MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

原因は心か、それとも細菌か?

2012-02-12 11:29:08 | 健康・病気

前エントリーで紹介した
アメリカのニューヨーク州北部 Le Roy の町で
女子高校生を中心に集団で発症した奇妙な不随意運動。
心因性疾病の集団発生との当局の判断だったが…
昨年10月、当ブログの
メディカル・ミステリー・シリーズで紹介した
PANDAS ではないかという説も浮上しているという。

2月8日付 Time.com

New Diagnosis in Teen Tic Disorder: What Is PANDAS?
10代の若者たちのチック障害に新たな診断:PANDAS って何?
A doctor says the Le Roy teens' mysterious tic disorder may have been set off by strep infection.
Le Roy の10代の若者たちに見られた謎めいたチック障害は溶連菌感染によって引き起こされている可能性があると医師が指摘
By Maia Szalavitz

Strepbacteria
色彩がつけられた溶連菌の電子顕微鏡写真

 謎はさらに深まっている。一人のニュージャージー州の神経内科医が、奇妙なチック障害―昨秋から患者数は計18人に上っている―に罹っているNew York 州北部の10代の若者のうち8人の血液検査を精査し、彼らを PANDAS と呼ばれる疾病と診断したことを報告した。
 PANDAS は Pediatric Autoimmune Neuropsychiatric Disorders Associated with Streptococcal Infection (小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害)の略であり、強迫性障害 (obsessive compulsive disorder, OCD)あるいは Tourette 症候群様のチック障害を呈し、その症状が溶連菌感染後に出現する小児集団に対して用いられる。典型的には子供たちは溶連菌感染後に突然症状が発現する。PANDAS は感染に対する自己免疫反応によって引き起こされると考えられている(ただし溶連菌はそれを引き起こす唯一の微生物ではない)。
 月曜日(2月6日)の夜、ニュース専門チャンネル HLN の Dr Drew の番組で Rosario Trifiletti 医師から報告されたこの新たな診断名は、これらの10代の若者が集団心因性疾患であると発表した New York 州保健当局による診断病名と対立するものである。
 その診断についての意見の中で、彼が精査した臨床検査に基づいて、8名の少女のうち5名に“溶連菌を保菌している証拠”が見つかったこと、“8名のうち7名にマイコプラズマ肺炎の所見”が認められたことが Trifiletti 氏によって述べられた。そして次のように結論づけている。

検査された8名の少女すべてでこれらの病原菌の少なくとも1つの感染所見が見つかっている。この病原体は両者とも、運動性および声帯チックの突然発症を伴う PANDAS 様の疾病に関連していた。このため、実際的な診断名は集団転換性障害ではなく、PANDAS 様疾病ということになる。

 Trifiletti 氏は、今回の疾病については依然として不明な点が多いことを認めているが、「私は遺伝的、環境的要因が、ありふれた病原体に対してPANDAS 様反応が起こり得るような免疫的背景をもたらしているのではないかと思っています」と言う。
 小児のチック障害のおよそ40~60%は感染によって始まると考えられているが、研究が不十分なため正確な数字は不明である。
 しかし、1月末、New York State Department of Health からは次のような報告があっさりと発表された。「PANDAS の診断基準に合致する症例は一人もいなかった」
 しかし疑念を抱かせる多くの理由が存在する。PANDAS の命名に関与した National Institute on Mental Health の小児および発達神経精神医学の部長である Susan Swedo 医師は次のように言う。彼女は Le Roy の若者を直接診察しておらず、彼らが PANDAS かそうでないかを判断することはできないが、ニューヨーク州 Le Roy の症例についてわかっていることと、PANDAS について知られていることとの間には食い違う点があると言う。
 一例を挙げると、PANDAS は通常集団で発生することはない、ということだ。実際、Swedo 氏は、これまでに PANDAS の流行が起こったのを承知していないという。最後に起こった溶連菌感染後疾病の流行、それは炎症性疾患であるリウマチ熱の集団発生だったが、これは1980年代に発生している。(PANDAS もリウマチ熱も感染に対する過剰な免疫反応によって生ずる:つまり免疫細胞が、感染病原体に対するだけでなく、特定の臓器や組織を誤って攻撃する。)
 もう一つの問題点は、溶連菌感染が高頻度であるのに対し、PANDAS がきわめて稀なことである。小児のおよそ100人に1人に OCD やチック障害が見られるが、それらすべてが感染によって引き起こされるものではない。対照的に、「ある学童期の小児では、一年のこの時期には(溶連菌に対する)抗体陽性率は60~70%にもなります」と Swedo 氏は言う。
 さらに、Le Roy のチック障害がほとんど女性だけに起こっているという事実は PANDAS の診断に不利に働くことになる。「幼児期発症 OCD のようなチック障害は女児より男児の方が約3倍多い。そのため、『チックの異常発生』を見た場合、もし14人の少女が罹患しているとしたら、40人から60人の男児例の存在が期待されます」と、Swedo 氏は言う。
 心因性が有力という診断と一致するように、(そもそも最初に何がチックを引き起こしたかということに関係なく)チック障害はストレスの存在下で増悪する可能性があると Swedo 氏は指摘する。「大部分の人で、チックはストレスの存在する時期に増加し、休養すれば減少します。時にはその逆も起こりますが」と彼女は言う。
 例の Le Roy の若者たちは生活の中でかなりのストレスを被っていたことが知られている。彼らの治療を中心的に行ってきた Lazlo Mechtler 医師によると、この少女たちのストレスは、時として、症状の出現に先行して存在していたいじめを含め“想像されるすべて、あるいはさらに悪い状況だった”という。
 Trifeltti 氏は現在、診察した少女たちを治療するために抗生物質を用いている。これは、溶連菌によって引き起こされた PANDAS の症例で行われる標準的な治療法である。PANDAS への最善の対策は、原因となる感染がもし未だに存在しているなら、そしてそれがもし溶連菌が原因であるならば抗生物質を用いてそれを治療することである。
 Mechtler 氏としては、彼に意見を求めてこなかった Drew 医師と Trifiletti 医師による突然の介入を快く思っていない。彼は地方のニュースサイト The Batavian に対して、もし抗生物質が有効であれば、それは良いことではあるが、恐らくプラセボ効果によるものだろう、と語っている。
 そしてさらに、メディアの“ヒステリー”が問題を悪化させていると彼は述べている。“テレビに取り上げられていない若者は快方に向かっています。テレビに出ている若者は悪化しているか現状維持の状態です」と、彼はレポーターに語った。

症状に苦しんでいる当の若者たちが
大人たちの都合で振り回されている印象である。
親たちとすれば
可能性のある治療はすべて行ってほしいと思うだろうし、
できればヒステリーなどと思われたくはないだろう。
今後の成り行きをしっかりと見守ってゆきたいと思う。

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