絵画は、その瞬間を切り取り、平面に固定したものです。
それなのに、幾つかの絵の前に立った時、
瞬間が再び動き始めるのです、
例えば、空気の流れ、温度、音、時に香りまで、
視覚だけでなく、五感を震わせる作品があるのです。
そんな作品が、年月に打ち勝つ、古典と、マスターピースとなります。
まさしく、雪の朝。
多くの人が作品の前に立つのに、
本当の冬の朝のように、シンと静まり返っています。
ふと、遠くで、雪が枝から落ちる音だ聞こえるような、
鼻がムズムズと、大きく息を吸うと、
冷たい冷気が鼻をくすぐり錯覚まで、
目の前にあるのは、「雪松図屏風」円山応挙
近くに寄って、松の葉の木肌の筆使いを、
中景から、枝に積もった雪の軽さを、
離れて、全体の、朝日に輝く松を
それぞれの位置で、それぞれ違った楽しみ方ができる。
個人的には、それもまた、傑作と呼ばれる理由の一つだと、
なるほど、応挙唯一の国宝だけのことはあります。
何回か訪れが三井記念館、
いつもは、その建物も楽しむのですが、
今回ばかりは、気にもせず。ただ、ひたすらに、
雪の朝の松を、その瞬間の空気を五感全部で感じて来ました。