語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【堤未果】米国社会の変質 ~ミズーリ州の武装警察~

2014年09月16日 | 社会
 8月9日、米国ミズーリ州セントルイス郡ファガーソンで、黒人少年マイケル・ブラウン(18歳)が警官に射殺された。
 同地区は、人口わずか21,000人のうち6割を黒人が占める。他方、地元警察官の9割を白人が占める。・・・・①
 米国の予算不足に苦しむ自治体は、収入を交通違反の罰金に頼るケースが少なくない。・・・・②
 歪んだ経済的動機②を根深い人種差別①が後押しし、黒人住民への職務質問が圧倒的に多い(現実)。・・・・③
 そうした警察のやり方③に、住民は日ごろから不満を溜めていた。加害者の白人警官が無罪となったことをきっかけに、住民の怒りが爆発した。激化する抗議デモは、略奪にまで発展した。ニクソン州知事は非常事態宣言を発動した。

 「ロドニー・キング事件」(ロサンゼルス、1992年)では、複数の白人警官が1人の黒人(建設作業員)を暴行した動画が拡散したことをきっかけに、抗議デモが略奪に発展した。
 8月9日の事件とよく似た事件だが、一つだけ大きく違う。事件の直後に繰り広げられたデモ鎮圧の光景だ。ファガーソンの警官は、戦闘服を着用し、アサルトライフル銃で武装し、デモ隊に次々にゴム弾、催涙ガスを使用。最後は装甲車で住民を排除した。

 ワシントンポスト紙とハフィントンポスト紙の記者2人は、マクドナルドからの退去命令に即座に従わなかった、という理由で警察の特殊部隊に逮捕された。この経緯を自身のブログやツイッターで拡散。その証言によれば、武装警察は、拡声器で、これ以上の集会を禁止し、従わなければ逮捕する、と威嚇した。
 記者たちが動かないでいると、やがて耳をつんざくような音が響き渡った。通常は戦場で敵に向けて使用される音響兵器「LRAD」であった。

 9・11以降、米国政府は「テロとの戦い」を理由に、全米各地の警察に武器購入の助成金を提供し、警察の軍事化を促進してきた。
 その結果、過剰な軍備の矛先はテロの脅威に対してではなく、地域の住民に対して向けられている。
 今回の事態を目撃したある下院議員は、政府による地方警察への武器供給を規制する法改正を提案した。しかし、いまやテロ対策予算は莫大な利権と化した。歯止めは果たして可能か。

 ファガーソン武装警察による住民や記者への暴挙は、瞬く間にネットで拡散された。全米各地で警察の暴力に対する抗議デモが再燃し始めた。
 警察の暴力の被害者(住民)の一人はいう。
 「これは全米で起きている非常に深刻な事態の、氷山の一角だ。今はまだこうして市民が現場から動画などで真実を伝えられるが、やがてその手段も取り上げられるかもしれない」
 この危惧は誇張ではない。
 カルフォニア州議会は今月、スマートフォンに遠隔停止機能搭載を義務づける「キルスイッチ」法を通過させた。
 今年、公民権運動50周年を迎える米国で、キング牧師が憂慮した人種問題は、今、別の目的に向かって歪められ、権力を暴走させている。
 
 翻って、国連人権委員会からヘイトスピーチ規制勧告を受けた日本政府内では、何故か、3・11直後から続いている官邸前デモを取り締まる法改正を目論む声があがっている。
 規制対象の定義、警察権限の拡大が、一歩踏み外すといかなる結果をもたらすか、まだ検証されていない。
 11月に施行する「特定秘密保護法」が大きな法的権限を付与している公安の位置づけも定かではない。
 ミズーリ州において露呈した米国社会の変質は、もはや日本にとって無縁ではない。

□堤未果「米・黒人少年射殺に見る--「テロ対策」を名目にした警察権力拡大が止まらない」(「週刊現代」2014年9月20・27日号)
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【米国】大学の負債が拡大、学費が高騰、学生と親にしわ寄せ ~学生ローン~

2014年09月15日 | 社会
 大学を出て20年以上経っても、学生ローンをまだ完済していない・・・・というのは日本だだけではない。米国にもザラにいる。オバマ大統領(53歳)が学生ローンを完済したのは、大統領就任の4年前だった。

 米国の大学の学費は、いったいいくらくらいなのか。最新の全米大学ランキング(米誌「USニューズ&ワールドレポート」)によれば、ランキング1位以下の2013~14年度の全学部平均学費は、
  (1)私立プリンストン大学・・・・40,170ドル(約425万円)
  (2)ハーバード大学・・・・42,292ドル
  (3)イェール大学・・・・4,4000ドル
  (4)コロンビア大学・・・・49,138ドル
  ・・・・
  (20)カルフォニア大学バークレイ校・・・・12,864ドル(日本の私立大学文系並み、ただし授業料のみ。寮費や教材費として1万ドル以上をさらに支払う)

 なぜ、ここまで高額なのか。
 理由1・・・・受験者数と定員数のアンバランス。高い学費に構わず、名門大学の「狭き門」に学生たちは殺到する。
 理由2・・・・大学の経営状態の悪化。施設の充実を名目に高額の出費を続けた結果、負債が膨らみ、全米の3校に1校の大学が業績悪化に見舞われた。そのしわ寄せを学生がかぶっているのだ。
 大学側が、学費を高く支払う州外の学生や海外留学生を優先的に合格させる傾向も、ここ数年間で拍車がかかった。

 学費高騰のため、学費補助(家庭の支払能力によって支給される)を受けようと、確定申告前に慌てて離婚して世帯収入を減らす「駆け込み離婚」まで発生している。事態は深刻なのだ。

□福田恵子(ジャーナリスト)「学費が高額で「駆け込み離婚」も 米国で大学の負債が拡大、“しわ寄せ”は学生に」(「週刊金曜日」2014年9月12日号)
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 【参考】
【ブラック企業】奨学金という貧困ビジネス ~学生の苦難(3)~
【ブラック企業】全身就活 ~学生の苦難(2)~
【ブラック企業】ブラックバイト ~学生の苦難(1)~

【ブラック企業】大賞2014 ~(株)ヤマダ電機が2冠を獲得~

2014年09月14日 | 社会
 「ブラック企業大賞」【注1】は、労働者に劣悪な労働を強いる企業を“表彰”する【注2】。
 9月6日、同実行委員会主催の授賞式が東京・千代田区で開催され、家電量販店の「(株)ヤマダ電機」が《大賞》を受賞した【注3】。同社は、当時23歳の社員を“名ばかり管理職”として扱い、2007年9月に過労自死させた。

 多数の企業がノミネートされたが、(株)ヤマダ電機の場合、2004年にも当時29歳の契約社員が上司から罵倒を浴びて自死し、2005年に遺族が提訴している。さらに、厚生労働省の定める「過労死ライン」に相当する店長が、2013年9月現在46人にも上る、とする内部文書の存在も報じられるなど、多数の要因が受賞の決め手になった。
 (株)ヤマダ電機は、《ウェブ投票賞》(インターネットなどからの一般投票によって決まる)でも選ばれ、昨年の「ワタミフードサービス(株)」に続く2冠獲得となった。 

