MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

生命とは?生命の始まりとは?

2008-11-29 10:08:49 | ニュース

人間の命はどの時点で始まるのでしょうか?

精子と卵子が結合し受精卵となった瞬間からでしょうか?

胎児と呼ばれる3ヶ月からでしょうか?

それとも、中絶が行えなくなる22週からでしょうか?…

中絶大国・日本ではこの問題をつきつめて考える人は

少ないと思われます。

失言だらけのあの "asshole" 総理に尋ねたとしても、

「何のこと?」で済まされそうですね。

しかし、米国では、プロ・ライフ(中絶反対派)と

プロ・チョイス(中絶賛成派)の議論は政治的にも重要です。

宗教の影響が大きいからでしょうか。

マケイン氏の副大統領候補だったペイリン氏が、

自身の高校生の娘の妊娠を容認する

プロ・ライフ支持者であることが話題となりました。

こういった生命倫理に対する政治家の考え方の違いは、

再生医療への貢献が期待される幹細胞研究の方向性を

大きく左右することなります。

オバマの『変革』は、同研究に対してどのような影響を

及ぼすことになるのでしょう?

胎児の初期細胞を用いることで問題となっている

胚性幹細胞(ES細胞、embryonic stem cell)研究の

米国における今後の行方についての記事を紹介します。

11月23日付 Washington Post 電子版

Foes of Stem Cell Research Now Face Tough Battle
厳しい闘いに直面することになる幹細胞研究の反対者たち

ブッシュの大領領の任期が終わると、胚性幹細胞研究を反対する人たちは、本研究の阻止に無力を感じさせられる新たな政治情勢に直面することになるだろう。

大統領に選出された Barack Obama 氏がそのような研究への連邦予算の制限を撤廃するのではないかと期待されている。
民主党カリフォルニア選出の Nancyh Pelosi 下院議長もまた、規制の枠組みを見直す必要があるならば新しい議会の最初の100日間(蜜月期間)での法制化を進めることに関心を表明している。

「我々は負けてしまうかもしれない、しかし、戦い続け、倫理的な代替案を提出するつもりです」と、民主党ペンシルベニア州選出の Joe Pitts 下院議員は言う。
「新しい議会での投票結果がどうなるかはわかりません。しかしこの件では敗れてしまう可能性が極めて高い」

幹細胞は異なる種類の組織に変換する基本材料である。胚性幹細胞は、より成熟した種類と異なり、全くの白紙状態である。
もし科学者たちがそれらを制御できるとしたら、たとえば、糖尿病患者の膵臓にインスリンを産生させ始めることができるようになるなど、再生治療を運用できるようになるだろう。

4日齢または5日齢の胚子から幹細胞を採取するということは胎児を殺すことを意味し、そのことがこの種の研究の反対者を憤慨させている。
一方、支持者たちは不妊クリニックに保管されている何十万という胚子はどのみち廃棄されるのであり、他者を救うことになる研究に胚子を提供することは人道的に許されるべきであると主張する。

「そのような明確な目的のために自由意志で提供されるのであれば、生命を救うことを可能にする研究目的でこれらの胎児を使うことは倫理にかなうと信じている」と、科学者、医師、および技師らからの14の質問に Obama 氏は選挙運動中に書面で回答した。

George W Bush 大統領の下では、ヒト胚性幹細胞の研究への連邦予算は 2001 年8月9日以前に作られた幹細胞株、あるいは常時分裂する細胞種に限定されていた。
それ以降、破棄された胎児からの細胞株を用いた研究には連邦予算は許可されていない。。
ただし連邦の規定では州や民間の資金を用いた胚性幹細胞の研究までは制限してはいない(たとえばカリフォルニア州のシュワちゃんなどはきわめて熱心:MrK 註)。

Obama 氏の政権移行作業チームのトップである John Podesta 氏は、次期大統領は1月20日の就任後すぐに幹細胞研究の問題に取り組むだろうと強力に示唆した。
「ご存知のように、Obama 氏は幹細胞研究に対してこれまで特別な言質を与えてきています。
そのため、選挙運動中に彼が語ったことは任期中に必ず実現されるものと期待してよいと思います」と Podesta 氏は言う。

Obama 氏は、Bush 氏の指示をくつがえす意向であることを選挙期間中に明言している。

「2001 年8月9日以降に作られた胚性幹細胞株研究への連邦予算に対する大統領命令による政府の禁止措置を、私が大統領になれば撤廃するつもりです。
また、幹細胞にかかわるすべての研究が倫理的に、また厳密な監視のもとに行われるよう努めます」と、彼は発言した。

一方、推進派の者たちは幾つかの点において自分たちの首を絞めることになるだろうと、研究への反対者は言う。

第一の意見として、生命は受精時に始まるという考えがある。すなわち、ひとたび実験室で受精が生じたなら、一人の人間が誕生したと見なされるという考え方である。

第二の意見として、すでに科学者らは胚性幹細胞を用いる以外の方法―特定の組織を作る成人の幹細胞、あるいは幹細胞と同様の特性を持つようプログラミングされた皮膚細胞など―を用いて成功を収めてきており、資金は最も重大な科学的進歩が見られるところに向けられるべきとの主張がある。
たとえば、つい先週も、ある女性が自身の幹細胞から作られた組織を用いた新しい気管を医師により移植され、それには免疫抑制剤を使う必要もない、という事例があった。

「私たちはさらに努力を続け、実際的に治療を提供しているのは成人幹細胞であるという事実について語るつもりです」と、Family Research Council の senior fellow である David Prentice 氏は言う。

