まほろばの泉

亜細亜人、孫景文の交遊録にある酔譚、清談、独語、粋話など、人の吐息が感じられる無名でかつ有力な残像集です

小学に観る 習慣学習と、その活学 Ⅱ

2014-12-25 10:05:45 | Weblog



【満州崩壊 土壇場の学問】

ここに一つの事例があります 60年前のことですが、日本は大陸に進出して満州という国を創りました 当時多くの若者が夢を抱いて渡りました そして大地を耕し、現地の人とも五族協和のスローガンのもと、理想国家実現を目指しました  それは国の崩壊の土壇場の人間の姿と、彼らの学問についてのエピソードです 

ソ連が国境を越えて攻撃してきました そこには多くの開拓者たちがいました もちろん軍や官吏もたくさんいました その軍や官吏は開拓民を守るために存在します しかし彼らは、いち早く情報を察知し、侵入したその日の朝に逃走しています しかも電話線まで切って逃げています 彼らのなかには高学歴な高級官僚、高級軍人といわれた人もたくさんいました 当時の高学歴者は尊敬され、高い俸給をもらっていた人たちです 何のために尊敬され、どうして高給を貰えるのか、それはいざとなったら国民の犠牲になる志をもっていると認められているからです 

いまの政治家、官僚、教師、宗教家もそれが存在の意義なのです  何のために役人になったの、何のために軍人になったの、悲しくなるね
こんなこと日本の歴史に刻むの はじめて大陸に国家を創った 色々批判はあるし、真実は勝者に改ざんされたり、破棄されたものもあるが、この土壇場の日本人の醜態は消すことができない 負けたら関係なくなるからと言い訳している人も居たといっています
高学歴とはナンなのですか 私はどうか、と聞かれれば分からない だけどそうなりたくないとおもって勉強しています  残された開拓民は悲惨な状態だった テレビドラマになったり本にも書かれています たとえ負けるとおもっていても最後まで守って欲しかった あの司馬遼太郎さんの坂之上の雲の書かれている壮絶な戦争にも色々なエピソードがありますが、あの頃の人たち、明治はそうではなかったように見えます 異民族のなかにあって日本人がはじめて経験した国づくりだったとおもいます いまでも研究すれば日本および日本人が鏡として映るはずです

ここにその状態を赤裸々に残している文章があります 佐藤慎一郎という人が学生におこなった講義の抜粋です
「私も敗戦によって共産軍に捕らえられ死刑の判決を受けること2回、2回とも中国人に助けられました 3回目は国民党軍に捕らえられ九分どおり死刑であると内示を受けたのですが、判決直後釈放されました 私は死刑執行場で、自分で自分が入る墓穴を掘りました 本当の学問とは書物以外により多くあることを体験しました 『吾、汝らほど書を読まず、しかるが故に吾、汝らほど愚かならず』『物知りの馬鹿は、無学の漠過よりもっと馬鹿だ』ということの意味を本当に知ったのは、日本の敗戦によってでした いかにすばらしい言葉であっても、それが信念と化し、行為と化すまでは無価値だと知ったのです」

いわゆる無価値なんですょ 知ったら教える、学んだら行なう 行って責任が発生します
喜んで責任を受けますという人間の学問ですね この佐藤先生がどんな学問をしたのかな、という興味が湧いてきました  このような学問は大学校には無いんじゃないかな
そこまでいくと今の親御さんは子供を入れません  この学校でも元の衛藤学長さんや、シベリアの収容所から最後の帰国者、伊東六十次郎先生をはじめ、多くの満州関係者がおりました  みな怖いけど、元気で愉しい先生でした  


たとえば本の読み方でも、読まれる、と読む形があります 面白いなぁ すごいなぁ、これは読まれていますね  読む、はたとえ拙い体験でも自分に照らしてみることが必要です  小説、漫画ならともかく、古典などは特にその傾向があります つまり古教照心と照心古教の違いですね 

 冒頭に言いましたが教育の仕方は覚えても、使い方を知らないということと同じです  大学の教職もそうでしょう たしかに産業構造では安定した職業ですね  つい間違ったことを話しても訂正がききます めんどくさければ「これ、覚えておけ、試験に出るから」という先生が多いようです ある学校へ行ったら、生徒はお客さんだから、寝てても、遅刻しても大事にしなければ、という先生もいました 入学金、授業料を払ってくれれば経営が成り立ちます この学校でも産業人などを呼んで特別講義をしていますよね 傾向か流行か判りませんが新しい学校の概念としては素晴らしいことです



【トヨタ 小学の活用と継承】

産業といえばトヨタのお話ですが、ある衰退した企業の建て直しのために助力したことがあります あの一兆円の利益を上げた企業のエキスです それは5Sというキャッチフレーズでした トヨタを成功に導いたのもそれを習慣として受け入れたからです 5Sって横文字でかっこいいですね でも内容は今の学校では教えないが、昔のカリキュラムにはあったし、それは知識技術を学ぶための大前提なのです これがあったことが特殊な国民として映ったり、明治の躍動、戦後の復興が容易になったのです  これが日本の国力の源泉であり、人間に備わった習慣だったのです  