 他の部門では、
《業界賞》
  「(株)A-1 Pictures」(アニメーション制作会社)・・・・違法な長時間労働が野放し。
  「(株)不二ビューティ(たかの友梨ビューティクリニック)」(エステティックサロン)・・・・同上。
《要努力賞》
  「(株)ゼンショーホールディングス」(すき家、ゼンショー)・・・・第三者委員会が、深夜のワンオペ(一人勤務体制)の解消など労働環境の改善を要求。
《特別賞》
 「東京都議会」・・・・今年6月、女性議員への差別的な野次が問題になった東京都議会については、企業においてセクハラが放置されるのと同様の構図がある。

 なお、実行委員会は、7月末に候補を発表したが、その後
  ①ゼンショーについて、第三者委員会報告書の内容が明らかになった。
  ②(株)不二ビューティについて、組合活動を理由に社員が圧力をかけられていた。
 ・・・・といった事実が発覚したため、9月2日に緊急追加した。

 【注1】「ブラック企業大賞

 【注2】
【ブラック企業】大賞2014 ~候補決定~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~

 【注3】田中龍作「ブラック企業大賞 今年はヤマダ電機」(「BLOGOS」2014年09月06日)

□古川琢也(ルポライター)「第3回「ブラック企業大賞2014」決まる (株)ヤマダ電機が2冠を獲得」(「週刊金曜日」2014年9月12日号)
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 【参考】
【ブラック企業】大賞2014 ~候補決定~
【ブラック企業】を残業代ゼロが促進 ~竹中平蔵パソナ会長向け成長戦略~
【ブラック企業】対策プロジェクトが成功した要因 ~社会運動と言説~
【ブラック企業】連帯の極小サイクル ~社会の底でせめぎ合う情念~
【ブラック企業】の定義は社会運動がつくりあげた ~言説~
【【ブラック企業】が社会問題として認知されるまで ~社会運動~
【ブラック企業】赤字49億円! 「瀬死」のワタミから人もカネも消えた
【ブラック企業】奨学金という貧困ビジネス ~学生の苦難(3)~
【ブラック企業】全身就活 ~学生の苦難(2)~
【ブラック企業】ブラックバイト ~学生の苦難(1)~
【ブラック企業】激変する若年労働者市場 ~労使間の話し合いが不可欠 ~
【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~
【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~
【ブラック企業】対策講座 ~就活~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~
【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~


【料理】野菜料理のコツ ~美味な「ポテトサラダ」の作り方~

2014年09月13日 | 生活
 中年でメタボになってしまった夫を気遣い、妻がたんねんに作った野菜料理をたくさん夕食のテーブルに並べると、肉が好きな夫が怒り出す。
 家庭でよくありそうな光景だ。

 野菜料理というとサラダをすぐさま思い浮かべ、「サラダなんかでお腹が膨らむわけがない」と思いがちだ。
 しかし、野菜料理はサラダ以外にも素晴らしい広がりがあり、本当はとても奥深い世界だ。
 <例>根菜まで含めると、けんちん汁はとても食べごたえがある。・・・・ダイコン、レンコン、ニンジンなどをごま油で炒め、だし汁と薄口醤油で味付ける。
 <例>ガツンとくる夏の揚げ料理・・・・ゴーヤを厚めに輪切りにし、苦いワタの部分もそのままにしてフライにする。
 <例>ラタトゥイユ・・・・夏野菜をニンニクと一緒に塩味で炒め蒸し、ローズマリーで香りをつけた南仏料理。これとフランスパン、すっきりした赤ワインだけでかなり満足できる夕食になる。

 野菜は保存が簡単だ。冷蔵庫の野菜庫に入れておけば、たいてい1週間ぐらいは軽く保つ。
 その点、肉は面倒だ。日にちがたつとすぐ傷むし、冷凍にすると解凍する手間が面倒だ。

 野菜で唯一たいへんなのは、調理に工夫をこらさないと美味しく食べられない点だ。豚こま肉ならフライパンで炒めて醤油をかけたぐらいでも十分楽しめるが、野菜だと包丁で切らなきゃいけない。味つけもマヨネーズばかり、というわけにはいかない。
 蒸してから焼いたり、塩で揉んでから絞ったり、薄く小口切りにしたり・・・・けっこういろんな技術や手間が必要だ。
 しかし、そういうハードルを乗り越えれば、野菜料理の面白さが分かってくる。

 「ポテトサラダ」のコツ・・・・野菜料理に慣れていない人でもビックリするぐらい美味しくなる。
 ポテトサラダの最大のポイントは、マヨネーズをからめる前、熱々のジャガイモにまず下味をつけてしまうことだ。
 ジャガイモを柔らかく茹でて皮をむき、ボウルに入れてマッシャーで潰す。
 オリーブ油、塩、酢を加えて味をつけておき、最後にマヨネーズを少々からめる。
 具材は、タマネギ、キュウリ、セロリ、ニンジンなど。スライスして塩もみして、水気を絞る。
 「豆腐の白あえ」のように、野菜が中心で、ジャガイモがソースとしてからんでくる程度・・・・という具合に作ると、品がよい感じになる。

□佐々木俊尚「基礎調味料さえあれば、エコで経済的で、お得です ~オヤジの家めし9~」(「週刊金曜日」2014年9月5日号)
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 【参考】
【料理】バブルが産んだのは外食だけ ~家庭料理のコツ(一例)~
【料理】基礎調味料だけでエコかつ経済的に ~回鍋肉で実践~
【料理】1日2食でも十分なワケ ~肥満防止~
【料理】2つのポイント ~片付けの技術~
【料理】毎日もちっとも面倒くさくない ~手抜きの技術~

【食】市販品には添加物が多数 ~鮭フレーク~

2014年09月12日 | 生活
 サケは、年間消費量が世帯あたり3,026g(2人以上の世帯、2011~2013年平均)、2010年度の一人あたり購入数量はイカやマグロを抑えてトップとなった人気魚だ。
 生では塩焼き・ムニエル・フライなど、加工食品では新巻・塩鮭・燻製などに利用される。
 サケのフレーク(薄片・小片の意)も家庭で作ることができる。道具も添加物も一切必要がなく、誰でも簡単に作ることができる。
 しかし、これを購入すると、添加物がたくさん付いてくる。市販「鮭フレーク」に共通して使用されている食品添加物は、(1)「調味料(アミノ酸等)」と(2)「着色料」だ。
 
 (1)調味料(アミノ酸等)は、多くの加工食品に使われ、一括表示が認められている。構成成分によって、
  (a)アミノ酸
  (b)核酸
  (c)有機酸
  (d)無塩酸
の4つに分類され、アミノ酸を構成成分とする(a)は、主にグルタミン酸Naを主体にイノシン酸などを混ぜ合わせて作られる。
 グルタミン酸Naは、微生物を廃蜜糖【注】で増殖させる「発酵法」で製造したグルタミン酸を、水酸化ナトリウムで中和して作られる化学物質だ。
 1960年代の頃、社会問題になった「中華料理店症候群」は、グルタミン酸Naが引き起こした健康被害だ。腕や首のしびれ、ふるえ、興奮などが生じた。その後多量使用が改善されたことで顕著な症例は出ていない。しかし、焦げたものから発癌物質が生じるという報告があるし、あらゆる加工食品に添加されているから、危険度は依然として高い。
 
