まほろばの泉

亜細亜人、孫景文の交遊録にある酔譚、清談、独語、粋話など、人の吐息が感じられる無名でかつ有力な残像集です

いま、松下政経塾は

2008-08-21 16:47:52 | Weblog

神奈川県茅ヶ崎市に松下政経塾がある。松下電器の創立者であった松下幸之助氏が私財を投じて作った私塾である。安岡正篤氏の促しがあったと聴くが、塾内にはその影響が漂っている。

塾は二年制で一回生6人の有為な塾生の授業である。
前回は唐学古典の「中庸」で、学生が各々その標題を読み、自説を発表した。今回は「孟子」、しかも松陰の読み解く孟子論について市場に発刊されている書籍を読み解き、述べる授業だった。

塾長の古山氏は筆者の地元出身で小会(郷学研修会)に参加していた関係である。そこには実質的に社会党崩壊の端緒を作った渋谷修、安倍内閣の官房副長官下村氏も若い頃から参加していた。講頭は安岡正明氏、顧問は安岡正篤、卜部侍従、代表は筆者が務めたが、内外事情や隣国の古典、あるいは国学と多岐にわたり、老若男女が多く参集していた。

正明氏は「このような学問形態が父のいう郷学の姿です」と、筆者が御尊父から督励されて作った郷学への期待を述べていた。
ただ、留意しなければならない問題もあった。それは本質から逸れてしまう危惧を含んでいた。古山氏は松下政経塾出身、下村氏は早稲田雄弁会、また小会そのものが一時は政界本流の登竜門のように擬せられた安岡氏との深い縁のある処である。

いま政界にもブランドがある。
共産党は宮本顕治氏のお好みで東大法学部出身者が歴代党首、公明党は支持宗教団体の認知、社会党は大手の労組、民主党は労組と留学組、みな出生出自は雑多でも経歴出自?が巾を利かせ、総じて東大法学部が主流だが、一派を形成しているのが松下政経塾と早稲田雄弁会など、ちなみにポスターに刷り込まれている肩書きには必ずそれが載っている。

当初はその手の出身者の印象として、゛騒がしい゛゛落ち着きのない゛口がよく回る゛つまり「学」ではなく選挙のための「術」と、金屏風と想像していた。それは大方の大衆の印象でもあった。また、元気で若ければいいとばかり、スニーカーを履いて駅前演説、自転車行脚と、なんとも政治の、゛そもそも゛を錯覚した群れの製造元ではないかとも考えていた。

古山塾長の過去体験もそれに倣わざるを得ない浮俗の選挙事情もあった。しかし塾生に対する姿勢はそれと異なるものだった。
和室の壁に向かって座禅を組む、そして見台を前に正座して聴講する塾生、思いもよらぬ光景だった。しかも彼らの説に対する塾長の講評は暖かくも辛辣なものである。厳しさの混じった期待でもあるようだ。

基本は規則正しい生活と古典の活学、そして外部に出てのオーラルイヤー、つまり内外有識者との口と耳、そして感覚を使った応答辞令の修学である。
誰もが想像するだろう、選挙、政治、内外情勢の分析はことさら重要視するものでなく、それらに真剣に対峙する時の心構えと「本」の涵養にあった。

毎回筆者も「中庸」なり「孟子」なりで講評を請われるが、彼らの稚拙さは伺えるが、身を乗り出して聴く素朴で純情な姿勢は、何よりも大切な「本」の涵養に必要な部分を残している。

そして筆者はいつも彼らに語ることがある。
「異なることを恐れない人物になるべき学問をして下さい。そして全体の一部分として譲る大切さを学び、社会の連帯と調和を心がけてください」

古山氏の観照と模索、そして忍耐は続いている。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2008-08-22 00:49:12
松下政経塾は
選ばれた方々が
頑張っていらっしゃるのですよね。

本当のエリートが必要な日本の今


素晴らしいですね。


わたしのような
一般の人間でも
学ぶ・・・
できることは
あるのでしょうか?



質問なのですが


貞観政要の太宗は
本当に実在したのでしょうか?



質問ばかりですみません。
よろしくお願い致します。





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Unknown (愚庵)
2008-08-22 01:09:11
今の世の中、政治家の方々にしろ、出来るとされる営業マンにしろ、きれいな言い回し、説得力、耳に心地よいことが、どうも私には違和感を感じてしまう。この松下政経塾生達には、是非、心に心地よいものを発信出来る人物になっていただきたいと強く願う。
大リーガーのイチローが凄いんじゃない。イチローが凄いんだ。
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