語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~

2013年01月08日 | 社会
 (1)これまでの企業のパワハラやリストラ問題と違う。
 ブラック企業は、社員を単なる「コスト」としてしか考えていない。初めから使い捨てることを前提に大量採用し、大量解雇する。経営状態のよしあしに関係なく、会社が不要と判断したら退社させる。やめさせるための手段として組織的、恒常的にパワハラを行う。

 (2)もともと日本の大企業には、ある一時点で見れば、ブラック企業的要素があった。戦後、大企業は終身雇用制、年功賃金を守る代わりに社員を猛烈に働かせた。経済成長期には、それでも「ウィン・ウィン」の関係が成立していた。
 バブル崩壊以降、この関係がそれが徐々に変化していった。企業は社員の雇用と生活を守れなくなったのに、サービス残業を強いる労働環境が残った。見返りのある滅私奉公が、見返りのない滅私奉公に変わっていった。
 ブラック企業は、社員を徹底的に滅私奉公させ、見返りをまったく保障しない。ほころびかけた日本型雇用の「おいしいところ取り」をしているようにも見える。しかも、不景気が長引く中、新卒対象の労働市場は買い手側有利の状況が続く。社員を辞めさせても、いくらでも簡単に補充できる。

 (3)被害を受けるのは個々の若者だけではない。日本の社会とその未来も被害を受けている。
 長時間労働やパワハラによって、ブラック企業を実質的に解雇(形式的に自己都合退職)させられた若者の多くが、鬱病などのメンタルヘルス疾患を発症する。しかし、形式上は自己都合退職だから、労災は申請できない。雇用保険でも不利益を被る。再就職は難しく貧困層に陥る人が続出する。こうした治療費や生活保護費などの経済的負担が、社会全体に押しつけられる。

 (4)ブラック企業の手口は巧妙さを増している。食い詰めた弁護士や社会保険労務士が企業をたきつける例がある。また、それまでちゃんとしていた企業が、経営問題をきっかけにブラック化するケースも出ている。
 2011年度の個別の労働紛争の相談の件数は、過去最多の約25万6千件。うち解雇による相談件数は減少したが、自己都合退職に関する相談件数は約2万6千件で前年度比28.1%増加、嫌がらせ・いじめなどの相談件数は約4万6千件で16.6%増加した。

 (5)ブラック企業のわなに陥らないようにするために、企業研究の徹底や、志望先の労働条件や離職率をきちんと確認すること。だが、就職難の折、学生は内定をとるのに精いっぱい。大学側も一人でも多く就職させるのに必死でこれといった有効策はない。

 (6)ブラック企業を見分ける目安の一つは、長く働いている女性社員が多数いるかどうかだ。出産、育児などの負担が多い女性が働ける企業であれば、まず安心だ。
 そして、万が一、入社した企業がブラック企業だと思ったら、早めに専門機関に相談すること。客観的に見てブラック企業の可能性が高いとわかったら、退職するのが現実的な対処だ。法的に企業の違法行為を争うことができるが、そのまま会社に残って病気になったら元も子もない。辞めるリスクより辞めないリスクの方が大きい。

□記事「若者を食い潰すブラック企業」(2013年1月5日付け朝日新聞(be report」))

 【参考】
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態

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