  【注】サトウキビなどから砂糖を取った後の黒褐色の液体。

 (2)着色料には、次のものがある。
  (a)赤102と黄5・・・・化学合成のタール系色素
  (b)紅麹とカロチノイド・・・・天然系色素
 タール系色素は内蔵障害や発癌性の疑いなどで多くの諸外国では禁止されている。にもかかわらず、日本では依然として菓子・漬物・魚介・畜産加工食品への使用が許可されている。
 黄5は、喘息やじんましんを引き起こす、と指摘されている。
 特に、合成着色料は子どもの脳に障害を与え、多動症や学習障害を引き起こす、という報告もある。【ベン・F・フィンゴールド博士(米国・小児科医)】

 (3)タンパク加水分解物は、より複雑なうま味を求める企業と消費者が生み出した物質だ。
 安全性に問題があるにもかかわらず、調味を目的に使用されるという理由で、添加物ではなく食品扱いとなっている。
 タンパク質を分解してアミノ酸を取り出す際の製造法には、
  (a)塩酸分解法
  (b)熱水抽出法
  (c)酵素分解法
があり、一番多く用いられているのが低コストの(a)だ。だが、(a)では発癌性の疑われるクロロプロパノール類の少量発生が報告されている。

 (4)乳化剤、酸化防止剤は、一括表示の添加物だ。
 ソルビットの多量摂取は下痢を引き起こす。  
 溶剤を用いて搾り取られる植物油にはトランス脂肪酸含有の危険性も潜んでいる。 

□沢木みずほ(みずほ・薬食フードライフ研究家)「鮭を焼いてほぐすだけの「鮭フレーク」 市販品よりお手製が安心なのよ」(「週刊金曜日」2014年9月5日号)
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【料理】バブルが産んだのは外食だけ ~家庭料理のコツ(一例)~

2014年09月11日 | 生活
 1970年代までと比べると、それより以降の日本の外食は、とても豊かになった。
 バブル経済の1980年代末、社会の金回りがよくなったことで、都心にはそれまで見られなかったフレンチやイタリアンのレストランがたくさん出現した。エスニック料理(タイやベトナムなど)が普通に食べられるようになったのもこの頃からだ。それまで、フレンチやイタリアンは一部の富裕層のものだった。庶民は居酒屋や大衆食堂しか選択肢がなかった。

 じつはバブルが盛り上げたのは、外食「だけ」だった。
 家庭料理については、この頃から「**の素」みたいな半調理品や冷凍食品がすごい勢いで普及し、さらにコンビニ弁当やスーパーの総菜も普通に買われるようになって、家庭料理がどんどん衰退していった。
  (1)新聞で「標準家庭」と呼ばれていた「専業主婦と子ども二人」の家庭が少なくなって、たいていの夫婦は共稼ぎになった。
  (2)単身家庭が増えた。
 といったことも家庭料理があまり作られなくなった要因かもしれない。
 (1)や(2)のニーズに合わせるようにして、さらにコンビニ弁当や半調理品が進化・・・・という循環が起きてしまった。

 この頃から朝食は、「ご飯と味噌汁」や「トーストと目玉焼き」ではなく、前日に買っておいた菓子パンをただテーブルに並べておいて、起きてきた家族が順ぐりに勝手に好きなものをとって食べる・・・・といった信じられない食生活があちこちで見られ、家庭料理が崩壊する危機が叫ばれた。

 危機的状況は今もあまり変わっていないようだ。
 一方、家庭料理は次の二極に分化しつつあるみたいだ。この二極化も現代の格差社会の一側面だろう。
  (a)新たな層・・・・最近の若者の中には、男女を問わず料理好きで、週末ともなるとファーマーズマーケット【注】に立ち寄るのが楽しみというような層が都市部で目立つようになった。事実、東京の青山や代々木などで週末に開催されるファーマーズマーケットは、どこも大賑わいだ。
  (b)家庭料理は放棄してしまった(放棄せざるをえない状況に追い込まれてしまった)層。
 
 日本の伝統的な家庭料理に、「油揚げと小松菜の煮びたし」がある。
 じっくり煮た油揚げと、しゃきっとした小松菜の食感の組み合わせがこの料理の最大のポイントだ。
 小松菜・・・・水を出しっぱなしにしてボウルの中で振り洗いし、冷たい水に10分ほど活けておく。
 油揚げ・・・・昆布とかつお節でだしを引き、うすくち醤油と塩少々を加えて、大きめに刻んだ油揚げを弱火でじっくり煮る。質のよい油揚げなら、油は抜かないほうが旨い。
 小松菜をざっくり刻んで、油揚げの鍋に投入し、ほんの15秒だけ加熱する。
 深い皿にこんもりと盛って、まわりに煮汁を流し込む。

 【注】農家が都市などで直接消費者に産品を売る市場。

□佐々木俊尚「バブルが産んだのは外食だけ 日本の「食」は豊かになった? ~オヤジの家めし8~」(「週刊金曜日」2014年8月29日号)
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 【参考】
【料理】基礎調味料だけでエコかつ経済的に ~回鍋肉で実践~
【料理】1日2食でも十分なワケ ~肥満防止~
【料理】2つのポイント ~片付けの技術~
【料理】毎日もちっとも面倒くさくない ~手抜きの技術~


【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~

2014年09月10日 | 社会
 9月3日、内閣が改造され、石破茂が地方創生担当大臣に就いた。
 2015年4月の統一地方選に向けて、地方再生は安倍政権最大の課題だ。
 自民党は地方に強い・・・・と一般には信じられている。
 しかし、地方における自民党支持は必ずしも盤石ではない。 

 安倍政権の支持率が高いのは、アベノミクスへの期待が高いからだ。大胆な金融緩和(第一の矢)で円安を実現し、輸出企業の利益を拡大して株価を上げた。これによって都市部や大企業を中心にボーナス増加などで所得が増え始め、景気がよくなるのではないか・・・・という期待が膨らんだ。
 しかし、ここへ来て、物価上昇が庶民の家計を直撃し、消費不振で腰折れするのではないか・・・・という懸念が出てきた。
 頼みの綱が成長戦略(第三の矢)なのだが、「フィナンシャルタイムズ」紙は 
 「アベノミクスの三本の矢は見せかけだけで、第一の矢しかなかった」
と断じ、今後は第四の矢が、
 「軍国主義の復活」にならないよう願う
と揶揄した。

 有力海外メディアも愛想を尽かすほどだから、国民が疑い始めても全く不思議ではない。
 わけても今回は、地方においてその懸念が大きい。

 ①全国平均と、②東京において、①より②の方が物価上昇率が高い・・・・というのが、これまでの普通の感覚だ。
 しかし、最近は、②より①の上昇率の方が0.5%以上も高い。その原因は、ガソリンと灯油の購入額だ。この2つの消費支出に占める割合は、①が②の3倍になっている。
 円安によって、ガソリンや灯油の価格は前年同月比で10%程度上がっている。地方ではその影響が①の3倍。冬になればさらに拡大する。

