JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

記憶のフラッシュバック

2008年12月03日 | d-f

他人の車に乗ると「何故にあんたがこんなんを今?」って曲を聴いていたりします。おそらくは私の車に他の人が乗っても同様のことを思うのでしょうが・・

 ♪ 枯葉散る夕暮れは
   来る日の寒さを ものがたり
   雨に壊れたベンチには
   愛をささやく歌もない

   恋人よ そばにいて
   こごえる私の そばにいてよ
   そして一言  この別れ話が
     冗談だよと  笑ってほしい ♪

「五輪 真弓の『恋人よ』って、たしかに季節的にはあってるんだろうけど、あんたには古すぎるだろ」
とっても二十代の男の子が聴いている曲とは思えなかったわけで
「ほら、今年はオリンピックイヤーだったから、五輪つながりで・・・」
「なんじゃそりゃ」

それにしても久しぶりに聴きましたねぇ『恋人よ』
以前もお話ししましたが「この曲を聴くと何故か一つの情景が頭に浮かぶ」ってぇのがあるじゃないですか。
例えば私の場合、サザンの『愛しのエリー』を聴くと、汚い一人住まいの後輩のアパートへ訪ねていった若い恋人同士(笑)を思い浮かべ、尾崎亜美の『マイ・ピュア・レディ』を聴くと大学のキャンパスを思い出し、寺尾聰の『ルビーの指輪』を聴くと湘南モノレールのレールを思い出す、てな感じ。
『恋人よ』もそんな曲の一つなのです。

浮かんでくる情景は横浜。横浜駅の西口を出て、川沿いに内海橋、一の橋と右手に見ながら歩いていくと、なんのビルだったかは忘れましたが、大きな化粧品の看板かなんかが掲げてあって「恋人よぉ~~~」・・・・この風景なのです。それとジョイナス近くの喫茶店で女の子が飲み残したカンパリソーダを不味そうに飲む自分の姿。

いつ、どういうスチュエーションでその場面に遭遇したのかは全く記憶にないのに、何故か浮かんできてしまう・・・・そう、テレビドラマなんかで記憶喪失の人が、断片的に記憶をフラッシュバックで思い出す、あんな感じです。
そのくせ「一の橋よりもっと先」とか「ジョイナス近くの喫茶店」とか、へんなところが具体的なんですよねぇ。(笑)

「木枯らしなんだよ、空は晴れてないんだよなぁ、カンパリソーダが赤くてさぁ、そんでもって不味いんだなぁこれが・・・・」
「なんすかそれ?」
「だから、それが五輪 真弓の『恋人よ』なんだよ!」

って、車中で『恋人よ』を二十代の彼が聴いているという不思議さよりも、私の方が不思議がられた一瞬でした。(笑)

はたして、このフラッシュバックは哀しい思い出だったのか、楽しい思い出だったのか?
えっ?曲調を考えろって?
そうですよね、楽しい思い出なら全てを覚えていて良いはずですし「雨に壊れたベンチには 愛をささやく歌もない」ですもんね。

さて、今日の一枚は、アート・ファーマーとジム・ホールの一枚です。
正直言って、この頃のアート・ファーマーを私はよく聴いたとはとても申せません。どちらかといえばフュージョン風が吹き荒れ「ファーマーよ、おまえもか」的な頃で、ファーマーだけでなく、私が新譜を聴かなくなっていった、まさにその頃だからです。

そんな中で、今日のアルバムは『フュージョン風邪』のウィルスをまともに受けていない一枚であるとは思うのですが、それでも当時はほとんど興味を持ちませんでした。
では何故にあえてそれを紹介するのか。
じつはですね、記憶のフラッシュバックを起こす曲は邦楽に限ったものでは無いわけでして、そしてそれがジャズの場合、あんがい自分が興味なかったものにその傾向が多く出るのです。

例えば、チャック・マンジョーネの「FEELS SO GOOD」を聴くと「ホテル帰りの車中」を思い浮かべ、ネイティブサンの「バンプ・クルージング」を聴くと「学祭の立て看」を思い浮かべ、ウェザー・リポートの「BIRDLAND」を聴くと「ジョウモンラーメン」(知っている人います?「流しの三角の中身で餡を作ってる」なんてとんでもないこと言いながらも、よく食べた美味しい餡かけラーメンでした。)を思い浮かべ・・・・・・・・

では、このアルバムを聴くとどんな情景が浮かんでくるか。
場所は茅ヶ崎です。
駅前から海方向へ歩いていく途中の二階にある喫茶店、ここのモーニングが浮かんでくるんです。
ちょっと深めのグラタン皿のような茶色の器に、卵と厚めのベーコンそれにトーストが一つ盛りになってるやつ(笑)
その店は彼女と茅ヶ崎に行くと必ず立ち寄る喫茶店でしたが、モーニングを食べたのは一度きりだったと思います。(何故モーニングを食べたかはご想像にお任せするとして)
おそらくはそこへ向かう車中か、あるいはその時ある場所で聴いたのがこのアルバムだったんだと思います。

あはは、そんな話はどうでもいいか。
ともかく、以前はあまり聴くことのなかったこのアルバムも、歳を取って丸みが出てくると悪くありません。いや、むしろ心地よくさえ感じて、最近は「茅ヶ崎のモーニング」を思い浮かべながらときおり聴く一枚になりました。

BIG BLUES / ART FARMER & JIM HALL
1978年2月2日録音
ART FARMER(flh) JIM HALL(g) MIKE MAINIEN(vib) MIKE MOORE(b) STEVE GADD(ds)

1 WISPER NOT  
2 A CHILD IS BORN  
3 BIG BLUES  
4 PAVANE FOR A DEAD PRINCESS



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