“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「科学技術の軍事利用」(橳島次郎著/平凡社)

2023-08-15 09:36:46 |    科学技術全般



<新刊情報>



書名:科学技術の軍事利用~人工知能兵器、兵士の強化改造、人体実験の是非を問う~

著者:橳島次郎

発行:平凡社(平凡社新書)

 古今東西、古くは火薬や測量術から、コンピューター、GPS、ドローン、あるいは宇宙開発まで、科学・技術と軍事開発はつねに不可分のものとして発展してきた。最近では日本学術会議が大学が軍事研究に関わることへの反対声明を出すなど、軍民両用の研究へは反対も根強い。さらに近年、AIや兵士の心身の強化改造、人体実験などの軍事利用の是非が喫緊の問題として浮上している。軍民両用ははたしてどこまで許されるべきなのか。これまでの科学・技術と軍事の結びつきの歴史をたどり、現在生じている最先端の課題を、生命倫理の第一人者と考える。
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●科学技術ニュース●日立、イタリア・ジェノバで画期的なスマートデジタル交通アプリの商用サービスを開始

2023-08-15 09:36:12 |    輸送機器工学
 日立製作所の鉄道システム事業におけるグループ会社である日立レール社は、このたび、イタリア・ジェノバ市の交通当局 AMT と新たな契約を締結した。これにより、日立が世界に先駆けてジェノバ市に導入した、同市の公共交通インフラ全体を結ぶ「360Pass アプリ」の利用が、60 万人のジェノバ市民と、同市を訪問する年間 350 万人の観光客に開放される。

 1年間のトライアルを成功させた 360Pass アプリは、ジェノバで「GoGoGe」として知られており、市内のマルチモーダル交通に変革をもたらす。同サービスは、市内の公共交通機関と民間交通機関を連携させることで、ジェノバに住んでいる人やジェノバを訪れるすべての人に、複数の交通機関を利用した旅程の計画、予約、最安値の運賃の支払いを可能にする。8月から利用可能で、ダウンロードは完全に無料。

 同サービスにより、ジェノバでは、バス(663 台)、バス停(2,500 カ所)、地下鉄(年間利用者数 1,500 万人)、ケーブルカー(2 基)、登山鉄道(1 路線)、公共エレベーター(10 基)、郊外バス(2 路線、全長 50km)がデジタルで接続されている。

 利用者は携帯電話のボタンを押すだけで、電気自動車のレンタルや、駐車場料金の支払い、電動スクーターがどこにあるかの確認などもできる。

 360Pass アプリは、乗客が最速で最も便利なマルチモーダルな旅程の候補やリアルタイムの交通情報を提供する。また、乗客はアプリを通じてバスの混雑状況を確認し、混雑していない交通バスを選択することができる。

 この技術の価値を明確に示すために、日立が実施した 「グローバルにおける公共交通機関に対する意識調査」 によると、混雑状況に関するリアルタイム情報を見ることができれば、73%の人が公共交通機関を利用する可能性が高いことが分かった。

 このアプリにより、従来の紙のチケットを購入するために並んだり、異なる交通サービスのために複数のアプリをダウンロードしたりする必要がなった。

 360Pass は、乗り物や街中の駅や停留所に設置された 5Gブルートゥースセンサーで、モバイルアプリを利用した乗客がいつ搭乗し、どのくらいの距離を移動し、いつ降りたかを識別する。これにより、利用者は異なる交通手段を使用している場合でも、最安値の運賃を支払うことができる。

 同サービスの開始に加えて、トレニタリア社(Trenitalia/Ferrovie dello Stato=イタリア鉄道グループ傘下の鉄道事業会社)との新たなパートナーシップにより、アプリ利用者はジェノバの公共交通機関だけでなく、ローカル電車やインターシティ電車でも移動できるようになる。また利用者は、一週間の最安値の運賃で支払うことができるようになる。<日立製作所>
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●科学技術ニュース●国立極地研究所、北極ツンドラに生息する土壌微生物多様性のメカニズムを解明