 地方の賃金上昇は、都市部より小さい。
 その上、ガソリン・灯油の値上げが追い打ちをかける。
 まさに、踏んだり蹴ったりだ。
 安倍政権の支持率が下がっても不思議ではない。

 さらに、集団的自衛権行使容認の閣議決定(7月)は、実は、地方で評判が悪かった。全国紙と違って、地方紙は殆どが集団的自衛権行使容認に反対だった。
 このままでは、地方で自民党支持率が大きく下がる恐れがある。
 そこで打ち出されたのが「地方再生」だ。
 だが、今のところ何の智恵も見られない。予算要求では、結局は次の2つだけだ。
  (a)公共事業のバラマキ
  (b)申し訳程度の中小企業予算

 しかし、いま(a)をやっても意味がない。
 何故か。

 (1)公共事業のバラマキはすでに2年目に入り、労働力の需要が供給能力を上回っている。これ以上増やしたところで、単価が上がるばかりで実際に工事量が増えるのはわずかだ。工事量が増えたとしても、それは単価アップで採算が取れなくなった民間の工事がその分減っている、ということにすぎない。

 (2)しかも、(a)で橋や道路やハコモノを大量に作ると、将来、その維持修繕などに莫大な費用が必要になる。その結果、地方財政が破綻に近づく。
 また、本来は、農業、自然エネルギー、観光など魅力ある職場を作るべきなのに、公共事業中毒になった地域ほど、その知恵を自治体が出せなくなる。

 (3)公共事業は、数年単位のプロジェクトだ。働く人は、それを転々と渡り歩く。魅力的な職場とは言えない。
 その結果、若者が都市に流出して地方の高齢化が進み、最終的には消滅の道が待っている。

 (4)今回も、「地方再生」という美名の下に、確実に地方衰退の政策が実施される。むろん、各省庁の利権拡大の絶好の機会だ。
 いつものように、バラマキ予算の」の「表紙」を替えて、「新規要求」する官僚の得意技がいたるところで目撃されるだろう。

□古賀茂明「地方創生は地方衰退への道? ~官々愕々第123回~」(「週刊現代」2014年9月20・27日号)
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 【参考】
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~



【米国】国民皆保険という美名の裏で大増税開始 ~オバマケア~

2014年09月09日 | 医療・保健・福祉・介護
 2013年10月1日、米国では適正価格医療保険制度【注1】のネット登録が始まった。
 オバマケアは、民間医療保険の購入を全国民と企業に義務づける。
 反対する共和党が同法の修正を予算案の合意条件としたため、政府機関の一部が閉鎖された。

 すでに国民皆保険制度を持つ日本では皆保険に反対する共和党に対する批判が多い。その批判は正しいか?
 オバマ政権とマスコミは、正確な中身を国民に説明しないまま法案を通過させた。
 マスコミがふりまく甘美なイメージだけが独り歩きし、5,000万人いる無保険者たちは、弱者を救う改革という謳い文句にうっとりと期待を寄せた。世界一医療費の高い国である米国で、ついに全国民が「良質で低価格の医療保険」を手にできるようになる、と。

 だが、フタを開けてみれば、現実はスローガンと逆行。オバマケア通過後、医療保険を失ったり、就業時間を削減されたり、職を失う国民が急増している。

 米国では、40時間/週以上勤務の正社員50人超の企業に団体健康保険提供を義務づけているが、オバマケアはこれを30時間/週に短縮した。
 その結果、企業はリストラ、勤務時間短縮を前倒しで実施。失業者を増大させた。
 2010年にオバマケアが通過してから、わずか18か月で450万人の米国民が保険を失った。【ギャロップ社調査】
 企業群からのクレーム殺到で、オバマ政権はこの団体健康保険加入義務の導入について1年間の延期を決定。だが、個人の加入義務は施行されるため、失業して団体健康保険を失った者は、割高の個人保険料を支払うことになった。
 「重篤な持病や病歴がある患者に対する加入拒否を禁止する」という項目は、健康な人々の保険料を大幅に値上がりさせている。

 若者世代(18歳から35歳まで)の保険料は、全米で2倍以上、最も上昇率の高いバーモント州では以前の6倍になった。
 マンハッタンに住む30代の会社員は、家族3人の月額保険料が500ドル→1,500ドルと3倍に上昇した。自己負担額【注2】も5,000ドルに上がった。
 ウィスコンシン州に住む40代男性(年収45,000ドル)は、オバマケア開始の半年前に正社員からパート契約に変えられた。減俸され、会社の保険も失った彼は、高額な個人保険への加入を断念。無保険者への罰金(個人は95ドル/年)を支払う道を選んだ。
 職はあるが、会社の保険を持たず、個人保険にも入れないワーキングプア層は、爆発的に増えていくだろう。
 そして、国税庁が個人情報とともに、無保険者から強制徴収する税金(無保険者から強制徴収する罰金)は、320ドル(2015年)、695ドル(2016年)と、年々上がっていく。

 「無保険者救済」掲げるオバマケアは、「メディケイド」【注3】受給枠を1,700万人分拡充する。
 メディケイドは、財政赤字を理由に、予算を削減され続けている。その患者の増加は、不足分を補填する病院と医師たちの負担をますます重くする。メディケイド患者と無保険者が溢れる救急病棟(ER)が生む3億ドル/年の未払い金は、2014年度以降、さらに上昇するだろう。

 オバマケアによる課税負担は、主に年収12万ドル以下の中流世帯にのしかかる。最高裁合憲判決の言葉どおり、この法律の実態は、労働者階級への大増税政策なのだ。【「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙】
 上位企業と国会議員は、この増税法から「免責」されている。
 オバマケアの中身を知れば、社会主義だとの批判は的外れであることがわかる。
 米国では、昔も今も、コーポラティズム【注4】が命の値段を決める。

 【注1】通称:オバマケア、2014年1月本格的始動。
 【注2】保険適用前に加入者が支払う。
 【注3】公的低所得者用医療保障。
 【注4】政府と企業の癒着による利権主義。

□堤未果「オバマケアで揺れるアメリカ 国民皆保険という美名の裏で大増税がはじまる ~ジャーナリストの目 第180回~」(「週刊現代」2013年11月2日号)
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【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器

2014年09月08日 | 社会
 先だって、新聞にこんな見出しの記事が載った。
 「電力自由化後も原発支援」
 「原発の電気価格保証 自由化に備え、うんぬん」
 要するに、電力自由化が進むと、原子力発電による電力がそのコストに見合った価格で売れる保証がなくなるので、赤字になる場合はその分だけ電力需要家に電気料金として上乗せして請求することを認めようという話だ。

 実は、これと似た制度が、今年から英国で導入される。
 英国は、地震が殆どないこともあって、福島第一原発事故後も原発路線を採っている。
 しかし、他の欧州諸国と同様、安全基準厳格化によって原発のコストが高くなり、民間事業としては成り立たなくなった。ために、政府が特別の助成措置を認めたのだ。
 他の欧州先進国には、むろん、こんな馬鹿げた制度はない。

