められるなか、自然起源のもの(例、生態系からの放出など)と人為起源のもの(発電所、工場、交通など)から発生源別に排出量を正確に把握、推定することは、重要な課題の一つ。

 特に、人工衛星からの観測では地球全体を対象に出来る利点があるが、一方で観測データには測定誤差があるため、大気中に長期に蓄積されたCO₂と燃焼により排出されたCO₂を発生源別に分離するのは困難。

 そこで、燃焼とともにCO₂と同時に発生するNO₂が、CO₂の排出源同定とその排出量推定に有効である可能性に、同研究チームは注目した。

 今回、航空機観測で実証したCO₂の排出量の評価・推計手法において、推計精度が3倍程度向上することが示されたことを受け、人工衛星からの観測技術にも応用するとともに、従来の統計データでは識別が難しいCO₂排出源の発見や、CO₂排出量推計の高精度化につなげる。

 世界各国では、2015年12月に採択されたパリ協定の目標達成に向けた進捗確認サイクルであるグローバルストックテイクに貢献するため、人工衛星観測データを用いて、一つ一つの排出源からCO₂の排出量を導出する研究開発が急ピッチで進められている。

 JAXAの温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT」および「GOSAT-2」ではNO₂を観測するセンサの搭載はないが、2023年度に打ち上げ予定の「GOSAT-GW」では搭載する温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)を用いて新たにNO₂の観測が可能となる。(宇宙航空研究開発機構<JAXA>)
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「楽しい金属化合物の単結晶育成と物性」(大貫 惇睦著/アグネ技術センター)

2021-07-28 09:29:31 |    化学



<新刊情報>




書名:楽しい金属化合物の単結晶育成と物性

著者:大貫 惇睦 

発行:アグネ技術センター

 単結晶の育成は、金属化合物の物性の研究や工学的応用になくてはならないものである。主に磁性や超伝導の対象となる、遷移金属や希土類・アクチノイド化合物の単結晶育成のノウハウが満載。化合物の単結晶育成を通して、物性物理学にチャレンジしてほしいという著者の願いが込められた充実した1冊。まずは状態図の基本を解説。ある化合物の単結晶を育成しようとしたとき、状態図がわかっていればどんな化合物が不純物として混入しやすいかがわかり、その化合物にふさわしい方法が決定できる。次は、電気炉の製作である。研究用の炉には、高価で大がかりな高周波炉など用途に応じて市販されているたくさんの種類があるが、同書では安価にできる簡便な手作り電気炉を紹介する。炉心管や抵抗線の選び方、炉心管へのカンタル線の巻き方など、具体的な手順を初心者にもわかるようにていねいに説明。最後に、10種類の単結晶育成法をそれぞれ詳しく説明し、実際の化合物を通して重い電子系(強相関電子系)の物理の基本にもふれている。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「負けないからだをつくる 新しい免疫力の教科書」(根来秀行著/朝日新聞出版)

2021-07-27 09:37:12 |    生物・医学



<新刊情報>



書名:負けないからだをつくる 新しい免疫力の教科書

著者:根来秀行

発行:朝日新聞出版

 新型コロナウイルスにより、免疫力の重要性がいわれるなか、免疫って何?の基本解説から、免疫力強化に重要な毛細血管のしくみや自律神経を親しみやすいイラストとマンガで徹底解説。免疫力を高める食事や運動、生活習慣なども紹介。Withコロナ時代に必読の書。
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●科学技術ニュース●パナソニック、今秋から欧州でスマートガスメーターを用いたユーティリティサービスを展開

2021-07-27 09:36:37 |    通信工学
 パナソニックは、日本国内で培ったガスメーターデバイス技術を生かし、スマートガスメーターの導入が進む欧州において、2021年秋からガスユーティリティサービスの提供を開始する。

 スマートガスメーターには、電池のみで長期駆動できる低消費電力性能と高信頼性の両立が求められる。近年、通信キャリアの基地局を用いたNB-IoT(Narrow Band IoT)など省電力に配慮した通信ネットワークの採用が加速しているが、通信キャリアとメーターごとに契約しなければならないなど、運用面での煩雑さや負担増といった問題も表面化している。

 そこで同社は、スマートガスメーター向けの弁や圧力センサー、感震器といったデバイスに加え、NB-IoT接続サービスからデータモニタリング、そして収集データの解析・活用までをワンストップで提供するガスユーティリティサービスを開始する。2021年秋にイタリアから導入を始め、欧州域内で広げていく予定。

