語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~

2013年07月18日 | 社会
 (1)非常勤講師は、正規と違って「校務」(担任や部活など)を持たないが、週約20時間の授業を受け持ち、授業のない時間にプリントやテスト作り、採点、成績評価などをこなす点では正規と変わらない。しかし、月給は手取り14万円ほど。ボーナスも退職金もない。年収にして3倍の開きがある。【愛知県の男性、県立高校、30代】
 正規教員の平均と同じ週18時間の授業を受けもち、手取りは月約20万円。社会保険はない。【神奈川県の女性、県立高校、30代】
 塾、家庭教師、コンビニ、引っ越しのバイトをして生活費を稼ぐ講師もいて、バイト代のほうが多い例もある。【前記女性など複数の非常勤講師】
 
 (2)高校の非常勤講師は、正規になるまでの「見習い」と目されがちだが、今や欠かせない「戦力」だ。文部科学省の調査では、公立高校の非常勤講師ら「兼務者」は年々増え続け、2012年度は36,500人、全教員の17%を占める。
 定時制高校の教員の3割が非常勤ら「兼務者」。全公立高校より1割も多い。【文科省】 
 正規教員の代わりに非常勤を雇う自治体が相次いでいるのだ【注】。
 担任を持たない専門教科の教員は、もともと時間給の非常勤に代替しやすい。それに、これから人口が減るのに、雇うとクビを切れない正規は増やせない。非常勤は、将来生徒数が減ったら辞めてもらう調整弁だ。【ある自治体の幹部】

 (3)学校現場で格差にあえぐのは、非常勤ばかりではない。「臨時」教員もそうだ。
 国に統計はないが、その数は非常勤に匹敵する、とも言われる。
 臨時教員は、1年ごとに契約更新される非正規ながら、正規教員と同じように担任や部活などを受けもつ。
 月給は40万円ほどあるが、正規より5万円ほど低い。昇給は40代でストップ。ボーナスも退職金も正規より数十%低い。毎年雇用を打ち切られる不安を抱えながら、なんとか正規と同じ年数を働いても、生涯賃金は5,000万円は少ない。県によっては1億円の差が出るところもあるだろう。【首都圏の県立高校で30年近く働く50代の男性臨時教員】
 今の月収は30万円ほど。校長に目をつけられたら更新してもらえないので、10年間働いて職員会議で発言したのは1、2回。今いちばん心配なのは、退職後の「再任用(再雇用)」。ここでも正規が優先採用される。【神奈川県の公立高校で働く50代後半の女性、約10年前非常勤から臨時に「昇格」】

 (4)教員間に待遇格差をつけるやり方に矛盾はないか。
 国は、自治体が非常勤らを活用するのを黙認してきた。今さら待遇改善に乗り出すと、誤りを認めることになる。だから、非常勤にせめてボーナスや退職金は出すべきだ、と言っても抵抗されてしまう。【労組出身の民主党議員】
 今、正規教員の負担が増大している。教科だけ受け持つ非常勤が増えても、正規は増えないので、少ない人数で、生徒の生活や進路指導、部活、さらには増え続ける事務作業をこなさなくてはならない。一方、非常勤講師も、仕事が教科だけでは細切れのパート労働のようになり、成長の機会が奪われている。要するに、公教育が劣化する。【山口正・日本福祉大学教授】
 結局被害を被るのは子どもたちだ。

 【注】私学では一層この傾向が強い。
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~

□大場弘行(本誌)「学校の婚活パーティーは「年収の壁」で玉砕」(「サンデー毎日」2013年7月14日号)

 【参考】
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~
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