 この制度は、原子力ムラの住民にとっては痛し痒しだ。
 「英国がやっているのだから日本も原発に補助金を出そう」
と言えそうだが、他方、原発が火力や水力など比べて高いことを認めることになる。
 「原発は安い!」と叫んできた原子力ムラとしては、原発は高い、と認めたとたんに「だったら、原発は止めろ!」と言われてしまうのが怖かった。

 では、なぜ今は、堂々とこの話を出せるのか。
 4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」で、原発は「重要なベースロード電源」であると宣言され、原発の存続が国の正式な方針として確定したからだ。
 原子力ムラは、閣議決定後直ちに、「原発は重要なんだから維持が必要だ。でも、原発は事故の補償、廃炉、核のゴミなどいろんなコストがかさんで民間では維持できない。だから税金か電気料金によるサポートが必要だ」と言い出した。

 この話が、ここに来て正式に経産省の審議会で検討の俎上に載った。
 これは、実は大変な意味を持つ。「原発はどんなに高くても維持する」という宣言になってしまうからだ。
 そうなると、原子力ムラはあらゆるコストを「実はこんなにかかるのだ」と言って申告し、それをすべて税金と電気料金につけ回しできる。

 この動きは、あらゆる分野でいっせいに表面化している。
  ・廃炉コストのつけ回しについて、有識者会議を設置する。
  ・事故が起きた時の電力会社の損害賠償の負担を軽くしたり、免責にして、あとは税金につけ回しするための有識者会議も設置する。
  ・原子力損害賠償支援機構を改組して、廃炉に税金を投入して支援する制度も始まった。
 原発は、何から何まで、事故を起こしてもコストは全て税金と電気料金で面倒見るという話だ。

 読者は言うだろう。
 「そもそも『原発は安い』から、エネルギー基本計画で重要だと言っていたはずだ!」
 「今さら『高い』とは、全く話が違う!」
 だが、原子力ムラはあざ笑う。
 「計画には、『運転コストが低廉』としか書いてない。『建設コスト』を入れた総コストでは高いという意味だ。原発が高いのは世界の常識だよ! 知らなかったのか?」

 その他のことも、全部そうだ。
 2年前から温められたいくつもの卵が、いっせいに孵化し、合体してモンスターになる。
 恐るべし、原子力ムラ。

□古賀茂明「原子力ムラの最終兵器 ~官々愕々第122回~」(「週刊現代」2014年9月13日号)
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 【参考】
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~



【経済】円安で貧乏になりゆく日本 ~スタグフレーション~

2014年09月07日 | 社会
 円安が日本に与えた影響を最も端的に示しているのは、1人当たりGDPの国際比較だ。IMFのデータによると、14年において、日本の値はアイルランドの79.8%、アメリカの69.4%しかない。
 こうなった大きな理由は円安が進んだことだ。事実、11年には、日本はアイルランドの93.4%、アメリカの92.7%あった。世界の中で、日本は急速貧しくなったのである。
「これは為替レートの変化による計算上の変化にすぎない」という人がいるかもしれない。しかし、そうではない。円安になれば海外から買うものの価格が上がり、これまでのようには買えなくなる。また、海外に旅行すれば、これまでのような高いホテルには泊まれなくなる。右の数字は、現実の生活水準の変化を表している。
 5月の家計調査によれば、世帯当たり実質消費は前年同月比で8.0%の減少となった。勤労者世帯の実収入の前年同月比は、名目0.4%の減少、実質4.6%の減少だ。これには消費税増税の効果も含まれているが、円安で物価が上昇したことの影響が大きい。
 電気料金の上昇は、原子力発電から火力への移行の影響もあるが、大半は円安によるものだ。これは、消費者物価指数(全国)の「電気代」の推移を見ると分かる。すなわち、大震災前の11年1月を基準とすると、円安が始まる前の12年8月までの間に、10.4%上昇した。これは、火力発電シフトにより燃料輸入が増加したことの効果だ。しかし、14年5月までの期間では、29.8%上昇している。12年8月以降、燃料輸入量が格別増加したわけではないので、この時点以降の電気料金の上昇は、円安による輸入額増加が電気料金に転化されたことの結果だ。
「デフレ脱却」ということの実態は、こうしたことなのである。つまり、経済活動が活性化するのではなく、所得や消費が減少しているのだ。日本はスタグフレーションに突入しつつある。 

□野口悠紀雄「スタグフレーションに突入しつつある日本 ~「超」整理日記No.720~」(「週刊ダイヤモンド」2014年8月9・16日合併号)から引用
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【原発】放棄される除染 ~フクシマを見捨てる政官財~

2014年09月06日 | 震災・原発事故
 これまで国は除染の長期目標として追加被爆線量を1mmSv/年=0.23μSv/時と示し、これより線量の高い地域の除染費用を負担してきた。
 しかし、環境省は、8月1日、これまでの空間線量から個人線量を重視する新たな方針を発表。福島県内の4市で行った調査結果をもとに、空間線量が0.3~0.6μSv/時の場所の住民で1mmSv/年程度の被爆になるとし、0.23は除染目標ではない、と主張し始めた。

 被災地からは、まやかしの方針転換だ、不満が噴出している。
 「国がやろうとしているのは、除染がうまくいかなかったから基準を引き上げるということだ。なし崩し的除染を放棄するつもりではないか」【郡山市民】
 個人線量は家族全員が違う。
  <例>①近所の学校に歩いて通う子ども。②三春町から10km離れた郡山市の会社で通勤する母親。
 第一、個人線量を測るガラスバッジは子どもだけに配布され、大人は持ってない(三春町)。
 子どもにしても、首からぶら下げるのは嫌だと、常時身につけている子のほうが少ない。
 そんな状況で、年間1ミリシーベルトを下回る人が多いから除染はしない、と言われてもまったく説得力がない。

 X市の除染担当者は打ち明ける。
 空間線量で0.23μSv/時を基準にする除染方針は、いままで環境省がさんざん言ってきたこと。何を今さら。だいたいガラスバッジで住民の本当の被爆線量を出すなんて無理。**市では従来どおり0.23μSv/時を基準にやる。

 今回の方針転換のベースになった調査に参加した郡山市ですら、同様だ。
 郡山市では「ふるさと再生除染実施計画」の中で0.23μSv/時を基準にしている。この計画を変えるつもりはない。それに、0.23μSv/時という数字を出したのは環境省ではなかったか。

 ガラスバッジや積算線量計を全住民に配布している自治体はごくわずかだ。多くは子どものみに配っている。
 <例>郡山市。昨年度末で未就学児のガラスバッジ装着率は56.6%だった。小中学生は25.2%(4度目の実施時)。妊婦には電子式積算線量計を配布するが、装着率は年間7.5%にすぎない。要するに、子どもの半分以上は持ってないし、持っていても常時は身につけていない。
 ガラスバッジが信用されていないのだ。背中側の線量は測れないし、家の中の一番線量が高いところに置いておいても不検出と出たりする。子どもが登校すると教師がバッジを回収し、下校時に返すところもある。