 同社は、地震の揺れやガス漏れなどを検知するセンサー技術、ガスを遮断する弁機構など地震多発国ならではの技術を磨き、ガスインフラの安心安全に貢献してきた。さらに、日本国内で培った技術を生かして、フランスやイタリアなど現地のガス会社が行うスマートメーターの導入実証に日本メーカーとしていち早く参画してきたほか、2014年からはイタリアでガスメーターデバイス事業に参入するなど、スマートガスメーター導入の動きに合わせて欧州のニーズに対応した事業を展開してきた。(パナソニック)
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●科学技術ニュース●名古屋大学、脈動オーロラ発生時に中間圏のオゾンが10%以上減少することを発見 

2021-07-27 09:35:57 |    宇宙・地球
 名古屋大学宇宙地球環境研究所の三好 由純 教授らの国際研究グループは、宇宙のさえずりと呼ばれる特殊な電波によって、脈動オーロラと呼ばれる明るさが明滅するオーロラが発生した時に、オーロラを起こす電子よりも1000倍以上のエネルギーを持つバン・アレン帯(放射線帯)の高エネルギー電子が高さ60km付近の中間圏にまで侵入することによって、中間圏のオゾンが10%以上減少することを発見した

 この過程は、同研究グループによって理論的に予測されていたもので、今回、宇宙航空研究開発機構(JAXA)「あらせ」衛星と北欧に設置されている欧州非干渉散乱(EISCAT)レーダー、及びオーロラ観測ネットワークによる国際共同観測と、同研究グループが開発したシミュレーションを組み合わせた研究によって実証された。

 この成果は、オーロラに伴う宇宙からの電子降り込みが、超高層大気だけでなく中層大気にも大きな影響を及ぼしていることを実証するもの。

 中間圏オゾンの変化は、気候変化にも影響を及ぼすことが指摘されている重要な過程であり、同研究の成果は、宇宙と地球大気との関係の新たな理解につながる意義を持っている。

 2023年度からは、国立極地研究所や名古屋大学などが参加するEISCAT科学協会によって、次世代の大型大気レーダーEISCAT_3Dの北欧での運用が開始され、宇宙と地球大気との結合過程の理解がさらに進むことが期待される。(国立極地研究所)
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「分子地球化学」(高橋嘉夫、福士圭介、田中雅人、柏原輝彦、関根康人、板井啓明著/名古屋大学出版会)

2021-07-27 09:34:51 |    宇宙・地球



<新刊情報>



書名:分子地球化学

編者:高橋嘉夫

著者:高橋嘉夫、福士圭介、田中雅人、柏原輝彦、関根康人、板井啓明

発行:名古屋大学出版会

 物質循環などマクロな現象の統一的把握は、「元素の個性」に基づくミクロからのアプローチにより、初めて可能となり、その理解は地球史解読や将来の環境予測にも適用できる。同書は、XAFS法などの研究手法の基礎と、海底鉱物資源から地球外天体までの最新の成果を、系統的に解説。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「宇宙人と出会う前に読む本」(高水裕一著/講談社)

2021-07-26 09:44:38 |    宇宙・地球



<新刊情報>



書名:宇宙人と出会う前に読む本~全宇宙で共通の教養を身につけよう~

著者:高水裕一

発行:講談社(ブルーバックス)

 「あなたはどこから来ましたか?」さまざまな惑星の宇宙人が集う社交の場で、もしそう尋ねられたら、あなたならどう答えるか?「地球から来ました」など論外で、失笑を買うこと確実。ではなんと答えればよいのか?私たち地球人は「ある理由」により、宇宙人の平均より科学の発達が遅れている可能性がある。いつか宇宙人と出会ったとき、恥をかかずに交流できるようになるには、地球の常識にとらわれず、宇宙のすべてにおいて通用する普遍的な教養を身につけておく必要がある。同書は、惑星際宇宙ステーションに地球チームの一員として乗り込んだあなたが、そこで遭遇する宇宙人が繰り出すさまざまな突拍子もない質問に答えていくうちに、宇宙で本当に必要な科学知識とは何か、宇宙的思考法とはどういうものかが、自然とわかってくるように構成されている。読み通したあと宇宙教養がどれだけ身についたかは「宇宙偏差値」を算出してチェックできる。宇宙人と意思疎通するための「三種の神器」、連星太陽をもつ惑星の異様なカレンダーなど奇抜なアイデアも満載でお贈りする「ちゃんとした宇宙人になるためのガイドブック」。その日が来ても、来なくても、読めば世界の見え方が一変するはず。
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◆科学技術<テレビ番組情報>◆NHK「サイエンスZERO」/BSフジ「ガリレオX」他

