バルダッキーノは、法王の説教壇の上にかかる天蓋です。
ベルニーニの作になるこの大天蓋は、他の教会に見られるそれとはまったく趣を異にする斬新なデザインです。
大きくうねりながら、らせん状に上に向かって伸びるブロンズ製の4本の柱は、生命が宿っているかのようです。
幾何学的なデザインで構成されている聖堂内部で、ここだけが不思議な躍動感に満ちています。
ベルニーニは、あえて予定調和でない空間を、ここに創り出そうとしたのでしょうか。
「伝統的」という言葉からはほど遠いデザインのこの大天蓋には、賛否両論あったようですが、
この作品からは、他のどこにもない劇的空間をつくりだそうとする
ベルニーニの強い意志や意図が感じられると思いませんか。やっぱりただ者ではないですね、ベルニーニさん。
ベルニーニ―バロック美術の巨星 (歴史文化セレクション) | |
石鍋 真澄 | |
吉川弘文館 |