壊れやすいもの 2007年12月23日 | 読書 人の心は、思いのほか、壊れやすいものです。 壊れやすいが故に、壊さないように、 やさしく、大切に両手で包んでいる。 でも、どんなに大切にしていても、 簡単に壊れてしまうものです。 ましてや、それが、失いたくないものなら、 尚更、人は守ろうとします。守りたいという気持ちが、 強ければ、強いほど、実は、壊してしまいたいという気持ちの 裏返しなのではないか。そんな風にも、思うのです。心の一番深いところにある、本当の自分、それを見つめることから逃げるために、宝物を作り、それを守ることで、本当の自分から逃げている。それゆえ、信じようとしている宝物を打ち砕くことで、本当の自分に出会える。そんなことも、また、あるのではないでしょうか。女という性の奥にある魔物は、女というジェンダーのステレオタイプに覆われ、それぞれの大切な物の下に隠されているのかもしれません。でも、それが、何かのきっかけで、 表面に湧き上がってくる。そのきっかけが、 大切なものが壊れてしまう時なのかもしれません。その瞬間を、描いた作品が、松崎 詩織著 「教育自習生」 幻冬舎アウトロー文庫刊です。 表題の他に、「フラジャイル」、「危険な遊び」が収録されています。思い出、彼氏、評判、 それぞれの主人公に、それぞれの宝物があります、 それが壊れたとき、彼女達には、新しい世界が開けたのです。そんな三つの物語です。
私がそこにいる 2007年12月18日 | 読書 違う作家さんの本を探している時、 偶然、目に触れ、作者の名前が気にかかり手にした本でした。 主人公は、私とは似てもいない女性で、 性欲に抗うことの出来ない自分がいることなど 夢にも思っていない女性。 服従とか、誰かに支配され、身をゆだねてしまうことなど 微塵も考えていない、どちらかといえば、 少し近寄り難い雰囲気を持つ人が主人公なのです。 ある朝、彼女がある事件に巻き込まれることで、 大きな変化が、彼女の心と身体に起きます。 誰かの意思に身をゆだね、 支配され、服従することで得られる快楽を知ります。 それは、自分が望んで得たものではいけれど、 決して、消し去ることなど出来ない新しい自分との出会いです。 その新しい自分は、隷属することで得られる快楽無しに、 生きてはいけない存在になってしまったのです。 彼女は、マゾとして生まれ変わったのです。 生まれ変わる過程で、主人公の心と身体に施されたこと、 そして、それを受けてマゾへと目覚めていく心。 「美猫の喘ぎ」 越後屋著 幻冬舎アウトロー文庫刊 この本の中に、私の憧れのすべてがあります。