語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~

2013年07月12日 | 社会
 (1)ワタミグループ創業者の渡邊美樹は、5月31日、自身の公式ホームページに<「ブラック企業」と呼ばれることについて>を載せた。いわく、離職率や時間外労働時間など4項目でワタミグループは基準となる指摘に比べて良好だ、ワタミはブラック企業ぢゃない、うんぬん。
 だが、ワタミの労働問題として多くの人が念頭におく森美菜(当時26歳)の過労死自殺には言及していない。ワタミは、以前からCSR報告書などで都合のよいデータを選んで開示する傾向がある。今回もそうだ。【上西充子・法政大学キャリアデザイン学部教授】
 <例>時間外労働。ワタミの外食事業の平成24年度月平均は38.1時間。36協定で定めた45時間を下回る・・・・と渡邊はいう。 しかし、残業時間が月平均は38.1時間なら年平均は457.2時間。厚労省基準によれば、残業時間は年360時間が限度だ。渡邊が明らかにした残業時間は、年間で見れば同基準を上回る。

 (2)ブラック企業とは何か。
  (a)自民党雇用問題調査会、4月19日、若者の使い捨てが疑われる企業等への対応策を強化する基準・・・・「離職率が高い」「サービス残業など法違反が疑われる」「重大・悪質な違反をする」「過労死などの重大な労働災害を繰り返して発生させた」。
  (b)今野晴貴・NPO法人「POSSE]代表/『ブラック企業』著者・・・・入社から数ヶ月、数年で社員が市に追い込まれたり、大量に退職したりする企業。1990年後半以降に急成長したIT、飲食、小売、介護などに目立つ。労組はなく、経営者が独善的な経営手法を自賛する傾向がある。
  (c)古川琢也・ルポライター/『ブラック企業完全対策マニュアル』著者・・・・人権を侵害して、働く人の生存権を脅かす企業。

 (3)ブラック企業の実例
 (2)-(b)が一例として挙げるのは、ユニクロ。柳井正・社長は「成長か死か」「変わらなければ死ぬ」などと公言してきた。同社が「週刊東洋経済」明かした数値、2010年に入社した新卒社員の3年後の離職率は47.4%。小売業の平均より10ポイント以上高い。
 (2)-(c)が筆頭に挙げるのは、大日本印刷。36協定による残業時間の限度は月200時間で、他の一部上場企業に比べ抜きん出て長時間だ。厚労省は、月80時間以上の残業が2~6ヵ月間続くと業務と過労死の関連性が高い、と評価できる、としている。異常な水準だ。同社では、労災や不当労働行為が複数起きている。2009年6月、埼玉労働局は偽装請負やピンハネを認定し、大日本印刷子会社3社に指導票を交付している。
 古川琢也は、短期間に複数回の労災事件が発生する会社はブラック企業の可能性が高い、とも指摘する。
 東芝では、労災事件が相次いだ。2000年以降、少なくとも3件発生した。

 (4)離職率を開示する企業は、『就職四季報』(東洋経済新報社)で調べることができる。平均勤続年数、労働組合の有無は、有価証券報告書で、労災事件は新聞記事データベースで確認できる。情報をどう読み取るか迷ったら、教員や大学のキャリアセンターに助言を求めることができる。自分だけで抱えこまないこと。【上西教授】

□谷道健太(ジャーナリスト)「ブラック企業の見抜き方 ~就活最前線⑪」(「サンデー毎日」2013年7月14日号)

 【参考】
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
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