この町のことを思うたびに、思い出すのは決まってある映画のセリフ。
Remember what the fellow said, in Italy for thirty years under the Borgias
they had warfare, terror, bloodshed,
but they produced Michaelagelo - Leonard Da Vinci, and the Renaissance---
「第三の男」の中、確かメリーゴーランドの中での会話に出てくるセリフです。
ボッツティチェリは、まさしくそのメディチ家の庇護のもと才能を開花させたのです。
フィレンッエの繁栄とルネッサンスの関係に視点を当てた展覧会が、
個人的な好みを言えば、宗教画でない方の絵が好きですし、
幼子イエスの顔が好きになれないのですが、
それでも、彼の描く女性は優しく、目を楽しませてくれます。
宗教的な免罪のためなのか、政治的な安定を図るためだったのか、
芸術を援助する理由は様々です。
ただ、いずれにせよ、残念ながら、
「富」のないところには、一級の芸術は生まれなく、
古今東西変わらない法則のようなものです。
いわゆる、中流階層と呼ばれる人達が勃興し、
そのなかから、さらに富を集める人が育つ、
そして、芸術が、盛んになる、
ある場所では、絵画や彫刻、別の場所では音楽。
時が下れば、その力が政治的な場面にまで広がり、
自由を、人権を求めるようになります。
お金がすべてではないけれど、
まずは、衣食住が安定して、
精神的な豊かさを求めるものなのでしょう。
500年後の私たちは、
遠く離れた極東の国で、あるいは直接その町に出かけて、
ルネッサンスの絵画を観賞することができるのですが、
その当時の、人々は、それを許されたのでしょうか、
住み易い世界だったようには思えません。
その結果、格差が広がり過ぎ. その反動が、
ひとつの政治的な流れを作り出すのです。
そして、それは芸術にも影響を与えたのです。
展示されている絵のなかで、突然トーンが変わる時代が、
そして、その後、この町が芸術の中心ではなくなります。
格差の中で、芸術を育む世界が良いのか、
格差も、進歩も無い世界か。
今の世界は、この先500年後、どんな風に映っているのでしょうか。