 環境省の新方針を受け、今年度内に全住民を対象とした個人線量測定を開始するのは、福島県内59市町村のうち13にとどまる見込みだ。
 そもそも一般人の個人線量管理には無理がある。自分も四六時中身につけるなんてことはしない。被爆管理を普通の人に強制すること自体間違っている。子どもたちにそんなことができるはずがない。個人線量計では、被爆後にその量がわかるだけ。本当にやらなければならないのは、できるかぎり被爆しないことだ。【小出裕章・京都大学原子炉実験所助教】
 今回の方針転換で、国のいい加減さがはっきりした。今まで国や自治体は0.23μSv/時まで空間線量を下げるから避難する必要はない、と住民に言ってきた。しかし、それが難しいとなると、目標数値を2倍以上に上げる、という。ずさんな除染計画が露呈した。【井戸謙一・ふくしま集団疎開裁判の会/弁護士】

 被災地を切り捨てるような方針転換は、なぜ行われたか。カネの問題か。
 2011年度以降、国が行う除染には毎年数千億円、計1兆4,081億円もの税金が投じられてきた。
 これは、本来東京電力が払うべき費用を国が一時的に肩代わりしているという形で、これまで国から東電に660億円請求され、414億円が支払われている。
 安倍政権は、昨年12月、本来は国庫に戻すべき東電株の売却益を除染に充てる方針を決定。
 最終的に、除染費用は国=税金で支払うことになった。
 ただ、株売却益は2020年後半以降の予定で、それまでは国から東電に「請求書」が回され続ける。
  
 シナリオを描いているのは経産省&電力業界だ。東電をつぶさないという大方針のため、国からの請求額を少しでも軽くしようとしている。元来、除染に消極的な環境省は、官邸を牛耳る経産省の方針を追認するだけ。交替確実と言われる石原伸晃・環境相にしても、電力業界を敵に回してまで本気で除染に取り組む気はなく、確信犯的に表部隊を避けている。【古賀茂明・元経産官僚】
 除染で出るゴミの中間貯蔵施設の建設をめぐり、「最後は金目でしょ」とうそぶく舌禍事件を起こした石原環境相は在任中からレームダック化した。除染の方針転換の発表を行ったときも、井上信治・環境副大臣に丸投げして不在だった。

 大臣のやる気なさに加えて、環境省自体のフトコロ事情も影響している。
 環境省のある幹部によれば、除染にこれほどの予算をかけるのはあと2年ほどだ。立て替えた巨額の費用を東電から回収できるか疑わしくなっているし、廃炉費用なども考えると、将来、東電株を売却しても足りなくなる可能性がある。除染の規模を縮小したい、と考えたのであろう。【飯田哲也・環境エネルギー研究所長】
 7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定直後に支持率が下がったことで、安部政権もかなり慎重になっている。目立つことはせず、今回のように基準の数値を曖昧にしつつ、なし崩し的に除染から“撤退”しようとしているのだろう。【古賀茂明】 

□桐島瞬(ジャーナリスト)+小泉耕平(本誌)「放棄される除染 政官財の非情 甲状腺B判定の青年ら怒りの告発 経産省主導で東電延命策か」(「週刊朝日」2014年9月5日号)
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【新聞】ポピュリズムと歴史修正主義 ~過熱する「朝日叩き」~

2014年09月05日 | 社会
【新聞】ポピュリズムと歴史修正主義 ~過熱する「朝日叩き」~

 朝日新聞叩きが収まらない。例の慰安婦報道検証記事が火に油を注ぎ、一部の新聞や雑誌が先導役となり、ネット上などでは個人攻撃を含む凄まじい批判が渦を巻いている。

 誤りは誤りと認め、訂正するのはメディアの責務だ。
 誤報を批判されるのは、至極当然だ。メディアの相互批判は、むしろ言論空間を活性化させる。

 ただ、今回は、もっと別の角度からも考察を加えるべき憂鬱な事象だ。
 現在、政界にもメディア界にも歴史修正主義の風潮がかつてなく蔓延り、「反日」的な動きには猛烈なバッシングが浴びせられる。その象徴として朝日は近年、執拗な攻撃を受けてきた。
 こうした状況に耐えきれず、今回の検証に追い込まれたのではないか。だとするなら、この件は一メディアが誤報を取り消したといった次元の問題ではなく、日本社会が変質していることを示す「事件」と見ることができる。
 そう、日本社会に黒々と根を張る歴史修正主義の動き、そしてドロリと広がる排他と不寛容の空気、それらが背後にベッタリと絡みついている。

 ネット上ばかりか、街角にまで繰り出してヘイトな言説を吐き散らすクズどもは論外としても、書店には隣国を悪し様にあげつらう書籍が行く冊も並び、雑誌にも類似の記事が毎号のように掲載される。こうした書籍や記事が、ヘイトで排他的な言説の拡散を確実に下支えしている。
 むろん、隣国の側にも非はある。韓国側から日本を眺めれば、これまたあげつらうネタにことかかない。政界周辺からは途切れることなく暴言が飛び出し、長期の景気低迷や少子高齢化から逃れられず、人類史でも最悪の原発事故で放射能を撒き散らした。悪い点ばかり集めれば、1万行だってあげつらうことができきる。

 その日本では、確かに歴史修正主義と黙される為政者が執権し、隣国との関係をかつてないほど悪化させている。
 この為政者は、戦後民主主義やリベラルな態度を露骨に忌避し、国会では朝日を名指して「政権打倒が社是だ」と言って敵意を剥き出しにしている。
 そういう状況下、自国の恥をえぐり出した記事中の誤報を認めた朝日に猛攻撃が押し寄せている。直近の主要週刊誌も足並みを揃え、「売国」「反日」「自虐」「日本人を貶めた」という見出しが大々的に躍る。

 誤報そのものは批判されるべきだ。
 しかし、自国の恥や問題点を剔抉する行為が「売国」「反日」と罵倒されるなら、ジャーナリズム活動は成立しない。自国や政権の歪みを果敢に指摘することこそ、メディアの仕事だ。「美しい国」に付和雷同するだけなら、独催告のメディアと違わない。

 そもそも、今回の朝日検証で慰安婦問題がなくなったわけではない。
 日韓関係の悪化の原因が、慰安婦問題にだけあるのでもない。
 隣国との関係悪化の真の要因は、日本国内に蔓延る歴史修正主義と、排他の動きにもある。
 過去を忘却した政治家らの心ない発言や行動が、澱のように積み重なった結果の方が、はるかに害をもたらしている。そして、その主役たちは、いま朝日叩きに狂奔している政治家、識者、メディアと重なる。

 社会の排他と不寛容【注】は、一度発火すると容易に消せない深刻な病だ。
 少なくとも、政治家やメディアはそれを煽るべきでない。そうした振る舞いは、危険で劣悪なポピュリズムにほからなない。
 隣国をあげつらう前に、己の姿も冷静に省みた方がいい。

 【注】「【読書余滴】寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか

□青木理「過熱する「朝日叩き」の裏に蠢くポピュリズムと歴史修正主義 ~ジャーナリストの目 第219回~」(「週刊現代」2014年9月13日号)
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【中国】【食】隠れ中国産チキン ~ファミレス・ファストフード・コンビニ・スーパー~