Concerned Women for America(アメリカを気遣う女性の会)の会長である Wendy Wright 氏はさらに言う。
「いくつかの驚くべき科学的発見を含めて、この7年間に様々なことが起こっている。
そのことが、進展のない胚性幹細胞研究への連邦予算の問題を曖昧なままにしてしまっているに違いないのです」

しかし、American Society for Reproductive Medicine(米国生殖医学学会)の広報部長である Sean Tipton 氏はそこの議論に照準を絞る。

「これまで同研究への連邦予算を実質阻んできた反対者が研究の進展不足に言及するのは、若干公正さに欠けます」と、Tipton 氏は言う。
「人をスタート・ラインに留まらせておきながら、業務がはかどっていないと彼らを批判しているわけです」

Johns Hoopkins University School of Medicine の professor of medicine である Chi Dang 博士は、成人幹細胞に驚異的な進歩があったことは認めている。
しかし、それらは、胚性幹細胞と同じように十分な柔軟性を持った応用に耐えうるかどうかはいまだ明らかではないと彼は言う。

「科学的な立場から言うと、我々は本来の道筋ではないかもしれないことを普及させようとしているでしょう」と、Dang 氏は言う。

Dang 氏はさらに、これらの胎児は、さもなければ廃棄されることになる、と言う。

「こう質問したい。胎児に酸をかけて殺す方が倫理的に受け入れられますか?
それとも将来我々にとって有益となるであろう新たな細胞株を作るために細胞の塊をバラバラにする方を選びますか?」

Salk Institute for Biologic Studies の教授、Samuel Pfaff 氏もまた、すぐれた胚性幹細胞研究を支持すると言う。
それは、科学者たちが他の細胞に幹細胞類似の特性を寄与する場合にも見られるような、幹細胞を特異的にしているものが一体何なのかを知るためである。

「科学のこの領域においてめざすべき長期展望は、胚性幹細胞を十分探求することによって、もはやそれらを使わなくても済むようにすることだ、という主張こそ公正な意見であると思います」と、Pfaff 氏は言う。

一年前、京都大学の山中伸弥教授らのグループが、

ヒトの皮膚細胞を人工多能性幹細胞(iPS 細胞)に誘導することに

成功しました。

これは受精後早期の胚子から樹立される胚性幹細胞(ES 細胞)と

遜色のない分化多能性を有しており、胚性幹細胞研究における

倫理的問題をクリアできるとして注目されました。

ただし、iPS 細胞を作成するには、通常の成人細胞に増殖・分化能を

持たせるため必要な転写因子を導入しなければならず、

その安全性には懸念が残されています(癌化などの問題)。

また遜色ない多能性とはいうものの、

果たして胚性幹細胞と全く同様の安定性が保持されるかが

疑問視されており、また幹細胞分化のすべてのメカニズムが

解明されているわけではありません。

記事中にもあるように、究極の目標は、

患者自身から採取し作成した iPS 細胞が、最も万能性の高いとされる

胚性幹細胞の役割を完璧に果たすことが可能であるという確証を

得ることです。

そのような状況を考慮すると、

胚性幹細胞研究を停滞させたままでは、

幹細胞研究の飛躍的な前進はむずかしいのかもしれません。

胚性幹細胞研究の問題だけでなく、将来は

iPS 細胞からも独立した個体が生み出される可能性があるなど

どこまでも倫理問題がついて回る研究領域ですので

研究の先端に与する日本としては、

生命倫理に対する国民の観念が、

あいも変わらず希薄なままではいけないのでは、

と思ってしまうのです。

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2 コメント

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 アメリカにおける中絶問題は、やはり宗教が絡ん... (yunppi)
2008-11-30 17:04:52
 アメリカにおける中絶問題は、やはり宗教が絡んでいたように思います。
日本は宗教に関してはなんでもありだから、生命倫理というより道徳観で考えるしかないのかな。でも、そうなると今の日本ではメチャクチャですね(笑)
 私は生命の始まりは、受精してからと思います。それ以前は「生命の素」ってところでしょうか。だから本当は胚性幹細胞研究には反対したいような気がするのですが(あまりピンとこない)、廃棄ということにショックを受けました。私が受精からが生命と考えるなら、殺してるってことですものね。だからと言って、研究に使うにしても、研究目的で受精卵をつくるのにも反対。どうやら私は、その生命倫理とやらに通せんぼされてしまうみたいです。
どうせなら「生命の素」を単独で使えるようになればいいんじゃないですかね?なんぼでも使えるじゃない?
 MrKさん自身は、立場上からもいろんな考えがおありと思いますが、どう思われているんでしょうか?
返信する
>yunppi さん (MrK)
2008-11-30 22:38:58
>yunppi さん
「生命の素」?なんじゃい、それは?(笑)
中絶に対する議論は、受胎した段階で誕生した生命を最優先に守るとするキリスト教右派に基づいた考えと、子供を生む生まないについて女性に選択権が認められるべきとの考えの対立になると思います。宗教の影響が小さい日本では、一部の人たち、例えば、不妊症に悩む夫婦にとっては、中絶は許されない行為に映ることでしょう。いずれにしても中絶を受けることになる子には何の選択権もなく殺されることになります。一方、中絶が叶わない場合、望まれず生まれてきた子供がいたとしたら、不幸な未来が待ち受けているかもしれません。ワタクシとしては、どちらの立場も強く支持することができないでいます。
ただ、生命の誕生にかかわる科学研究が急速な進展を遂げている今、日本では、国民のコンセンサスのないまま、一部の人間(文科省のなんちゃら審議会)だけで倫理的な問題が議論されていることに疑問を感じています。
もっと協議内容について周知を図るような場が用意されることを期待しているところです。
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