語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【中国】凄まじい貧富の格差

2013年07月23日 | 社会
(1)アラブ王族に肩を並べる「太子党」桁外れのバブルな日々
 北京市内だけで、総資産1,000万元(1億6,000万円)以上を保有する富裕層が18万人にものぼる。
 メルセデス・ベンツの最高級車Sクラスの販売台数は年間15,000台(国別第1位)。
 1億円も珍しくないフェラーリの新車販売ダイスうも日本を抜き、北米に次ぐ世界第2位。
 富裕層の大部分を共産党の幹部が占める。その子息(太子党)は、成人すると北京市内に最低でも3軒の家を持つ。実家、仕事用マンション、パーティ用別荘だ。別荘といっても高級マンション最上階のペントハウスや、中庭付きの伝統様式の豪邸(四合院)で、日本円で10億円相当の物件も少なくない。
 彼らは決まって毎週末に盛大なパーティを開き、仲間の太子党を招く。珍味より安全な食材が重視され、天然飼料で育てられた豚肉(1万円/kg)、完全無農薬のチンゲン菜(3,000円/束)など、市場価格の20~30倍の食材ばかり。
 パーティの目的はインサイダー情報の交換。「例の土地がそろそろ売りに出る」「来年にはあそこの再開発も始まりそうだ」etc.。
 中国に跋扈する大富豪の最近の流行は、昨夏オープンした「ルイ・ヴィトン・メゾン上海」。1点もののオーダーメイドを受け付けているVIP向け店舗。旅行用スーツケースは最低100万円から、靴は50万円から。

(2)摩天楼の地下スラムに暮らす「鼠族」の生活水準
 13億人の中国人民のうち、富裕層は都市部を中心に少なくとも50万人程度存在する。残りの12億9,950万人は貧困に喘いでいる。
 摩天楼の地下に「鼠族」が棲息する。「鼠族」とは、地方から大都市に出稼ぎに来た低賃金労働者のことだ。賃料高騰によりまともな部屋に住めない彼らは、主にビルの地下をねぐらにしている。
 鼠族は、6畳1間に3段ベッドを2つ置き、夫婦、それぞれの両親、子ども・・・・の3世代7人が寝起きする。家賃は月額3,000円程度。窓はなく、炊事洗濯する場所はなく、トイレは共同。食事はインスタントラーメンが主だ。
 彼らの大半は、建設現場で働く。中国では工事が終わるまで一切給料が支払われない(契約)。建物完成後、業者がトンズラすれば、まったくのタダ働きとなる。
 こうした鼠族が北京市だけで100万人以上いる(推定)。

(3)「蟻族」
 国内には100万人の「蟻族」がいる。
 その住処は、都市近郊のマンションの1室。3DKに40人以上の若者が肩を寄せ合って暮らす。1人分のスペースはベッドの上だけ。
 家賃は月額1,000円。
 彼らの多くは、北京大など難関校の卒業生だ。就職先が決まらず、チラシ配りや家庭教師のバイトをして糊口をしのいでいる。
 そんな貧乏暮らしも立ち行かなくなると、彼らは次第に「黒い仕事」に手を染めていく。違法なコピー商品を売りさばくのは序の口で、最近では市販の食用油の10分の1以下の価格の「地溝油」を扱ったりする。これはホテルなどの下水道の汚水から油を分離抽出したもので、闇マーケットで販売する。

(4)年10万件の暴動が発生する「中国版アパルトヘイト」
 中国には3つの階級が存在する。
  (a)特権階級
  (b)「都市戸籍」を持つ人民
  (c)「農村戸籍」の人民 
 (a)は、浙江省のエリート校・江山高校に娘を通わせ、学校が主催する15日間で3万元(48万円)のサマースクールに参加させるため渡米させたりする。7月6日、韓国・アシアナ航空のボーイング777機がサンフランシスコ国際空港で着陸に失敗し、亡くなった中国人3人がそれだった。 
 (b)を見ると、2011年に北京市で働く労働者の平均年収は、56,0000元(90万円)、非民間企業で働く従業員の全国平均年収は42,500元(68万円)だ。
 (c)の農村部の生活は、(b)の何倍も深刻だ。しかも、強固な戸籍制度(中国版アパルトヘイト)によって、貧困地帯からの脱出は認められていない。国民を「都市戸籍」と「農村戸籍」に分断してきたのは、都市部への食糧の安定供給のためだったが、これが現在では差別政策として機能している。
 農村戸籍を持つ者は、農業以外への就業や都市部への移動が厳しく制限される。だが、現実には農村を抜け出して歳へ出稼ぎに行く「農民工」は2億5千万人にのぼる。
 こうした出稼ぎ労働者が「鼠族」になって北京や上海で最底辺の生活を送っている。中国の社会保障は戸籍地での申請が基本なので、彼らは医療、年金、失業保険もろくに受けられない。さらに、農村戸籍の子どもたちは都会の公立校に通うことすら原則としてできない。
 農民工の子弟のなかにも勉学に励み、大学受験をめざす学生はいるが、大学が立地する省の戸籍を持つ学生は、他省の学生よりはるかに合格ラインが低い。北京や上海の大学では、戸籍が「田舎者を排除するシステム」として機能している。
 たとえ一流大学を卒業しても、家柄やコネがなければ、結局は貧困を脱出できない。
 近年、中国経済が好況事業を中心に成長してきたことで、コネや人脈のある党幹部や官僚の子弟の方が就職に有利になっている。企業は学生自身の優劣ではなく、億単位の工事を発注してくれる「父親」の存在を重視する。
 そして、多くの大学生が失業者となり、「蟻族」に身を沈める。現在、中国の大卒就職率はわずか35%。ちなみに、就職氷河期が叫ばれる日本は93%だ。

□記事「のたうつ赤龍「中国」の凄まじき貧富」(「週刊新潮」2013年7月25日号)

 【参考】
【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~
【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~
【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~
【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~
【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~
【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
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