2023-08-15 09:35:28 |    生物・医学
 国立極地研究所のWong Shu-Kuan特任研究員と内田雅己准教授を中心とする研究グループは、北極域に位置するカナダ・サルイットでの現地調査と、土壌微生物の遺伝子データ解析から、土壌細菌の群集構造と、その組成に影響を及ぼす要因について詳細に調査した結果、土壌細菌の多様性は、非生物的な要因よりも植生や微生物同士の関係性の影響を強く受けていることが明らかとなった。

 樹木が高く成長することができない北極ツンドラ域の土壌の中では、微生物が温度や水分など非生物的な要因からどのような影響を受けているかについて少しずつ明らかになってきているが、他の生物からどのような影響を受けているかについてはほとんど情報がなかった。

 土壌微生物は、土壌中の有機物を分解して温室効果ガスである二酸化炭素やメタンを生成したり、植物に栄養塩類を供給したりと、生態系の中で重要な役割を担っている。

 北極ツンドラでは、どのような微生物が存在しているのか、また、温度や水分、水素イオン濃度(pH)などの非生物的な要因と微生物の関係に関する研究は行われてきているが、微生物の多様性が生物的な要因も含めて、どのような要因によってコントロールされているのかというメカニズムについては、ほとんどわかっていなかった。

 今回、北極の低緯度に位置するカナダのサルイットにおいて、地形的に異なる尾根部(A)、谷部(C)、その中間部(B)の計225地点で、地表面の様子や植物、土壌温度、水分、炭素・窒素含量、pHなどを調査した。

 その結果、風が強く土壌が乾燥している尾根部では、砂礫や乾燥に強い地衣類・蘚苔類が地表面の大半を覆っているのに対して、風が弱く土壌が湿潤な谷部では、大半が維管束植物に覆われており、物理環境の違いが植物の分布や種の組成に影響を与えていることが分かった。

 次に、それぞれの調査地から採取した土壌細菌のDNA配列を解析し、地形、土壌温度、土壌水分、pHなどの非生物的要因と、土壌細菌の分布の関係を調べた結果、地形の違いによらず広く分布し幅広い環境条件に生息する細菌群「ジェネラリスト」と、特定の環境条件下でしか生息できない細菌群「スペシャリスト」、その中間的な細菌群「コモン分類群」に分類できた。

 また、尾根部、谷部、中間部から採取した細菌群の構造を調べたところ、「ジェネラリスト」は地形の違いによらず、含まれる細菌グループの相対存在量が似通っていたが、「スペシャリスト」は地形によって細菌グループの相対存在量が大きく異なることも示された。

 同研究は、北極の低緯度のツンドラ域における微生物群集の形成に植物が果たす重要な役割を明らかにするもの。一方で土壌微生物は、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの発生や植物へ栄養を供給するなどの重要な役割を担っている。植物やその他の要因が微生物群集にどのように影響するのか、また、微生物がそれに応答した結果、植物や周囲の環境がどのように変化するのかという相互作用を理解することで、ツンドラ域の生態系の機能に関する重要な知見を得ることができ、地球規模の環境変化に対する変化や応答をより正確に予測することができるようになることが期待される。<国立極地研究所>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「ワイヤレス電力伝送技術の研究開発と実用化の最前線<普及版>」(篠原真毅ほか著/シーエムシー出版)

2023-08-15 09:35:00 |    電気・電子工学



<新刊情報>



書名:ワイヤレス電力伝送技術の研究開発と実用化の最前線<普及版>

監修:篠原真毅

筆者:篠原真毅ほか

発行:シーエムシー出版

 2016年刊「ワイヤレス電力伝送技術の研究開発と実用化の最前線」の普及版。ワイヤレス給電について、携帯電話や医療機器などのデバイスから自動車まで、国内のみならず海外の応用事例も広く紹介した1冊。
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