2014年09月04日 | 社会
 中国の「上海福喜食品」による期限切れ肉混入事件【注】は、なぜあれほど大量の期限切れの肉を抱え込んでしまったのか、不可解な点が多い。
 「日中食品安全推進イニシアチブに基づく実務者レベル協議」(8月6日、於中国)において、
  (1)中国側の説明・・・・対日輸出食品は中国国家質量監督検疫総局(AQSIQ)による厳格な管理が行われており、これまでの調査では対日輸出された食品に問題はない。
  (2)日本側の要請・・・・具体的な根拠を示し、調査結果を報告すること。
  (3)現状・・・・中国側の調査スケジュールなどは不明なまま。

 【注】
【中国】【食】日本マクドナルドの対策の不徹底 ~中国産チキン問題~
【中国】チキンの恐怖 ~ファストフード、ファミレス12社~
【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に
【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~

 今回の上海福喜食品事件の最大の問題点は、
  (a)中国国内向けの食品だけでなく、日本への輸出実績のある一流大手企業の直営工場でも工場ぐるみの不正が行われていたこと。
  (b)従来の管理方式では不正を見抜けなかったこと。

 日本マクドナルドだけが、ずさんな管理をしていたわけではない。中国から食品を輸入する企業のどこで同様の事件が起きても不思議ではない。
 中国当局がどこまで調査解明するか、不明だが、ある程度のめどが立つまでの間、中国産全体を避けておこうという消費行動は十分根拠がある。
 
 中国産鶏肉は、現在、生肉としては鳥インフルエンザの影響で輸入が禁止されている。、
 日本人が中国産鶏肉を食べる可能性があるのは、焼き鳥、唐揚げといった鶏肉加工食品だ。

 ●調査・・・・原産地表示義務のないファミレス・ファストフード・スーパーの総菜、コンビニのフライヤー商品について、中国産鶏肉の使用実態について調査。
 同様のアンケート調査は、すでに週刊誌各誌で実施されているが、実用性に欠ける憾みがある。店頭では、同じ商品であっても中国産・国産・タイ産・ブラジル産と複数の産地の鶏肉が使用されているケースが多い。一番必要な情報は、店頭で産地確認をして中国産を避けることができるかどうかだ。
 よって、今回の調査では、次の二点を問い合わせた。
  (ア)各メニューへの中国産鶏肉の使用の有無
  (イ)店舗で購入または注文する際に原産地を確認することが可能かどうか。

 ●調査結果・・・・コンビニ・チキンを除けば、原産地表示については「尋ねればわかる」。
 ファミレスで対応が遅れているゼンショーグループでも、「消費者のニーズがあれば検討する」と回答。
 毎日の買い物や外食の際に、産地を尋ねる消費者が増えれば、店頭の原産地表示が進む可能性がある。

 ■ファストフード
  ①中国産の使用の有無
    ・有・・・・モスバーガー、フレッシュネスバーガー【一部】
    ・無・・・・ファーストキッチン、バーガーキング、ケンタッキー・フライド・チキン、ロッテリア、マクドナルド
  ②店頭での問い合わせ
    ・対応可・・・・ロッテリア、モスバーガー(要望があればレシート印字などでチェック可能)
    ・対応不可・・・・フレッシュネスバーガー、マクドナルド

 ■ファミレス
  ①中国産の使用の有無
    ・有・・・・すかいらーくグループ【一部】(ガスト・バーミヤン・ジョナサンなど)、ゼンショーホールディングス【一部】(ココス・華屋与兵衛・ビッグボーイなど)
    ・無・・・・サイゼリヤ、セブン&アイ・フードシステム(デニーズ)、ロイヤルホールディングス(ロイヤルホスト・シェーキーズ・天丼てんや)
  ②店頭での問い合わせ
    ・対応可・・・・サイゼリヤ、セブン&アイ・フードシステム、すかいらーくグループ、ゼンショーホールディングス【対応するが、すぐわかるかどうか不明】
    ・対応不可・・・・ロイヤルホールディングス【お客様相談センターで対応】

 ■コンビニ
  ①中国産の使用の有無
    ・有・・・・ファミリーマート【一部】、セブン・イレブン【無いとは言えない】、ローソン【一部】、ミニストップ【特定不可】、サンクス【特定不可】
    ・無・・・・
  ②店頭での問い合わせ
    ・対応可・・・・ファミリーマート
    ・対応不可・・・・セブン・イレブン、ローソン、ミニストップ、サンクス
 
 ■スーパー
  ①中国産の使用の有無
    ・有・・・・イトーヨーカドー、ダイエー、西友、ライフ
    ・無・・・・イオン
  ②店頭での問い合わせ
    ・対応可・・・・イオン、イトーヨーカドー、ダイエー、西友、ライフ
    ・対応不可・・・・

□植田武智(科学ジャーナリスト)「ファミレス・ファストフード・コンビニ・スーパーの隠れ中国産チキンを調査してみた」(「週刊金曜日」2014年8月29日号)
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 【参考】
【中国】【食】日本マクドナルドの対策の不徹底 ~中国産チキン問題~
【中国】チキンの恐怖 ~ファストフード、ファミレス12社~
【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に
【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~
【中国】習近平、見えてきた独裁者の正体 ~外交・内政・軍事・経済~
【中国】システムの危機と上部からの腐敗 ~老化する大国(3)~ 
【中国】党指導部はゲームの脇役 ~老化する大国(2)~ 
【中国】共産主義の崩壊と伝統的家族への回帰 ~老化する大国(1)~
【中国】低迷する経済 ~習近平政権の1年~
【中国】現地取材で痛感 やっぱり危ない中国産食品
【中国】実録・猛毒食品「僕らだって怖い!」 ~中国人は語る~
【食】添加物の危険性 ~煮付け油揚げ~
【食】危険な除草剤の増加 ~除草剤耐性GM作物~
【食】イオンの産地偽装 ~中国猛毒米~
【中国】汚染大国 ~PM2.5、農薬、重金属まみれの野菜~
【食】中国における食品汚染事件 ~悪質ケース50(抄)~
【食】「危ない中国産」を見破る法 ~ジュース・菓子~
【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム
【食】外食、どのメニューに中国産が入っているか ~中国食品を見破れ(3)~
【食】安いものにはウラがある ~成型肉の添加物~
【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~
【食】中国食品を見破れ ~スーパー・外食~
【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~
【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~
【中国】影の銀行つぶし ~アベノミクスの行方を左右する中国の政策~
【中国】凄まじい貧富の格差
【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~
【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~
【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~
【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~
【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~
【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド

【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~

2014年09月03日 | ●佐藤優
 8月22日、サレフ・アル=アールーリ・ハマス【注1】幹部が、深刻な発言をした。
 <米CNNテレビ(電子版)によると、イスラム主義組織ハマス政治部門幹部のアールーリ氏は二十二日、七月以来の戦闘の引き金になったユダヤ人少年三人の拉致、殺害事件について、ハマス軍事部門員の関与を公式に認めた。ハマスはこれまで関与を否定していた。イスラエルとの対立がさらに深まるのは必至だ。本格停戦の実現に悲観論が広がっている。/インターネット上には、アールーリ氏とみられる人物が、イスタンブールでの会合で、ハマスの軍事部門カッサム隊の関与について「実行した」と話した場面の動画が広まっている。こうした状況に、関与を認めざるを得ない状況に追い込まれたとみられる。>【注2】

