【二人のマッチレースは記録も記憶も】
【プロローグ】
昨年同様タクシーでスタート1時間前に会場入り(これがしたくて別大出てる)。
ウインドブレーカーなどを脱ぐだけで準備は万端。弟は仕事忙しく練習不足に加え、先週胃痛で1週間まともに食事できなかったとかでもう「兄弟対決」の看板はとっくに下ろしてしまっている。武士の情けよ、兄もそれにはもう触れぬ。荷物を預けた後、弟は言う。こうなったら行ける所までバーッと走って、後は最終走者狙いとかもありか。ふーん、所で制限時間ってどれくらい?関門ってあるのか?まるっきり他人事。
これがこの日の伏線であったとは。
【スタート】
気温11度。日差しが強く暑い。時折流れる風が心地よい。川内vs中本の一騎打ちで観客も多い。ヘリが舞う。テレビカメラが動く。シビアにタイム順に並ぶナンバーカードは実力拮抗を告げる。目を閉じて今日の快走をイメージする。大丈夫、やれることは全てやれた。準備は万端。どれだけ目標の上方修正が可能か、それを楽しみに。
そして、号砲。
【レース前半】
スタートして2km程、あれだけ弱気で、しかもハリ天より後ろの列からスタートしている弟が前を走っている。何だ?
今年はすぐに追いついて並ぶ。4分ちょっとのスピードが楽に出ている周囲の流れ。気持ちいい。心拍数チェック。140台後半から150前半。理想的な数値。すぐに弟の前に出て、今日はここでお別れの予定。この心拍なら前半4分一桁台で走るのは楽そうだ。後半は心拍チェックを解き放ち爆発させる。具体的な数値は走りながら上方修正するつもりだ。
が、5km過ぎ後ろに付いてきていた弟が前に。ちょっとお腹も痛いような気がしてここは前に行かせる。
こんな序盤から異変の兆しがボチボチと。横っ腹が痛むのともビッグウェーブの感覚とも違うのだけど、とにかく嫌な感覚で落ち着かない我が腹部。ここはこのままスピードを上げずに様子見だ。
これが6km、7km、8km・・・ずっと続く。9kmで折り返す。いつの間にかすぐ前にDiet Go Go!!さんの後ろ姿。我慢していればこれはすぐに落ち着くはずだ。最初体が重いくらいの時がいいのだ。マラソンの常識だぜ。そろそろ10km、一気に解放される時が来る。そうしたら前に出る。その用意は出来ている。
しかし、シクシク感は収まらない。1km毎にブルブルッとバイブで教えてくれるガーミンによれば、4分8秒~15秒くらいのラップは刻んでいて、落ち込むほど悪いわけじゃない。我慢我慢。まだまだこれから。嫌な予感を必死で打ち払う。
気を抜くとスーッとペースが落ちそうになり、あわてて盛り返す。その繰り返し。5m前にDiet Go Go!!さん、さらに50~100m前に落ちてこない弟の姿。
20kmに近づく。いい加減さっぱりしてこない腹痛にいらつく。激しい連続ゲップにピッチを奪われる。
【レース後半】
中間点1時間30分ちょうど。予定よりうんと遅くなっているけど、今日はネガティブスプリットを刻むつもりだったからとまだ気力は衰えていない。心拍数は低いから痛みや胃部膨満感を無視して力振り出せばキロ4分5秒くらいにはすぐに復帰できる。だから大丈夫と必死で言い聞かせる。それでも40m道路の微妙な傾きに翻弄されながら徐々に、徐々にラップが落ち込んでいる。力が抜けて来ているんだよ。何なんだよ。自分自身に問いかけ続ける。
やがて25km。折り返してきた先頭は中本、そして川内。案の定一騎打ちだ。こちとらもう完全に4分半を大きく上回り始めた。27km付近の弁天橋で待つ妻と義妹は何と思うか。まさかの展開が訪れてしまった。自信満々もへったくれもない。トイレに駆け込みたいという感覚はゼロなのに、とにかく腹のどこかが痛い。胃が痛い。
弁天橋に来た。去年は弟にピタリ張りつき元気に登場した場所だ。ハリマネのどうした!って掛け声に、腹が痛いとうめくのが精一杯。写真見たら笑っているように見えるけど、マジ笑えない状況。
そして、ここからが長かった。我慢して走っていれば、やがて収まるはずと信じていたのに、とんでもない。ペースの落ち方に反比例して痛みはぐんぐん増してくる。キリキリとした痛みに責め立てられる。なんのバチが当たったのか。神はこの期に及んでまだ試練を、か。自分はこんなに痛みに弱いのかよ。うんざりしてきた。これじゃいかんと鞭打つけど痛いものは痛い。腹の痛みは急速に気力を奪っていく。足は何ともないのだからせめて歩くなと思っていたけど、歩くどころかとうとう立ち止まる。左手で胃のあたりを押さえるとポッコリとふくれてカチカチだ。押さえていないととても走れない。
