谷啓さん追悼で

2010-09-29 10:10:39 | 塾あれこれ
谷啓追悼として是枝監督『ワンダフルライフ』が流れました。

なぜこの映画なんだろう?
一応ビデオに撮っておきました。


著名な監督とは知っていましたが近年の邦画は
見る気になれず、実は是枝作品も見たことがない!
・・・など、映画好きもここまで落ちますかねえ。
我ながら情けない。

もちろんたまに見た邦画のレベルが低かったことも
最近見ない理由です。
それなら昔の映画を見返すほうが楽しいですから。


『ワンダフルライフ』は外国で評価され受賞も多く
確かに、なかなかの作品でした。

タルコフスキーやニキタ・ミハルコフ、あるいは
三部作のころのホウ・シャオシェンを思わせる
才能ぶりですね。
(彼らにはまだ及ばないけれど)

ARATAや伊勢谷友介の映画初出演作でもあります。

人生を振り返るとは、という主題をメルヘン風に
処理した、映画です。
静かに美しい。
そのセンスは邦画離れしています。

「む~、どんどん新しい才能が出ている」などと十年前の
映画に感心した次第です。(笑えヨ~)

伊勢谷友介(龍馬伝の高杉晋作)が良いですね。
(達者というか、深く掘り下げる人なのだ)


谷さんの話でした。

ネットで、この映画の谷さんはフツー、と書いておられる
人を見かけましたが、私は意見が違います。

とても良いですね。

端麗な銘水のごとき存在感で、何もしていないように
見える人もいるでしょう。

オットドッコイ

私の意見を聞いてつかあさい。


この映画ではプロの俳優や素人の方が沢山登場され
「わが人生の最良の思い出」を話されます。

すると当然ながら素人さんの方が「本当」

役者さんは演技をしているので、どうしても
嘘っぽく見えてしまいます。

役者が本当のことを語っている場合もあるでしょう。

ただ、そこにもどこか演技がある。

徹子の部屋で話すゲストにどこか気どりや演技があるのと
同じです。


横道にそれますが
外国映画を見て感動するのは役者を知らないから
リアルに見えると云う事がありそうです。

映画を作る人が画面に込めた部分だけを見ますから。

逆に、私が邦画に乗れないのはそれがあるからでしょう。

他ではこんな演技をしていた、とかスターとしてこんな
イメージがある、とか画面以外の事が足を引っ張ります。

また「どうせ演技だろ」という気持ちもあります。
「上手い演技をしているなあ」もあります。
演技を意識させられてしまうのですね。


この映画でも素人と役者の温度差を感じてしまい
いまひとつ乗れない部分があります。
外国の人はそれがないでしょうから、とてもリアルに
映画に引き込まれるのです。


そのワザとらしさをほとんど感じさせないのが
この映画の谷啓。

是枝監督が選んだはずです。

そこで追悼番組にも採用された。


思うに谷啓の一番のよさがこのバランスなのです。
他に代え難い。

普通、役者は演技をした部分を見てもらいます。
観客の前に、「演技」を出して見せます。

谷さんはそうではありません。

いつでも谷さん。 あのキャラクター。

何もしていないように見せて、谷さんの演技は
彼の向こうに人物が浮き上がるのです。

能や狂言、場合によっては古典をやる歌舞伎役者
そういう類の芸と似ています。
茂山千作さんはいつでも何を演じても千作さん。
ですが千変万化される。

役者の顔の向こうに、彼の個性の向こうに、
作品世界が広がるので却って自然に映るのです。
演技で偽るということをしないから。
(これを映画やTVでするところが谷啓のスゴサ)


反対に熱演型の役者さんは一般に受けます。
すごいなあ、上手い演技だなあ、と。

竹○○人、香○照○などなど。
シツコイよね。ドロクサイ。

演じている向こうに役者が覗いて「どうだ、上手いだろ」

私は好みません。
高校の学芸会じゃあるまいし。


近年、数すくない名人が亡くなられました。

日本人が忘れかけているシャイな文化。

寂しいですねえ。