 今回の本格的戦闘のきっかけとなったのは、ハマスがイスラエル人少年3人を拉致し、殺害したことだ。
 6月30日、3人の遺体が発見された。
 7月2日、これに対して急進派ユダヤ教徒がパレスチナ人少年1人を拉致し、殺害した。検死の結果、パレスチナ人少年は生きているうちに火を付けられたことが明らかになった。当然のことながら、パレスチナの世論は激昂し、この雰囲気を最大限に用いて、ハマスはイスラエルに対するテロ攻撃を開始した。

 これら一連の事件は、「どっちもどっち」と片付けてよい話ではない。
 どの国にも極端な考え方の人はいる。自分たちの政治的主張を暴力によって実現しようとするテロリストもいる。
 国際基準の法治主義、民主主義を受容している国家は、かかるテロ分子を法に則って適切に社会から排除する。
 7月6日、ネタニヤフ・イスラエル首相は、「イスラエルに殺人犯の居場所はない」と宣言し、容疑者を逮捕した。これから公判が開かれ、真相が究明される。容疑が証拠によって明らかになれば、犯人は刑事責任を負う。

 これに対して、ハマスはもとより、パレスチナ自治政府【注3】も、ユダヤ人少年3人を殺害した犯人の捜索を行っていない。
 今回のサレフ・アル=アールーリ発言で明らかになったように、ハマス幹部は、ユダヤ人少年3人の拉致・殺害を誇っている。パレスチナからイスラエルに対するロケット/ミサイル攻撃も激化した。

 イスラエル側の空爆は、ハマスがイスラエル攻撃のために造った地下トンネルや地下基地を破壊することはできない。
 7月17日以降、イスラエルはガザでの地上作戦の展開を余儀なくされた。
 これに対して、ハマスは「人間の盾」作戦で応じた。7月8日以後のガザにおける死亡者は2,105人だ(8月24日、朝日新聞)。他方、イスラエルの死者は67人(軍人64人+市民3人)。パレスチナの死者がこれだけ多数にのぼっているのは、ハマスが一般市民を盾にとる戦術を採っているからだ。

 8月26日、イスラエル軍とハマスは、ガザ地区における長期停戦に合意した。
 しかし、ハマスが武装解除に応じないかぎり、イスラエルはテロリスト掃討作戦の継続を余儀なくされる。
 
 【注1】パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム教スンニー派原理主義過激派。
 【注2】記事「ハマス ユダヤ少年殺害認める 本格停戦さらに難航か」(「東京新聞」2014年8月24日)
 【注3】ヨルダン川西岸地区を実行支配する。

□佐藤優「イスラエルとパレスチナ 戦いの「発端」 ~佐藤優の人間観察 第80回~」(「週刊現代」2014年9月13日号)
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 【参考】
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
【佐藤優】独裁者の「再選」が放置される理由 ~バッシャール・アル=アサド~
【佐藤優】経済と政治を行き来する新大統領の過去 ~ペトロ・ポロシェンコ~
【佐藤優】安倍首相とイスラエル首相「声明」の意味 ~ベンヤミン・ネタニヤフ~
【佐藤優】ロシアが送り込んだ「曲者」の正体 ~ウラジーミル・ルキン~
【佐藤優】ロシアは日本をどう見ているか ~日本外相の訪露延期~
【佐藤優】ウクライナ衝突の「伏線」 ~オレクサンドル・トゥルチノフ~
【ウクライナ】危機の深層(2) ~ブラック経済~
【ウクライナ】危機の深層(1) ~天然ガス~
【ウクライナ】エネルギー・集団的自衛権・尖閣問題 ~日本外交のジレンマ(3)~
【ウクライナ】米国の迷走とロシアの急成長 ~日本外交のジレンマ(2)~
【ウクライナ】と日本との歴史的関係 ~日本外交のジレンマ(1)~
【佐藤優】ウクライナ危機と米国が陥った「恐露病」
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【ウクライナ】暫定政権の中枢を掌握するネオナチ ~クリミア併合の背景~
【佐藤優】北方領土返還のルールが変化 ~ロシアのクリミア併合~
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【ブラック企業】大賞2014 ~候補決定~

2014年09月02日 | 社会
 「ブラック企業大賞」【注】は、パワハラ、残業代未払い、長時間労働などが横行する職場を“表彰”する。
 今年で3回目を迎えるが、同実行委員会は7月30日、候補(7社1自治体1法人)を発表した。 

 《候補1》「大庄」(株)「大庄」・・・・居酒屋「日本海庄や」などを展開。
 滋賀県大津市の「日本海庄や」で働いていた吹上元康氏は、2007年、入社して4か月後に急性心不全で死亡した(享年24)。大津労働基準監督署は、これを過労死と認定。両親は2008年、損害賠償を求めて平辰(たいらたつ)・「大庄」代表取締役ら4人を京都地裁に提訴した。判決(2013年5月)は、役員4人に7,800万円の支払を命じた。

 《候補2》以降にノミネートされたのは、
  JR西日本
  (株)ヤマダ電機
  (株)A-1 Pictures(アニメ製作会社)
  タマホーム(株)
  東京都議会
  (株)リコー
  (株)秋田書店
  学校法人智香寺学園 正智深谷高校&(株)イスト
  
 都議会は、今年6月に女性蔑視の野次が飛び交うなど、女性にとって職場が「環境型セクハラ」に相当する、という観点から選ばれた。

 「大賞」は、授賞式(9月6日)で発表される。
 「ウェブ投票賞」は、一般投票で決まる。実行委員会は「ウェブ投票の内容も大賞選考の参考にしている」。
 詳細は、ブログ「ブラック企業大賞」で。

 【注】
「【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~」
「【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~」
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~

□野中大樹「「ブラック企業大賞2014」の候補決まる」(「週刊金曜日」2014年8月29日号)
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 【追記】ブラック企業大賞2014は、ヤマダ電機に決定。
□田中龍作「ブラック企業大賞 今年はヤマダ電機」(「BLOGOS」2014年09月06日)

 【参考】
【ブラック企業】を残業代ゼロが促進 ~竹中平蔵パソナ会長向け成長戦略~
【ブラック企業】対策プロジェクトが成功した要因 ~社会運動と言説~
【ブラック企業】連帯の極小サイクル ~社会の底でせめぎ合う情念~
【ブラック企業】の定義は社会運動がつくりあげた ~言説~
【【ブラック企業】が社会問題として認知されるまで ~社会運動~
【ブラック企業】赤字49億円! 「瀬死」のワタミから人もカネも消えた
【ブラック企業】奨学金という貧困ビジネス ~学生の苦難(3)~
【ブラック企業】全身就活 ~学生の苦難(2)~
【ブラック企業】ブラックバイト ~学生の苦難(1)~
【ブラック企業】激変する若年労働者市場 ~労使間の話し合いが不可欠 ~
【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~
【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~
【ブラック企業】対策講座 ~就活~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~
【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~