“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「「協力」の生命全史」(ニコラ・ライハニ著/東洋経済新報社)

2023-08-08 09:33:05 |    生物・医学



<新刊情報>



書名:「協力」の生命全史~進化と淘汰がもたらした集団の力学~

著者:ニコラ・ライハニ

訳者:藤原多伽夫

発行:東洋経済新報社

 ・多細胞生物が誕生したのは「協力」が利益をもたらすためである・ミツバチやアリのコロニーは「超個体」のように振る舞う・母親と胎児は栄養分をめぐって争う・姑が嫁の子育てを手伝うのにはわけがある・詐欺やたかり、汚職や賄賂、身内びいきも協力の産物である・パラノイア(妄想症)や陰謀論の背後にある進化論的な理由・平等主義だった人類の社会に独裁制が誕生したのはなぜか?・集団の人数が増えると反乱は起きにくくなる【目次】 第1部 「自己」と「他者」ができるまで 第1章 協力を推し進めるもの 第2章 個体の出現 第3章 体のなかの裏切り者第2部 家族のかたち 第4章 育児をするのは父親か母親か 第5章 働き者の親と怠け者の親 第6章 人類の家族のあり方 第7章 助け合い、教え合う動物たち 第8章 長生きの理由 第9章 家族内の争い 第3部 利他主義の謎 第10章 協力の社会的ジレンマ 第11章 罪と協力 第12章 見栄の張り合い 第13章 評判をめぐる綱渡り 第4部 協力に依存するサル 第14章 他人と比較することへの執着 第15章 連携と反乱 第16章 パラノイアと陰謀論 第17章 平等主義と独裁制 第18章 協力がもたらす代償
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●科学技術ニュース●積水ハウス、自宅で水素を製造・貯蔵・使用できる電力自給自足住宅の実証実験を開始

2023-08-08 09:32:31 |    ★水素ニュース★
 積水ハウスは、太陽光発電による再生可能エネルギーの電力を用い、自宅で水素をつくり、住宅内の電力を自給自足する住宅メーカー初の水素住宅の2025年夏の実用化を目指し、2023年6月から同社総合住宅研究所で実証実験を開始した。
 
 地球温暖化やエネルギー需給構造の変動から、脱炭素とエネルギー安定供給を両立する未来を担う新たなエネルギーである水素の利活用が進んでいる。しかし、国内外のインフラ・サプライチェーンの整備・構築などに鑑みると、各住戸に水素が届くのは2050年以降であると言われている。そこで同社は、持続可能な社会の実現のため「水素が手元に届く時代の到来を待つのではなく、自ら水素を作り活用し、脱炭素化を推進すべき」との考えのもと、同実証実験を実施し、家庭での使用環境を見据えた安定・自立運転の検証、商品化に向けた課題整理を行う。

【水素住宅のシステム構成概要】

①日中は自宅の屋根の太陽光発電パネルでエネルギーをつくり消費
②太陽光発電の余剰電力で水を電気分解して水素をつくり、水素を水素吸蔵合金のタンクで貯蔵
③雨の日などの日射不足時や夜間は貯蔵した水素を利用して燃料電池で発電

 この水素住宅の開発は、太陽光発電(再生可能エネルギー)の電力による水素の製造も、その水素を用いた燃料電池による発電もCO₂が一切発生しない、日常生活におけるゼロカーボン化と電気の自給自足の実現を目指す。
 
 同社は戸建住宅のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)比率が2022年度に93%、賃貸住宅「シャーメゾン」の住戸ZEH比率65%、分譲マンションの住戸ZEH比率88.8%となるなど、環境性能向上に業界に先んじて取り組んできた。現在のZEHの仕組みに新たに水素の利活用を組み込むことで、環境性能や利便性、レジリエンス性等を向上させることが期待できる。積水ハウスは “「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンのもと、ESG経営のリーディングカンパニーを目指し、持続可能な社会の構築に貢献する。<積水ハウス>
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●科学技術ニュース●JAMSTEC、地球史で最も長い周期の海水準変動が海洋底の「平坦化」の効果で説明できることを大陸移動の理論モデルにより解明

2023-08-08 09:32:08 |    宇宙・地球
 海洋研究開発機構(JAMSTEC)海域地震火山部門の吉田晶樹主任研究員は、大陸の離合集散や超大陸の形成の繰り返し(超大陸サイクル)を考慮した理論モデルにより、地球史で最も長い時間スケールの海水準変動の原因を調べた結果、地質学的研究から推定されている、地球における約2~3億年周期の海水準変動を復元するためには、海洋底観測で古くから知られている、海洋プレートがある年代(海嶺で生成されてからおおよそ6000万~8000万年)より古くなると海洋底(水深)が一定の深さに緩やかに推移する、いわゆる「フラットニング(平坦化)」の効果が重要であることがわかった。

 いくつかの先行研究から、海洋プレートのフラットニングは、マントルの大規模な対流運動によって海洋プレートそのもの、つまり、海洋底が持ち上げられるために起こっている可能性が指摘されているため、同研究の結果は、固体地球の内部変動と地球表層の環境変動との関係について新しい研究の枠組みを与えるものと考えられる。

 地球史において海水準変動の最も長い約2~3億年の周期は、「第一次海水準変動」と呼ばれている。この第一次海水準変動によって、海水面の高低差が±数100メートルも時代変動すると、大気中の二酸化炭素濃度や海洋・大気の循環が変化し、やがては気候や生物種など、地球の表層環境に大きな影響を与える。

 したがって、超大陸サイクルと第一次海水準変動との周期の関係性を深く調べることは、過去の地球のみならず未来の地球表層の長期的な環境変動を予測する上でも重要。<海洋研究開発機構(JAMSTEC)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「動かして理解する 第一原理電子状態計算<第2版>」(著/前園 涼、市場友宏)

2023-08-08 09:31:45 |    化学



<新刊情報>



書名:動かして理解する 第一原理電子状態計算<第2版>~DFTパッケージによるチュートリアル~

著者:前園 涼、市場友宏

発行:森北出版

 今日の材料科学に欠かせない第一原理電子状態計算。手法やパッケージが整備され、シミュレーションを専門とする研究者でなくても扱えるツールになってきている。同書は、実験系研究者などの「具体的ミッションをもつ初学者」がいち早く第一原理電子状態計算を実務で扱えるようになるための入門書。長年「第一原理計算チュートリアル」を実施してきた著者が、その概念と実務をわかりやすく丁寧に解説。密度汎関数法(DFT)の無料パッケージQuantumEspressoを動かしながら、押さえるべき勘所を体得する。Linuxコマンドの扱い方から、論文に記載すべき重要なパラメタの設定法、さらには、マテリアルズインフォマティクス時代の研究体制構築のポイントまで、効率よく学べる。第2版では構成を一部見直し、Linux初心者により配慮した内容になった。また、ソフトウェアやOSのアップデートに対応するためのサポートページを用意した。
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