2021-07-26 09:44:08 |    ◆TV番組◆



<テレビ番組情報>




プロジェクトX  挑戦者たち 4Kリストア版  NHK‐BSプレミアム  毎週火曜日 午後9時~9時45分 

7月27日(火) われら茨の道を行く 国産乗用車攻防戦

 昭和25年、トヨタ自動車は倒産の危機にあった。主力のトラックが故障で売れず、銀行に融資を止められた。そんな中、命運を託されたのがたたき上げの現場主任・中村健也。初の本格国産乗用車の開発を率いた。課題の一つが振動の制御。当時は悪路が多く、試作車のバネが折れ、車体はバラバラになった。しかし技術者たちは諦めなかった。2万点を数える部品を改良。完成するとロンドンー東京・全長5万キロのテストドライブに臨む。

アナウンサー:国井雅比古、膳場貴子

語り:田口トモロヲ



コズミック フロント  NHK‐BSプレミアム  毎週木曜日 午後10時~11時00分

7月29日(木) 大量絶滅ビッグファイブ〜生命進化の謎に迫る〜後編(選)

 これまで地球を襲った5回の「大量絶滅」に迫るシリーズ。後編では、およそ6600万年前に起った恐竜の絶滅を中心に、生命が進化してきた波乱万丈のドラマを見ていく。



地球ドラマチック  NHK‐Eテレ  毎週土曜日 午後7時~7時45分

 7月24日(土)、7月31日(土)、8月7日(土)の放送は休止。 次回は、8月14日(土)の放送予定。



ガリレオX  BSフジ  毎週日曜日 午前11:30~12:00分(隔週新作)

8月1日(日) 2021年金星の旅 新発見の姿と生命の可能性(再放送)

 地球の双子星とも言われる「金星」。しかし、その環境は地球とはまるで正反対。硫酸の雨が降る中、風速100m/sという強風が常に吹き続け、地表面温度およそ460℃という灼熱の大地が広がっているのだ。そんな惑星から今、新事実が続々と見つかっている。中には地球外生命の可能性が示唆される発見もあるというのだ。地獄のような環境の星から、一体どのような生命の可能性が? 最新の研究成果から新たに見えてきた、

主な取材先:佐藤 毅彦 (JAXA)
      堀之内 武 (北海道大学)
      平松 正顕(国立天文台)
      関根 康人(東京工業大学)
      沼津港深海水族館
      CHICAMA



サイエンスZERO  NHK‐Eテレ  毎週日曜日 午後11時30分~0時00

8月1日(日) 宇宙誕生から“1秒間”の謎に挑む ニュートリノ科学の大実験

 宇宙はどのように誕生したのか?そんな究極の問いに挑む実験が日本で行われている。茨城にある世界トップクラスの加速器で素粒子ニュートリノを人工的に作り出し、300km離れた岐阜の「スーパーカミオカンデ」で観測するもの。挑むのは宇宙誕生から1秒間の世界。理論的にはこのとき生まれる物質は「反物質」と衝突して全て消えてしまうはずなのに、物質でできた我々は存在している。この大きな謎の解明を目指す大実験に迫る。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「よくわかるデータリテラシー」(阿部圭一著/近代科学社)

2021-07-26 09:43:49 |    情報工学



<新刊情報>



書名:よくわかるデータリテラシー~データサイエンスの基本~

著者:阿部圭一

発行:近代科学社

 データサイエンスの重要性が叫ばれるなか、その教育への期待が産官学で高まっている。高校ではすでに統計学が必修となり、大学においても文・理を問わず全学生にデータサイエンス教育を課すことが決まった。同書では、データサイエンスの要であるデータリテラシー(データを正しく読み取り情報を正確に提示できる能力)の総合的解説を試みており、初学者が一から理解できるよう豊富な例題・演習・解答が盛り込んである。これからデータリテラシーを教えるにあたって適切な教材を探している教師の方々、データサイエンスを身につけるための足がかりを欲している学生の方々、どちらの要望にも応える充実の教科書となっている。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「『現代優生学』の脅威」(池田清彦著/集英社)

2021-07-23 09:48:07 |    生物・医学



<新刊情報>



書名:「現代優生学」の脅威

著者:池田清彦

発行:集英社(インターナショナル新書)

 戦後、一度は封印されたはずの「優生学」が奇妙な新しさをまとい、いま再浮上している。これまで人類は、優生学的な思想により「障害者や移民、ユダヤ人といったマイノリティへの差別や排除、抹殺」を繰り返してきた。日本では「ハンセン病患者の隔離政策」がその典型といえる。現代的な優生学の広がりに大きく寄与しているのが「科学の進歩」や「経済の低迷」、そして「新型コロナウイルスの感染拡大」である。優生学の現代的な脅威を論じる。
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