でも近頃はこれが崩れてきました トヨタはただ価値を知り持続しただけなのです 何も難しいことではない 子供でも出来ることです 無駄な知識や情報を重ねる必要はなかったのです それがトヨタの工夫となり社風となったのです 日本のトヨタなんです 日本人の知恵を事業の根幹において、世界に通用するように普遍な行いとしただけなのです SINKとACTIONを繋げるものが車両であった、それだけで価値があり、トヨタ存続の意義があるのです  もう一度思い出してごらん、とい提案が5Sという再生案なのです 同じ日本人ならの飲み込みが早いのは 当然です 

でもいまの経済人は気がつかなかった 学校、つまり官製学校歴のエリートは習わなかったろうし、価値が無いものだと棄ててしまった学問であり、それは歴史から与えられた恵みだったのです  5Sとはなにか 清潔、整頓、整理、清掃などの頭文字Sです
子供でもできる、いや大人にはでき難くなったといったほうがいいでしょう トヨタは日本人の知恵と習慣にあったものに真の合理性を発見し、また、それを行なう人間の問題が重要だと着目した経営者の人間観察が優れていたわけです 資本が無い、情報が無い、販路が無い、でも本当に必要なのは人間の直感とそれを見抜く経営者の姿なのです
この合理性は科学的根拠となります 何のことはない古典は合理的なもので、人間によって科学にもなるのです  これが「小学」という学問です 習慣学習と躾です

部屋が乱雑になっていると探し物も大変です 教室が汚れていたら勉強する気にもなれません 学校が経営に偏向すると学生に情緒は育ちません 点取り、クイズ試験になるのは仕方ありません このようにして良い習慣は乱れ、悪い習慣が安易な権利意識に変質してしまいます 新しいマニュアルを作るのではなくも想い出せばいいことなのです
一利を興すは 一害を除くに如かず、という格言がありますが、まさにそのことを指しています  政府の何々省とありますが、あれも省くことが大切だといっているのですね    
いつの間にか増殖してモンスターのようになり、制御の聞かなくなった組織は戦争に行き着いたあの頃の組織です  政治家はそれが分からなくてはいけませんね




【吾を活かす青年】

ここで素晴らしい青年のお話をいたします
中野有という京都出身の若者です 彼は私立大学を出て大手の土木会社に入りました そこで前々から海外に出たいとおもっていたので海外赴任を希望し、誰も行かないような中東へ行きました ちょうどイランにいたとき、イスラエルの戦闘機がイランの施設を爆撃するところを目撃しました  世界の現実に驚き、興味を持ちました 

その後、国連職員にパスし、南アフリカの人種差別政策を体験したり、子供たちへの援助活動を行ないました その印象は、子供たちの目が輝いている 透きとおっている、それは彼の人生の座標軸になったのです 政治、経済、戦争の行き着く果ては人間の問題です

人の優しさ、異なる国、民族、風習を理解する多面的な観察が大切なことだと気がつきました これは彼の実践学ですが、気がつくともともと日本人のDNAにそのような考えが習慣的にあることが気付きました、またお母さんから何気なく言われた言葉の中にその意味があることが気付いたそうです  

また英語が苦手だから、食べ物が合わないから、ということで自己を閉鎖している若者がいますが、かれは英語科でもなければ、サバイバルな肉体派でもありませんが、熱情はモンスターです 私のところへ尋ねてきても聴きたいことは、小さな店を追い掛け回すほど熱心です  陽明学は知識と行動が重なり狂になるといいますが、そんな時、かれは狂です 狂は学問上のことで熱中すると、そのように見えるのだとおもいます  

その彼がワシントンのシンクタンク、ブルッキング研究所に招請されたときのことです  アメリカの政策に影響あるところですから、日本からも多くの外交官や大物といわれる政治家が来るそうです  彼は研究所の側から聴くんですが、たとえば問題になっている北朝鮮問題について日本の考え方、対応を聴いても、アメリカが、中国が、韓国が、と一向に日本の意思を述べません  いや、意見がないのです

 彼らは国立大学を出て難解な試験をパスした外交官や、国民から彼らの言う、生命財産を預けられた政治家です  それが周りを気にして意見すらおぼつかない かれらの学問は何のためにあるのか  中野君は学歴は信用していません  あの満州崩壊土壇場に見せた高級官僚、軍人、政治家となんら変りはありません  

中野君は国際フリーターを名乗って本まで出しています 国際フリーター世界を翔る、という本です  彼が日本に戻って講演会に臨んだとき、前日、応答辞令について教えて欲しい、と訪ねてきました  君たちにお話したことを伝えました  ビデオを見ましたが素晴らしい講演でした 彼は世界中を飛び回って日本の心、アジアの心、地球軸から考えた世界の平和を唱えています  その心を生み、支えているのは、あの貧困の中で見た子供たちの瞳なのです そして母親の優しさなんです。これが彼の学問です 世界に通用する学問の心なのです

以下次号
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