後方からは選手の波が次々襲って来る。あっという間に飲み込まれ、一人だけ取り残される。
胃を押さえて立ち止まるなんて、いかにもこれがあって走れないんで~すってアピールしているみたいでイヤなんだけど、押さえないとどうしようもない。泣きそう。
31km過ぎ、沿道の声援は一段と多くなってきた。やたらと白バイが目立つと思ったら、もう、すぐ後ろに最後尾の車が見える。
やばい!弟が朝話していた「最終ランナー」になりそうだ。あと10km!と声がかかる。あと1時間ある。今から少しでも復活すればなんとか3時間半でゴールだけは出来るかも。そう思ってはみたけど腹が痛くて走れない。歩くのが精一杯だ。
優しそうなおばちゃんがすぐ側に来て声をかけてくれる。「よく頑張ったねぇ。もうやめな、もう走らんででいいよ」って。相当に悲惨な風情だったってことか。その優しさは嬉しいけど、自分からリタイヤは出来ない。ごめんなさい。
「沿道の皆さん、ご声援ありがとうございました。ただ今最終ランナーが通過しました」
おぉ、すごいアナウンスを自分の耳で聞いてしまった。感動してる場合じゃない。後ろを見たら3人しかいない。いよいよホントに最終ランナーになっちまいそうだ。最後尾の車がすぐそこにいる。あの車の前を走っている分にはまだ大丈夫なのかな。なんて痛みをこらえつつ、この後の作戦を練っていたら突然アナウンス。
「コース関門閉鎖時刻です。選手はすみやかに歩道に上がって下さい」
これが関門収容か。その瞬間、残念な気持ちより、これで腹を押さえて走らなくてもよいというホッとした気持ちの方が勝っていた。認めたくない本音。
2時間54分、約34km地点。こうして2013年別大マラソンは、必死で準備してきたことが活かされることなく静かに幕を閉じてしまった。
【エピローグ】
程なく後方から最後尾の収容バス到着。無事収容。バスに乗り込みチップを外された途端、急に吐き気。あわてて座席備え付けのビニール袋を鷲づかみにし、嘔吐。ぽっこりとふくれていた胃の容量ほどの水分を戻していた。レース中に摂った全水分って感じだ。毛布にくるまり、手に汚物を下げ、真っ青な顔で(たぶん)バスに揺られたのだった。
腹痛後、トレイルだったら持ち直す要素があったかもしれませんが、「走るか止めるか」の逃げの無いロードレースですから、リタイヤしか道が無かったのかも知れませんね。朝食の食べ過ぎというより、トレーニング疲れのために内蔵が弱っていたとも考えられますが、どうなんでしょうね。考えれば、パワーは積み残しされたので、次回レースに生かされることと思います。
大丈夫、ハリ天さんなら次回きっとリベンジできると感じています。
私もハリ天さんに負けないように日々頑張ります!
自分は薬で胃痛や吐き気、トイレの対策をしています。ご参考までに。
これは胃痛の検証せねばですね?
もう「過去の遺物」になったのですが、一応記録しておきました。おつきあい毎度毎度感謝です。
あれ程準備万端で、あとやれることは何だろう、そうだエネルギー充填だ!ということで念には念を入れたことが見事仇となってしまった感じです。
すっかり省エネになり、小さくなっていた胃を急激に膨らませたのが・・・。なので仰せの通り足は元気です。
いつも暖かいお言葉ありがとうございます♪
またエピソード1個作ってしまいました。
でもこういう失敗が全てのエネルギーのスタートですもんね。お互い頑張りましょう。
何を何を、気にしないで!いつ追いついてくるか待ってましたよ。予定通りの快走、おめでとう!!気持ち良く上方修正で決めましたね。流石!
ついつい念には念を入れるつもりで「いつもと違う」領域に手を広げてしまったバチでした^^;
前の方々へのコメント返しを読んでいただければ、おおよそわかると思いますが・・・。
直前の「食べ過ぎ」が・・・。笑っちゃうようなオチなんです^^;
私もレース後に胃腸をやられ1日寝込む羽目になりました~(-.-;)
ハリ天狗さんも身体を休めて次のレースでの快走期待してます!
走っている最中の走るのが辛いほどの腹痛(ビッグウェーブは除く)なんて初体験だったのでびっくり。
痛みは気力を奪いますね。
足の筋肉に血液集中で胃腸に回らなくなるのも一因ですよね。お大事にして下さい。