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●科学技術ニュース●核融合科学研究所など、35GHz低周波数ジャイロトロンシステムの性能試験で3秒間の1MW級での出力を実現

2024-01-25 09:36:11 |    エネルギー
 京都フュージョニアリング(KF)、核融合科学研究所(National Institute for Fusion Science:NIFS)、筑波大学、英国原子力公社(UK Atomic Energy Authority:UKAEA)およびキヤノン電子管デバイスの国際産学共同研究グループは、35GHz低周波数ジャイロトロンシステムの性能試験において、60GHz以下の低周波数ジャイロトロンでの最大級かつ最長級となる3秒間の1MW級での出力を実現した。

 大型核融合炉であるITERやJT-60SA向けに開発されているジャイロトロンシステムは、電子の回転周波数に合わせて共鳴させる100GHz以上の高周波数のものが主流で、電子サイクロトロン加熱により炉心を加熱する。

 しかし、MAST Upgradeをはじめとする球状トカマク装置においては、その特徴から電子サイクロトロン加熱が難しいため、電子バーンスタイン波という比較的低周波数で高密度プラズマの電子を加速し加熱できる別の方式を取り入れる必要がある。

 そこで、プラズマ加熱実験のために1台のジャイロトロンで28GHzと35GHzが発振できる1MW級低周波数ジャイロトロンシステムを新たに開発することになった。

 筑波大学のノウハウをもとに、ジャイロトロン本体からビームを出力するためのジャイロトロン内部に設置しているミラーと、ジャイロトロン本体から発生したビームを炉心プラズマに伝送するための導波管へ誘導する準光学的結合器(MOU)内のミラーをそれぞれ大きくするとともに、2つのミラー間の距離を可能な限り近づけるように、システムを設計した。

 ミラーを大きくすることにより、発散しやすいビームの伝送損失を最小限に抑え、またミラー間の距離を縮めることで伝送損失や放電を軽減させることが期待できる。

 これらの設計を微調整しつつ、ジャイロトロン本体を稼働させるために高電圧電源や、ビームを発生させるために必要な磁場を形成する超電導マグネットのパラメータを調整しながら、性能試験を重ねた。

 今回、このジャイロトロンシステムの性能試験において、35GHzの低周波数で3秒間の1MW級(ダミーロードでの計測で930kW)の出力を実現した。

 大電力電磁波ビームの発散が大きな課題である35GHzの比較的低周波の領域で、秒レベルのMW級での出力を達成したことは、小型核融合炉開発における大きな貢献となる可能性がある。

 また、再現性と安定性の観点でも高い性能を確認し、合計20回の出力のうち19回は同等の数値での出力に成功した。加えて10回連続の出力でも同等の数値を確認し、信頼性の高い結果を得ることができた。

 このジャイロトロンはUKAEAへと渡り、オックスフォード近郊のカルハムに位置する球状トカマク装置MAST Upgradeにて使用される予定。ここではUKAEAが主導する核融合プラント開発プログラム「STEP(Spherical Tokamak for Energy Production)」に貢献する実験が行われる。<核融合科学研究所(NIFS)>
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